竹中直人が狂演!信長を二度も裏切った悪人・松永久秀と名器「平蜘蛛」をめぐる通説【NHK大河『豊臣兄弟!』20話】

2026.05.27 LIFE

*TOP画像/松永久秀(竹中直人) 大河ドラマ『豊臣兄弟!』20話(5月24日放送)より(C)NHK

 

戦国時代のど真ん中を舞台にした『豊臣兄弟!』(NHK総合ほか)の主人公は仲野太賀が演じる豊臣秀長。兄弟の絆で“天下統一”という偉業を成し遂げた豊臣兄弟の奇跡を描いた大河ドラマ『豊臣兄弟!』(NHK総合ほか)の第20話が5月24日に放送されました。40代50代働く女性の目線で毎話、作品の内容や時代背景を深掘り解説していきます。

 

秀吉は信長の命令にそむき、命を脅かすほどの危機に

本放送回は、嘘とは何か、真(まこと)とは何かを考えさせられる内容でした。私たちも骨董品などを本物と信じて大切にしていることがありますし、自分自身を松永久秀(竹中直人)のように、まがいもののように感じてしまうこともあります。この世界におけるあらゆるものは嘘か真かを断定できるものではなく、グラデーションなのかもしれません。

 

秀吉(池松壮亮)は上杉攻めに勝てる見込みがないと判断し、織田信長(小栗旬)の命令に背いて兵を引き返しました。秀吉が信長の命令に背いたのは二度目であったため、信長は秀吉に対して厳しい態度をつらぬきました。そして、秀吉に安土城で蟄居(ちっきょ)の上、切腹を命じました。そうした中で、慶(吉岡里帆)、寧々(浜辺美波)、あさひ(倉沢杏菜)らは秀吉を助けるため、信長に忠誠を誓う起請文を作成。

慶(吉岡里帆) 寧々(浜辺美波)、あさひ(倉沢杏菜) 大河ドラマ『豊臣兄弟!』20話(5月24日放送)より(C)NHK

信長は起請文に心を動かされたのか、それとも最初から秀吉を殺したくなかったのか、秀吉にチャンスを与えることに。自分を裏切った久秀を説き伏せ、彼が所有する茶器の中でもっとも高価な平蜘蛛を差し出させることができれば、命令に背いたことを許すことにしました。しかし、明智光秀(要潤)らが予想していた通り、秀吉と小一郎(仲野太賀)は久秀の説得に苦戦します。久秀は平蜘蛛を差し出す条件として、信長に大和の返却を求めましたが、信長にその気はありませんでした。

 

何が嘘で、何が真か?

久秀が大和にこだわるのには理由があります。彼は偽物づくりを生業とする父と、その側女の子として生まれました。幼い頃から「このわしも 父に作られた まがいものじゃ」と思い、周囲からも卑賎の子と蔑まれてきました。そうした中で、「いつか必ず本物になって 見返してやる」と誓ったのです。三好長慶と出会い、彼が自分をまがいものとして扱わなかったことに感動し、彼を父のように思うようになりました。長慶に初めて任された地が大和であったため、大和の返却を強く望んでいたのです。久秀はこの話の最後に「…と言ったら 信じるか?」とはぐらかしていましたが、小一郎と同様に、筆者は信じたいと思いました。

 

久秀は二つの平蜘蛛を出し、どちらが本物でどちらが偽物か見分けることができれば、信長に平蜘蛛を差し出し、ぶざまに生きると約束した。一方、秀吉と小一郎が負けた場合は、二人の首を取って信長に送ると条件を出しました。

松永久秀(竹中直人) 秀吉(池松壮亮) 小一郎(仲野太賀) 大河ドラマ『豊臣兄弟!』20話(5月24日放送)より(C)NHK

小一郎と秀吉は二つの平蜘蛛をじっくりと見比べましたが、どちらが本物か判断がつきません。この場面はまるで格付けチェックの番組のようでした。色合いの違いなどは分かるものの、決定的な本物か偽物かの見極めは難しいものです。世の中には高級品とされるものが数多く存在しますが、その本当の価値を見抜ける人は意外と少ないものです。

平蜘蛛 大河ドラマ『豊臣兄弟!』20話(5月24日放送)より(C)NHK

農村育ちの小一郎も秀吉も茶器をじっくりと見たこともふれたこともほとんどなかったのでしょう。小一郎は見分ける自信がなかったため、持ち前の知恵で勝負に出ました。平蜘蛛を割るふりをして掲げ、久秀の反応を観察することで答えを導き出そうと試みたのです。

