約6割の日本人が間違えている日本語「敷居が高い」

2016.11.06 QUIZ

バラエティ番組でもよく見かける「日本語の誤用」。やっぱり日本人だもの、ちょっとは気になりますよね。しかも、誤用には世代差があるらしい? 文章力養成コーチが「よくあるまちがい」をこっそりご指摘します。今回は「敷居」と「ハードル」です!

「敷居が高い」本来の意味を知っておきましょう

 

【敷居が高い】

先方への不義理などで訪問しにくい (三省堂ウェブディクショナリー)

相手に不義理なことをしているために、その人の家に行きにくくなる、また、その人に会いにくくなる状態を言う語 (現代国語例解辞典)

 

そう。お店がどうなのかではなく、こちらの心の問題なのです。

例えばこんなシチュエーションならOKです。

 

隣の家に生えている柿の木が、我が家の庭に実を落とすので、こっそり食べていた

ところが、さきほど「柿が沢山実りましたので、取りにいらしてください」と言われた。

敷居が高くて、とても行けないわ。

 

こんなふうに使っていたらNG

自分には高級すぎるなど、身分不相応な店に対して「あの店は敷居が高くて入れない」などのように使う誤用が増えているようです。

「敷居が高い」の意味について尋ねた文化庁の調査結果は以下のとおりです。

 

例文:あそこは敷居が高い。

(ア)相手に不義理などをしてしまい、行きにくい・・・・42.1%

(イ)高級過ぎたり、上品過ぎたりして、入りにくい・・・45.6%

(ア)と(イ)の両方・・・・・・・・・・・・・・・・・・10.1%

(ア)、(イ)とは全く別の意味・・・・・・・・・・・・・・0.3%

分からない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1.9%

年代別では、40代を境に、50代以上では本来の意味である「相手に不義理などをしてしまい、行きにくい」、30代以下では「高級過ぎたり、上品過ぎたりして、入りにくい」を選んだ人が多くなっています。

 

出典:平成20年度文化庁「国語に関する世論調査」より

http://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/kokugo_yoronchosa/h20/

年代別のグラフもありますので、自分の年齢では正答率がどれくらいか見てみましょう。

 

敷居はもともと低いものです!

敷居とは、門の内外を仕切る戸や障子、ふすまなどを開け閉てする為に、地面や床に渡した溝付きの横木のこと(講談社『語源辞典』)

つまり、もともと低いものです。高かったらつまづいてしまいます。

これを高く感じる。つまり、入りにくいという心理状態を表しているのです。

確かに、入りにくい心理状態という点では、高級ブティックなども近い状況かもしれませんが、本来スーッと入れる場所に入りにくい、この「本来」というニュアンスを落とさないように覚えたいものです。

いつも出入りしていたあの店、あの人の家に、入りづらくなった。

それは、相手が格調高いからではなく、こちらに入りづらくなるような不義理があったということ。

そう覚えれば「あの店は敷居が低くて入りやすい」という二重に間違えた文も、誤用だと気づくでしょう。

 

では、ハードルが高いはどうでしょう?

「ハードルが高い」という言い方も存在します。

「この仕事は、あの子には少しハードルが高いんじゃないかしら」

これはなかなか興味深い言い換えですね。

この場合は、練習を積めば「乗り越えられる」という雰囲気が漂っています。

ただ、格調高いお店に入るのに、練習を積むというのもおかしな話ですよね。

しかも、なんだか入るのにみっともない格好になりそうです。

では、「身分不相応で入りにくい」時には、どう言ったらいいのでしょう。

そうですね、そのまま「身分不相応で入りにくい」「高級そうで入りづらい」と言えばいいのです。

 

間違わないようにするために例文を書いてみましょう

上に書いた例文を参考に、本来の意味での「敷居が高い」を使用した例文を考えてみましょう。

一文でも書けば、忘れにくいものです。

例 あの呑み屋のつけをもう2年も払っていない。今さら敷居が高くて入れやしない。

 

自分のレベルを上げて敷居をまたごう!

今日は「敷居が高い」について勉強しました。例文も書けましたか?

もうこれで、この言葉は言い間違えませんね。

でももし、後輩がこの言葉を間違って使っていたらどうしますか?

「先輩、あのお店、敷居が高くないですか?」

「あら、あのお店は自動ドアだからそんなことないんじゃないかしら。」

後輩の言い間違いをさらっと受け流す、そんなレベルの高い女性を目指しましょ!

 

(文/国語教師・文章コンサルタント・文章力養成コーチ 松嶋有香)

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