もう、故郷に帰っていいですか?-42歳・栄子の場合(1)-【40女の恋愛事情・story5】
こっちでも派遣社員として働けるかどうか、それはわからない。
もしかしたらパートのような仕事しかないかもしれない。
でも、収入が下がっても、ここなら家賃もかからない。
やっていけるのかもしれない。
でも、まだ、東京に未練がある。
それは仕事のことでも、生活のことでもない。
あの人のこと。
気になるひとがいるから、東京から、離れたくはない。
「こっちでもね、まだ独身がいるんだよ。ほら、幼なじみのケンちゃん。あの子もね、まだ結婚してないし」
母は、私の相手のことまで勝手に考え始めている。
「酒屋のシンちゃんは、離婚したんだよ。子どもが3人もいたのに奥さんが連れてっちゃって寂しそうにしてる」
狭いこの街で、私は誰かと新しい関係を築いていけるのだろうか。
なんでもすぐに噂になるこの街に私が戻ったら、なんて言われるのだろう。
きっと、都会に疲れた、というようなことを言われるに違いない。
確かに疲れては、いるけれど。
東京にというより、あの人に、疲れているのかもしれない。
月に一度、デートするあの人には、奥さんがいる。
故郷に帰れば、もう、会えなくなるから、関係はきっと、終わってしまうだろう。
本当はいけないことだって、わかっている。
もう、終わりにしたほうが、いいのだろうか。
■もう、故郷に帰っていいですか?-42歳・栄子の場合(2)に続く-【40女の恋愛事情・story5】/毎週火曜18時更新■
この記事は
作家&エッセイスト
内藤みか
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