きっかけは「そば打ち体験教室」。53歳から5年かけて「Uターン開業」に向けて準備中!夫の赴任先で見つけた、夫婦の新しい目標

2026.06.18 LIFE

日々が飛ぶように過ぎていくなか、自分のあり方に漠然と迷う40代50代。まるでトンネルのなかにいるような五里霧中ですが、そんななか「ほんのちょっとしたトライ」で自分のあり方を捉えなおすには、「最初の一歩」に何をしてみればいいのでしょうか。体験談をご紹介します。

<<この記事の前編:定年まで単身赴任の夫は「コンビニ食ばかりで心配…」。52歳妻、ようやく夫と暮らすために上京。「やってみようかな」と軽いノリで参加して、ハマったこと

 

◾️リエさん
鹿児島県出身、現在は東京都北区で暮らす57歳、58歳の夫と2人暮らし。30歳の息子、28歳の娘はそれぞれ家庭を持ち、独立。5年前に鹿児島から東京赴任中の夫に合流。

【私を変える小さなトライ#47】後編

 

独立開業しないのに、「プロ・コース」を受講

プロ・コースでそば打ちの基本を教わります

鹿児島から東京に単身赴任中の夫の元へ合流したリエさん。53歳のとき、夫婦でたまたま参加した「そば打ち体験」でそば打ちの面白さに目覚め、江戸東京そばの会のプロ・コースに入学しました。20日間・50単位で、受講料は約38万円。「私はすぐに独立・開業するわけではないので高いかなとも思いましたが、『そばのことをもっと知りたい』という気持ちがおさえられなくて…」と笑います。

そばを切るときの構え方なども習いました

プロ・コースでは、そば打ちの仕方はもちろん、返しの作り方、天ぷらの揚げ方、だし巻き玉子の作り方など、そば屋として独立・開業するために必要なことを一通り学べます。リエさんは仕事をしながら「フレックス制コース」に通い、卒業まで5カ月かかりました。

 

プロ・コースでは天ぷらの揚げ方なども学びました

 

「そば粉ならではの粘りがとろみに変わる瞬間が愛おしい」

そばの会の卒業制作で作った、コーヒーロール、レアチーズタルト、スノーボール

プロ・コースで学ぶうちに「鹿児島に帰ったら夫婦でそば屋をやりたい」という目標が見えてきました。ガチガチのそば屋ではなく、いろいろなそば料理を出すような……。そのヒントの一つになったのがスイーツでした。これまでも趣味でスイーツを作っていたリエさんは、小麦粉の代わりに「そば粉」に注目します。
「そば粉にはポリフェノールの一種であるルチンなど、そば特有の成分が含まれていて、素材ならではの風味や特徴を楽しめます。小麦粉とは違った仕上がりになるのも魅力なんです」

そば粉100%のロールケーキ。何度も試行錯誤を繰り返しました

気づけば「そば粉」が大好きになり、そば粉のスイーツ作りにすっかりハマっていました。プロ・コースではスイーツの授業はありませんでしたが、ロールケーキやシフォンケーキなどを試作し、先生に食べてもらうと「おいしい」と好評でした。

お茶のロールケーキ

リエさんが作るのは、そば粉100%のスイーツ。そばを食べた後でも食べられるような軽い食感が売りで、バターも使いません。

そば粉のクッキー

最初は、“そば粉の粘り”が邪魔をして、うまくいかないこともありました。
「とても扱いにくくて、最初は『これは無理かな?』と思ったんです」
粉の種類や配合を変えながら試行錯誤を重ねるうちに、納得できるケーキが作れるように。

そば粉のプリン

「ロールケーキやシフォンケーキはこの粉でこの配合、プリンやクッキーはこの粉でこういった配合、という黄金比がわかってきました」と話します。

さらにそば粉と向き合ううちに、リエさんならではの“そば粉愛”が爆発。「作っているうちに粘りが愛おしくなっちゃって……。この粘りが、口の中に入れた時にとろみにかわるんです」とそば粉独特の味わいを教えてくれます。

