「それ、愛じゃないよ」友人の一言で気づいた監視生活の異常さ、妻が支配から抜け出すまで
友人の言葉にハッとした日
ある日、「近くに来たから」と突然、友人が家に遊びに来ました。家に友人を呼んだことがなかったSさんは、嬉しさと同時に落ち着かない気持ちでいっぱいでした。会話の最中も、周囲が気になって仕方ありません。
「夫に聞かれたらどうしよう。許可なく友人を招いたことを怒られるかもしれない。監視カメラで見られているかもしれない」そんな不安から、言葉を選びながら、ぎこちない態度になっていたはずです。帰り際、友人を見送るために外へ出たときのことでした。玄関を出た瞬間、ふっと肩の力が抜けたSさんを見て、友人がぽつりと言いました。
「ねえ、ずっと緊張してなかった?」
その一言に、Sさんは言葉を返せませんでした。
少し間を置いて、友人は続けました。
「もしかして、家の中、見られてるとかないよね?」
その言葉をきっかけに、心の奥に押し込めていたものが、一気にあふれ出しました。
Sさんは初めて、友人に夫の隠しカメラのことを打ち明けました。家中に監視カメラがあること。行動を把握されていること。反論すると怒鳴られること。そのあと優しくなること。黙って聞いていた友人は、はっきりと言いました。
「それ、愛じゃないよ。支配だよ。あなたの夫は、モラハラだよ」
その言葉を聞いたとき、Sさんの中で何かが吹っ切れました。
これまで感じていた恐怖。それを「愛されているから」と思い込もうとしていたこと。怖いのに離れられなかった理由。苦しいのに我慢を続けてきたこと……そのすべてが、「モラハラ」という言葉で、ようやくつながったのです。
「愛されていたから離れられなかったのではない。支配の中にいたから、離れられなかったのだ」と、初めて、そう認めることができました。そして少しずつ、Sさんは自分の感覚を取り戻していきました。本当はどうしたいのか。何が怖かったのか。考えることをやめていた自分から、考える自分へと戻っていったのです。
仕事先も住む場所もない…そんな不安の中で 次ページ
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