会社に報告しているものとは別の通勤手段で事故…労災は降りる?

2018.10.01 WORK

 

企業では通常社員に対しどのような経路を経て出勤しているか提出させます。「最寄り駅まではバス」「○○駅~○○駅まで計何分」というような書類を書いたことがある人がほとんどではないでしょうか?

ところがなかには書類にバスと記載しながら、実際は自転車やバイクで最寄り駅まで通っている人も多いと聞きます。このように会社に報告しているものとは異なる通勤手段で事故に遭遇してしまった場合、労災は降りるのでしょうか?

髙田総合法律事務所の髙田英治弁護士に見解を伺いました。

 

Q.会社に報告しているものとは異なる通勤手段で事故に遭遇…労災は降りる?

 

A.労災と認められるケースもあります

髙田弁護士:「労災保険法上、会社へ届け出ている通勤手段と事故に遭った際の通勤手段とが一致することは、通勤災害として保険給付を受けるための要件ではありません。

 

したがって、会社へ届け出た通勤手段以外の手段で通勤中に事故を起こした場合であっても、労災と認められる可能性はあります。

 

もっとも、労災保険法上、通勤災害と認定されるためには、当該通勤が、就業に関し、自宅と会社の間等の移動として合理的な経路及び手段で行われる必要があります。

 

したがって、バイクや自転車で通勤した場合であっても、特段の合理的な理由もなく著しい遠回りをした場合などは、合理的な経路とはいえず、通勤災害とは認められません。

 

また、無免許運転や飲酒運転などをしていた場合も、合理的な手段とはいえないことから、通勤災害とは認められません。さらに、普通は自転車で移動しないような長距離を敢えて自転車で通勤していたような場合なども、やはり合理的な手段といえず、通勤災害と認められない可能性があります。

 

時々、事故に遭った際の通勤手段と会社に届け出ている通勤手段が異なる場合は、労災の対象とならないと言われたという話を聞くことがあります。しかし、このように、事故に遭った際の通勤手段と会社に届け出ている通勤手段が一致するかどうかという点は、労災の認定には本来無関係です。

 

ただし、会社へ届け出た通勤手段と異なる通勤手段で通勤していた場合、会社との関係で別途就業規則上の問題等が生じる場合がありますし、会社にはバス通勤と届け出た上で定期代を受給しながら、実際には自転車で通勤していたような場合には、単なる民事上の問題だけでなく、別途詐欺罪等が成立する可能性もありますので、この点は注意が必要です」

 

会社に報告しているものとは異なる通勤手段で事故にあった場合でも労災が降りるケースもあります。一方で、「異なる通勤手段で通っている」ことが、場合によっては就業規則違反などになる可能性もあるようです。

 

該当する人は、会社に「自転車やバイクで通勤している」ことを報告したほうが良いかもしれませんね。

 

*取材協力弁護士: 髙田英治(髙田総合法律事務所)

*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)

 

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