「腐れ縁」を断ち切れなかった独女の後悔【不倫の清算6】
後悔を捨てる勇気
「私、彼の家に電話しちゃった。奥さんが出た。すごく明るい声だった」
F子は泣きながら話してくれた。
ホテルで彼が仮眠している間に、こっそりとスマホから調べた彼の自宅の番号を、F子は「最後の手段」と以前言っていた。
「家にかけるときってさ、もう不倫がバレるの覚悟してだよね」と思い詰めた顔で言うF子の目は、輝きを失っていた。
そして今日、ついにその番号へかけてしまったことが、彼女の忍耐の限界を告げていた。
「もう耐えられない」
とF子は繰り返しながら、タバコに手を伸ばす。寒いから中に入ろうと促しても、首を振るばかりで動かなかった。
ここ数ヶ月、彼からの連絡が激減していることは知っていた。理由は「仕事が忙しくて」と言われていたが、本当は「奥さんと仲良く過ごしているんじゃないか」という一方的な疑いが、彼女を苦しめていた。
その奥さんとの仲を取り持つようなことを自分は最初していたのだという事実が、余計に彼女の悪い妄想を駆り立てていた。
「ねぇ、何とかして彼の様子を知る方法はない?」
と言う彼女に、「諦めるなら今しかない」と繰り返し伝えることしかできなかったが、F子の本当の後悔は軽はずみに彼の誘いに乗ってしまったことにあると、彼女自身が気づいているだろうか。
その悔いを捨てる勇気のみが、彼女を立ち直らせる唯一の術になるのだ。
既婚者の下心に簡単に応えることは、独身の女性にとってリスクが高いものでしかない。
その代償は、本当に愛して欲しくなっても今度は応えてもらえない側になるという、大きな苦しみしか生まないのだ。
彼を追い詰めれば追い詰めるほど、実は自分の退路がなくなる事実に気がついた人間だけが、その不毛な関係を終わらせることができるのだろう。
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