 

竹中直人の狂演が凄まじい……。久秀の決断におどろき

小一郎と秀吉の知恵や説得力に根負けした久秀。彼は二人に「信長に平蜘蛛を差し出せ」と告げると、一人で別の部屋へと向かいました。すると間もなく、大きな爆発音が響き渡ります。久秀は弾薬に火を放ち、「戦 戦 戦!この世には もう飽きた!」と口にしながら、自害を試みていたのです。そして、どちらの平蜘蛛も偽物であったことを明かしました。

松永久秀(竹中直人) 大河ドラマ『豊臣兄弟!』20話(5月24日放送)より(C)NHK

松永久秀(竹中直人) 大河ドラマ『豊臣兄弟!』20話(5月24日放送)より(C)NHK

本作のラストで明かされたことですが、信長は平蜘蛛をすでに所持していました。久秀が「わしは とうとう 本物を手に入れることができなかった」と述べていたのは、そのためです。

秀吉(池松壮亮) 小一郎(仲野太賀) 信長(小栗旬) 大河ドラマ『豊臣兄弟!』20話(5月24日放送)より(C)NHK

信長は秀吉を許すための口実が欲しかっただけにすぎず、久秀に平蜘蛛を差し出させるよう命じたのでした。人を許すことには、意外と勇気がいるものです。気恥ずかしさから、あるいは相手を少し困らせてやろうという気持ちから、わざと口実を設けたり条件をつけたりすることもあります。

 

何が本物で何が偽物かなど、どうでもいいが……自身の変わらぬ真の思いも

久秀は「何が本物で 何が偽物かなど そんなものは どうでもいい!」と自身の考えを明かしていましたが、私たちも日頃さまざまなことで本物と偽物にこだわっています。しかし、そうしたことは結局どうでもよいのかもしれません。また、“本当の私って?” “今の自分はまがいもの。素の私を出せない”と気持ちがふさぐこともありますが、本物も偽物もないのでしょう。

 

そして、本作を観ていて印象的なのは、戦国武将たちが自らの信念を貫き通す姿です。浅井長政(中島歩)のラストもそうでしたが、生きる道を提示されても、それが自身の信念に反するものであれば、決して妥協せず、自死を選ぶのです。本作は史実との違いや”当時の人はそんなことは言わない”と指摘されることも多いですが、当時の死生観に反する台詞をあえて入れることで、戦国武将の生死についての考えがより強調されているようにも思います。

 

【史実解説】久秀は名茶釜・平蜘蛛を信長に渡せば、命を救われたが……

松永久秀は斎藤道三と並ぶ戦国時代における梟雄(きょうゆう)であり、“日本一最悪な男”ともいわれています。主君である織田信長を裏切っただけでなく、主家を乗っ取り、将軍・足利義輝を殺害し、東大寺を焼き討ったためです。久秀の出自は定かではないものの、最初の天守閣といわれるほどの高層建築の城・多聞山城(たもんやまじょう)の主にまで成り上がりました。多聞山城は城内が美しく装飾され、庭園も備えた豪華な城郭でした。

 

久秀は信長を二度も裏切っています。最初に裏切ったのは1572年。義昭に付き、信長に反旗を翻しました。そして、約5年後の1577年、久秀は石山本願寺攻めの途中で離脱し、城に籠りました。その理由は、反抗勢力に寝返り、信長を討つためでした。久秀の信長に対する裏切り行為は信長の命を直接脅かすほど重大なものです。それにもかかわらず、信長は久秀が古天明平蜘蛛(こてんみょうひらぐも)を献上するという条件で、彼の裏切りを許そうとしました。

 

ちなみに、本放送回で、荒木村重(トータス松本)が「(平蜘蛛は)ただの茶器ではござらん。売れば 城の一つや二つ築けるほどの代物ですわ」と述べていたように、茶器の中には城の価格に並ぶものもあり、高価な茶器は現代人の想像をはるかに超える価値がありました。久秀は信長の申し出を拒否。古天明平蜘蛛が信長の手に渡らないように自らの手で割り、城に火を放ち、命を絶ったというのが通説です。

 

本記事では、『豊臣兄弟!』(NHK総合ほか)の第20話を振り返りながら、松永久秀と名器「平蜘蛛」についてお届けしました。

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<参考資料>

小和田哲男(監修)『全国「武将印」徹底ガイド 見どころ・楽しみ方がわかる』メイツ出版、2020年

天野忠幸『松永久秀と下剋上』平凡社、2020年