「ご利用できます」なんて書いてない?恥ずかしい呼びかけの日本語7選
「ここは、休憩所としてご利用できます」
「このコピー機は、会員様でしたらいつでもご利用できます」
「この駐車場は弊社に訪問の際、いつでもご利用できます」
そんな掲示物を、店頭や掲示板、看板などでよく目にします。
しかし、この言葉は、完全に間違っているのです。
他にも
「ここでは、携帯電話をご使用できます」
「この部屋で、誰でもご休憩できます」
「ご乗車できませんので、ご注意ください」
「こちらは、お持ち帰りできます」
「どなたでもお気軽にご参加できますよ」
なども同じです。もう耳慣れている人も多いのではありませんか?
「みんな使っているよ。既に市民権を得ているので、もう良いんじゃない?」という声が聞こえてきそうですが、そうもいきません。耳慣れているとしたら要注意です。
この使い方はとんでもなくめちゃくちゃで、この使い方を認めてしまうと、敬語の根本がずずーっと崩れてしまうレベルのものなのです。
今日は、なぜこのような間違った日本語が多いのかということと、どう書き換えたらいいのかについてお話しします。
1・休憩所としてご利用できます……これを正しく!
- 誤用例 ここは、休憩所としてご利用できます。
まず、名詞に「お」や「ご」つけ、文末を「です」や「ます」にすれば、丁寧な言葉になります。
これは丁寧語ですね。
- これはお茶碗です。
ご迷惑をお掛けします。
尊敬語でも謙譲語でもありません。丁寧語です。
例えば「私は利用する」を丁寧に言うと、「私は利用します」です。
この場合「ご」は付けません。「私はご利用します」とは言いませんよね。
これは自分の場合です。
では、弊社が用意した、または、弊社の場所を「休憩所として利用してもらう」という場合、つまり相手が「利用」する場合はどうでしょう?
「あなたは利用します」なのですが、それが「可能」の意味を持つ、つまり、利用できるんだよーということを示す時は、
「あなたは利用できます」となります。
はい。実は、これで十分なのです。シンプルが一番です。
- シンプルな正解 ここは、休憩所として利用できます。
さあ、ここで、欲張って、もっと丁寧に!と思った瞬間から誤用が発生します。
この「利用できます」全体に「ご」をつけてしまうのですね。
- 誤 ここは、休憩所としてご利用できます。
純粋に名詞の「利用」にだけ「ご」を付けたい場合は、「ご利用」としても良いのですが、「利用できる」全体に「ご」はつかないのです。
名詞の「利用」にだけ「ご」を付ける場合は、その「利用」と「できる」は別に考えなくてはいけません。
名詞「利用」の丁寧語は「ご利用」です。これはOKですね。
さて「できる」の敬語はわかりますか? そうですね「なれる」です。
つまりこうなります。
- 尊敬語をきちんと利用したの正解 ここは、休憩所としてご利用になれます。
このようにシンプルな正解と、尊敬語をきちんと利用した正解があります。
同じように他の誤用も見てみましょう。すっきりしますよ!
2・いつでもご利用できます……これを正しく!
誤用
- このコピー機は、会員様でしたらいつでもご利用できます。
この駐車場は弊社に訪問の際、いつでもご利用できます。
シンプルな正解
- このコピー機は、会員様でしたらいつでも利用できます。
この駐車場は弊社に訪問の際、いつでも利用できます。
尊敬語をきちんと利用したの正解
- このコピー機は、会員様でしたらいつでもご利用になれます。
この駐車場は弊社に訪問の際、いつでもご利用になれます。
美しいですよね。しかも簡単です。
では続いて、他の「聞き慣れてしまった誤用」についても変換してみましょう。
3・ここでは、携帯電話をご使用できます。……これを正しく!
シンプルな正解
- ここでは、携帯電話を使用できます。
尊敬語をきちんと利用したの正解
- ここでは、携帯電話をご使用になれます。
4・この部屋で、誰でもご休憩できます。……これを正しく!
シンプルな正解
- この部屋で、誰でも休憩できます。
尊敬語をきちんと利用したの正解
- この部屋で、誰でもご休憩になれます。
5・ご乗車できませんので、ご注意ください。……これを正しく!
シンプルな正解
- 乗車できませんので、ご注意ください。
尊敬語をきちんと利用したの正解
- ご乗車になれませんので、ご注意ください。
6・こちらは、お持ち帰りできます。……これを正しく!
シンプルな正解
- こちらは、持ち帰りできます。
尊敬語をきちんと利用したの正解
- こちらは、お持ち帰りになれます。
7・どなたでもお気軽にご参加できますよ。……これを正しく!
シンプルな正解
- どなたでもお気軽に参加できますよ。
尊敬語をきちんと利用したの正解
- どなたでもお気軽にご参加になれますよ。
なお、自分の謙譲表現「いただく」を使う方法もあるのですが、こちらの方法ですと「させていただく」のような言葉を付けてしまう人が多く、ますます誤用になってしまう可能性も高くなるので、今回は解説しません。
どうでしょう?
いっそのこと「お」や「ご」を省いてシンプルな掲示物にするか、
「できる」の正しい尊敬語「なれる」をきちんと使って丁寧な掲示物にするか、それはあなたの判断です。
少なくとも「ご〇〇なれる」という謝った言葉にならないように気をつけましょう。
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