植物状態と告げられた妻は「家族の声」を聞いていた…事故から3か月後に起きた奇跡と、明かされた事実
指先で紡がれる妻の「声」
意識を取り戻しても、妻は声を出すことができませんでした。私は、ひらがなの五十音を書いた手づくりのボードを用意しました。わずかに動く左手で、なんとか意思を伝え合えないかと考えたのです。
私が語りかけると、彼女の指先が、震えながらもひと文字ずつボードをたどっていきました。
「あ・り・が・と・う」
「こ・ど・も・は・げ・ん・き・?」
「が・ん・ば・る・ね」
ひと文字指し示すだけでも、長い時間がかかります。それでも、ようやく妻と意思を通い合わせることができた。その事実に救われました。
あとになって、妻は当時のことを話してくれました。まわりの声も、状況もわかっていたこと。けれど、自分の身に何が起きているのかはわからなかったこと。
声も出せず、目も開かず、体も動かせない。それでも、すべてを感じ取っていたといいます。
自分の思いを伝えられず、彼女の心は深い孤独の中で、「どうしよう、どうしよう」と懸命にもがき続けていたのです。
妻の話を聞いたとき、私は確信を持ちました。意識がないからといって、何も伝わっていないわけではない。
もし、そばにいる人があきらめの言葉を口にしていたら、本人はそれを感じ取り、「もう見放されたのかもしれない」と受け止めてしまうこともあるのではないか。
言葉がどれほど大きな力を持っているのかを、私はあらためて実感しました。寄り添う側にいちばん大切なのは、最後まで信じて、声をかけ続けることだと思いました。
つづき>>妻が意識不明から回復し、車椅子生活に。「助かってよかった」だけでは終われない…事故後に突きつけられた現実とは
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■著者:井上 裕之(いのうえ・ひろゆき)
いのうえ歯科医院理事長、医学博士、経営学博士。東京歯科大学大学院修了後、世界レベルの技術を学ぶためニューヨーク大学、ペンシルベニア大学、イエテボリ大学で研鑽を積み、医療法人社団いのうえ歯科医院を開業。自身の医院で理事長を務めながら島根大学医学部臨床教授、東京医科歯科大学、インディアナ大学客員講師など国内外9大学の役職を歴任。その技術は国内外から評価され、とくに最新医療、スピード治療の技術はメディアに取り上げられ、注目を集める。世界初のジョセフ・マーフィー・トラスト(潜在意識の権威)公認グランドマスター。本業の傍ら、世界的な能力開発プログラム、経営プログラムを学んだ末に、独自の成功哲学「ライフコンパス」をつくり上げ、「価値ある生き方」を伝える著者として全国各地で講演を行っている。著書は90冊を超え、累計140万部を突破。実話から生まれたデビュー作『自分で奇跡を起こす方法』(フォレスト出版)はテレビ番組で紹介され、大きな反響を呼んだ。『本物の気づかい』『一流の人間力』(ともにディスカヴァー)、『不敗の人生をつくる言葉』(致知出版社)、『選ばれる人の100の習慣』(日経BP)など著書多数。
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