更年期の「不眠」は放置しないで!睡眠薬でも改善しない女性の14%に「見つかった病気」とリスク【専門医が解説】

「最近、朝までぐっすり眠れなくなった」「夜中に目が覚めることが増えた」──そんな変化を感じていませんか? 更年期の不眠は、女性ホルモンの変化だけでなく、加齢やストレス、生活習慣などさまざまな要因が関係しています。

更年期の不眠にはどのような特徴があり、どう対処すればよいのでしょうか。本記事では、更年期医療のスペシャリスト・寺内公一氏の著書から、更年期に眠れなくなる原因や、知っておきたい治療法について具体的に紹介します。

※本記事は書籍『「更年期かな?」と思ったら最初に読む本』(寺内公一:著、たかはしみき:マンガ/主婦と生活社)から一部抜粋・編集したものです
※イラスト/岡本典子

 

多忙過ぎて眠れない

加齢、生活リズム、ストレス……眠れなくなる理由はさまざまです

患者さんのお話を聴いていると、不眠の症状の背景には、さまざまな要因が重なっていることを感じます。

要因の一つは加齢の影響です。年齢を重ねると、男女問わず睡眠の質は落ちる傾向にあります。そういう意味では、よく眠れなくなるのは自然なことともいえます。

もう一つは、生活リズムの問題です。たとえば親の介護をしていて1~2時間おきに痰(たん)の吸引をしなければならないという人もいます。

また、帰宅の遅い夫を待っていなければならない、子どものために早起きしてお弁当を作ったりしなければならないという人もいます。

患者さんそれぞれに事情がありますが、生活リズムに問題があることに本人が気づいていても、「すぐには変えられません……」と話す人は少なくありません。

そして、ストレスの問題もあります。更年期は大きなストレスを抱えやすい時期のため、不安や緊張が続いて眠れなくなることもあります。

体の疲労は休息をとれば解消できますが、脳の疲労は眠ることでしか回復することができません。

家事や子育て、介護には休みがありませんので、自分が眠りたいタイミングで眠ったり、十分な睡眠時間を確保したりすることが難しく、それが慢性的な睡眠不足につながっていることが多いと感じます。

仕事面でも、年代的に負担が重いことが多く、プレッシャーのかかる環境に置かれているかもしれません。

また、ホットフラッシュも不眠に関係していて、アメリカの研究によると「更年期にエストロゲンが急激に減少し、ホットフラッシュ(ほてり・のぼせに発汗をともなう「血管運動神経症状」)の症状が強く現れると、夜中でも大量の汗をかいて起きることが増えて不眠症状が重症化する」ことが報告されています(※)。

それ以外にも、加齢の影響で眠れなくなることがあります。たとえば、トイレが近くなって何度も起きてしまう、激しい動悸で苦しさのあまり飛び起きる、手足が眠れないほど冷えるなど、要因はさまざまです。

睡眠不足は自律神経のバランスを乱してしまうため、さらに眠りにくい状態を作り、疲れやだるさを引き起こすだけでなく、免疫力も低下させてしまいます。

適度な運動などのセルフケア(ストレッチ、ウォーキング、筋トレなど)を実践したり、就寝前に自分が心地いいと感じるリラックスタイムを作ったりしてみましょう。

※Ohayon Arch Intern Med. 2006 Jun 26;166(12):1262-8.

 

さまざまな治療方法

不眠の治療にはホルモン補充療法の他、新しいアプローチもあります

更年期症状全般の改善に効果があるホルモン補充療法(HRT)は、不眠症状にも有効です(※1)。

漢方薬にも有効なものがあります。私たちが更年期女性を対象に調べたところ、漢方薬の加味逍遙散(かみしょうようさん)には「入眠障害(寝つきが悪い)」と「熟眠障害(ぐっすり眠れない)」を改善する効果があることがわかりました(※2)。

睡眠薬にもさまざまあり、新しい薬に「オレキシン受容体拮抗薬」があります。これは、脳の覚醒を促すオレキシン(神経伝達物質)の働きを抑えて自然に眠くなるように促すものです。

この薬が登場するまでは、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬が中心で、依存性の高さや筋弛緩作用(きんしかんさよう/筋肉の緊張をほぐす働き)といった副作用への懸念がありました。

しかし、オレキシン受容体拮抗薬には、そうした懸念がないという利点があります。

薬を使用しない場合の治療法としては、認知行動療法(※3)があります。簡単に説明すると、睡眠に対する誤った捉え方を認識し、改善していく治療法です。

睡眠日誌などをつけながら、よりよく眠れるように、これまでの睡眠への認識を変え、行動を変えていきます。

たとえば若い頃のように眠れなくなっても、そのことを思い悩むのではなく、自然なことだと受け止めることなどです。他に運動やマインドフルネス、リラクゼーションも有効です(※4)。

そして注意したいのが睡眠時無呼吸症候群です。一般的に、肥満型の男性の病気と捉えられがちですが、更年期以降は女性も増加します。

睡眠時無呼吸症候群の割合は、「男性」と「閉経前の女性」で比べると8対1ですが、「男性」と「閉経後の女性」で比べると1.4対1となり、閉経後は男女差がかなり縮まります(※5)。

私たちの研究でも、睡眠薬を飲んでも不眠が改善しない女性を対象に調査したところ、14%が睡眠時無呼吸症候群であることがわかりました(※6)。

突然死のリスクが高くなる病気ですので、不眠がある人は気をつけていただきたいと思います。

※1 Hays, et al. N Engl J Med. 2003 May 8;348(19):1839-54.
※2 Terauchi, et al. Arch Gynecol Obstet. 2011 Oct;284(4):913-21.
※3 McCurry, et al. JAMA Intern Med. 2016 Jul 1;176(7):913-20.
※4 Attarian, et al. Menopause. 2015 Jun;22(6):674-84.
※5 Bixler, et al. Am J Respir Crit Care Med. 2001 Mar;163(3 Pt 1):608-13.
※6 Odai, Terauchi, et al. Menopause. 2022 Jun 1;29(6):680-686.

 

ここまでの記事では、更年期に眠れなくなる原因と治療法を紹介しました。つづく関連記事では、ニュースでも取り上げられた「更年期ロス」についてお届けします。
つづき>>更年期症状による経済損失は「1.9兆円」…今注目される「更年期ロス」とは?背景にある症状を専門医が解説

 

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著者:