 

 

そば粉100%スイーツ、マルシェとレンタルキッチンで手応え

そばガレット

55歳のとき、「そばにしっかり向き合いたい」と仕事を辞め、友人の誘いで川崎にあるレンタルキッチンで数カ月間、そばガレットの店を開業したリエさん。月に2回、土曜か日曜にオープンし、そば粉100%のガレットを「そば粉DE庵」の屋号で提供しました。

甘いそばガレットも

「毎回、食べにきてくれる人も出てきました。ガレット以外のメニューも人気で、シフォンサンドはすぐに売り切れ、そばの実サラダにもコアなファンがつきました」

しかし、自宅のある東京都北区から川崎までは距離があり、続けていくには体力的にも負荷が大きく4カ月で撤退することに。
「この経験は、これまで販売の経験がない私にとって、とても貴重で深い学びとなりました」

その頃、北区で創業支援を行う「特定非営利活動法人 彩結び」の「いろどりチャレンジメンバー」になります。これは2023〜2025年度に採択された北区の政策提案協働事業で、起業の基礎を学び、マルシェで販売を実践し、仲間づくりができる取り組みです。

そば粉のカップシフォン

リエさんは、このNPOが主催するマルシェで焼き菓子を販売したり、レンタルキッチンでそば粉スイーツを販売したりと活動の幅を広げていきました。

さらに「そばをもっと深く知りたい」と特定非営利活動法人 江戸ソバリエ協会の「江戸ソバリエ認定講座」にも参加。「そば粉の保管方法や、そば粉に農薬は使われているの?」といった、ちょっとした疑問を気軽に相談できる仲間ができたといいます

そば粉のクッキー

レンタルキッチンでのそばスイーツ販売は2026年7月で丸1年。コーヒーロール、お茶のロールケーキ、ガトーショコラ、そばもち……毎月、新メニューを追加しながら、経験とレシピを積み重ねてきました。その活動が評価され、ご当地グルメとしてそばが有名な深大寺にあるそば屋から、クッキーの注文を受けて納品も行っています。

鹿児島に戻ったら、名水でそばを打つ!

2027年11月には、夫婦で鹿児島に帰郷する予定です。「スイーツはやりきったので、東京にいるあと1年ちょっとの間に、そばの技術と知識をしっかり磨き、鹿児島に戻ろうと思っています」とリエさん。現在の悩みは、鹿児島と東京の味覚の違いだといいます。「鹿児島はそばの産地で、そば人口も多いのですが、そばつゆがとても甘いんです。どこまで地元の味に寄せるかが、課題です」と、悩みながらもどこか楽しそうです。

名水の里、湧水町

リエさんの実家は、霧島山のふもとにある名水の里・湧水町。「日本名水百選」に選ばれた地で、「この名水でそばを打ちたい」と考えています。「定年退職を機に帰るので、楽しみながら無理せずにやっていきたい。でも、地元に貢献できたらいいと思っています。皆さんに喜んでもらえるお店づくりができるといいな」と、これから始まる挑戦に向けて、心の準備は進んでいるようです。

 

定年後の暮らしを描きながら、着実に準備を進めるリエさん。ともにそば打ちにハマった旦那様もそば屋開業には前のめりで、「天ぷら担当」をしてくれるそうです。

 

あなたの「小さなトライとその気づき」もぜひ教えてください。 こちらから

白髪染めをやめた。矯正を始めた。ドライヤーを買い替えた。骨密度検査をした。習字を始めた。寝る前にストレッチを続けている。資格を再取得した。ママ友と温泉旅行に行った。2㎏やせた。子どもとオンライン英会話を続けている。断捨離した。終活してる。離婚を決意した……などなど、どんな小さなことでも大丈夫です!

 

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