「ラクに儲けたい世の中で」汗水たらして生きる美しさ。蔦重、新之助、源内の志がつないだもの【NHK大河『べらぼう』第17回】

2025.05.08 LIFE

*TOP画像/蔦重(横浜流星) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」17話(5月4日放送)より(C)NHK

 

吉原で生まれ育ち、江戸のメディア王に成り上がった蔦重の人生を描いた、大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(NHK総合)の第17話が5月4日に放送されました。40代50代働く女性の目線で毎話、作品の内容や時代背景を深掘り解説していきます。

 

絶好調の蔦重だが、またもや邪魔が…

蔦重(横浜流星)と女子たち 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」17話(5月4日放送)より(C)NHK

 

蔦重(横浜流星)は10冊もの本を正月に出版し、作中の登場人物のモデルになるなど絶好調。耕書堂の人気も彼自身の人気も上々しています。一方、地本問屋の主人たちは蔦重の成功はおもしろくないどころか、自分たちの商売にも影響するのではないかと懸念します。

 

地本問屋の主人たちは裏でこそこそと手まわしをするのが常ですが、今回は彫師・四五六(肥後克広)に耕書堂の仕事を受けたら市中から注文しないと圧力をかけました。

 

そうした逆行の中で、蔦重は江戸以外の販路を開拓しただけではなく、耕作往来の制作では、その道の専門家に取材して協力を得ることで仲間を増やし、危機を乗り越えました。また、四五六には年契約で仕事を依頼することを約束しました。彼が蔦重から仕事を受けたのは、報酬だけでなく、自分の作品を娘のように思う気持ちを理解してくれるからだと思います。結局、人を動かすのは圧力でも金でもないのかもしれません。

 

新之助とうつせみの近況…祭りの奇跡を起こしたカップル

うつせみ(小野花梨) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」17話(5月4日放送)より(C)NHK

 

蔦重が本を江戸市中にとらわれない売り方、往来物の出版を思いついたのは、新之助(井之脇海)との再会がきっかけでした。新之助から村の人たちのために持ち帰る往来物を見せてもらったり、本が村に入る道筋を聞いたりしてひらめいたのです。

 

新之助は源内(安田顕)の死を聞きつけ、手を合わせに戻ってきたといいますが、筆者は久々の登場に胸をなでおろしました。俄の日、新之助とうつせみ(小野花梨)は松の井(保田紗友)のあたたかな気遣いにより、大門まで寄り添いながら歩み、外の世界に飛び立ちました。

 

かつて、いね(水野美紀)は新之助と添い遂げるために足抜けを試みたうつせみに、足抜けをしても幸せになれないこと、吉原を出ても博打と夜鷹くらいしか職がないと厳しい現実を伝えました。けれども、新之助とうつせみは幸せをしっかりとつかんでいたのです。二人は源内のツテで百姓をしています。汗水垂らして働く百姓は好まれず、働き手が不足しているため、身元を問われることもないそうです。また、うつせみには百姓が性に合い、楽しく働けているといいます。

 

この時代においても、多くの人たちが“ラクに儲けたい”、“汗水垂らして働くなんてバカらしい”と思っていました。そうした世の中で、誠実で、温和な性格の彼ららしく、幸せな日々を送っています。

 

新之助とうつせみには穏やかな時間が流れる独自の世界があります。第5話では、二人で錦絵に描かれた人気女郎の絵を見ながら、新之助がうつせみも錦絵に描かれるのかと尋ねると、うつせみは「わっちなど、とてもとても…」と否定。新之助は「それはよかった。あなたの愛らしさが世に知られすぎてもな」と言葉を返していました。花の蕾のような若き二人はどこにいても清らかな世界を築いているかのように見えます。

 

いねが言ったように足抜けした女郎の未来は厳しいものですが、新之助とうつせみだからこそ幸せをつかめたように思います。あるいは、祭りの奇跡が起きたのかもしれません。

 

生き続ける源内の心

源内(安田顕) 意次(渡辺謙) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」17話(5月4日放送)より(C)NHK

 

蔦重が新之助に話していたように、源内の墓はありません。しかし、源内は残された者たちの心の中に存在しています。

 

蔦重は“耕書堂を 日の本一の本屋にし、恩に報いたい”と覚悟を改めて決めますが、それも源内の教えがあったからこそです。“書”をもって世を“耕”すという源内の想いは、蔦重の今後の歩みを支える力となるでしょう。

 

また、意次(渡辺謙)も源内と思い描いた国の未来を心に秘めています。相良は、源内と意次が力を添えたことで金が巡り、民が不自由ない暮らしを送っています。源内の提案どおりに民が必要とするものをまず整え、民が豊かになる仕組みを築いたことで、成功を収めました。意次はこの経験を活かし、江戸、ひいてはこの国を、源内が描いた豊かな姿にするため、人員配置を検討し、命令を行き届かせようとしています。

 

源内の死の悲しみは癒えないものの、この男が生きた証はあちこちに残っているのです。

 

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