実は「違和感を感じる」は間違っていない。でも「頭痛が痛い」がNG日本語な理由
「人事異動で秘書課になったあの人、違和感ゼロだわー。もともとそこにいたみたいな感じ。」
こんな日本語が、説明なしで通じる世の中になって参りました。言葉は移り変わるものですが、そもそも誤りであることを知っていて使うのは「粋」で、誤りと知らずに平気で使うのは「お里が知れる」
この「違和感」という言葉は次に何が来るかで時々話題になる言葉。恥ずかしい思いをしないように、把握しておきましょう。
そもそも違和感とは「不調和」を示す
違和感
ちぐはぐな感じ。「都会の生活に違和感を覚える」
広辞苑第六版ちぐはぐ
対応すべきものが不調和だったり不揃いだったりするさま。「話がちぐはぐになる」「ちぐはぐな服装」
広辞苑第六版
つまり、違和感とは、不調和、不揃いのことを示します。
冒頭の例で言うと「人事異動で秘書課になったあの人」は「秘書課」に対し「不調和ゼロ」つまり「調和している」ということです。
「二重表現」かどうかは、品詞を分解すればわかる
「違和感を感じる」「違和感を覚える」この二つに関しては、国語的には「違和感を覚える」が正解です。しかし「違和感を感じる」でも間違いではないのです。
「違和感を感じる」がNGとされる理由としては、「二重表現」を理由にしている場合が多いです。
「二重表現」とは「頭痛が痛い」「馬から落馬する」など、同じ意味の言葉を重ねる日本語の修辞技法です。有名な「我が巨人軍は永久に不滅です」も二重表現ですね。
確かに「違和感」にはすでに「感」の文字が入っていますので、それを「感じる」とすると、「頭痛が痛い」と同じなのでは?と思うようですが、これは違います。
「違和感」は「不調和の感覚」という名詞です。「頭痛が痛い」の場合は「頭が痛いことが痛い」というおかしな仕組みになるのでNGになるのに対し、「違和感を感じる」は「不調和の感覚を感じる」という仕組みなのでOKなはずなのです。
けれども「違和感」=「覚える」ものという慣用表現がありますので、それにわざわざ逆らわなくても良いでしょう。
「○○感」ごとに「覚える」「ある」などOKな言葉が変わる
「○○感」という三文字熟語はとても多く、辞書では30以上あります。その中で普段私たちが使うものとしては、次のようなものがあるでしょう。
安定感 、期待感、親近感、充実感、絶望感、達成感、徒労感、悲壮感、疲労感、優越感
これらの言葉は「覚える」でOKです。
- この組み合わせに、安定感を覚える。
- あの人に、親近感を覚える。
- このプロジェクトには、充実感を覚えます。
また普通に「ある」としても良いでしょう。工夫をして「漂っている」などの表現も良いですね。
- この業務は、達成感があるでしょう?
- 背中に悲壮感が漂っている。
- 薬を飲んだ後、なぜか疲労感がある。
新しい「○○感」は流行の要素もあるので判断に注意
また最近では、こんな言葉もありますね。
お買い得感、お手頃感、お値打ち感、アウェイ感、終わった感、やりきった感、間に合わない感……
これらは、三文字より長いので「覚える」「感じる」よりは「ある」なども使えますね。また「満載」「……しかない」のように時代に乗った言い方になっている場合もあります。
- この店の商品は、どれもお買い得感満載です。
- アウェイ感しかない試合だよね。
しかし、これらの傾向は、流行であり、長く続くかどうかは分かりません。下手をしたら「『お手頃感がある』なんて言い方、『平成感』を『覚える』よね」なんて時代が来るかもしれません。
そういう意味でも元来の「覚える」を知っておくことは大切ですね。迷ったらこの表現に帰ればいいのです。
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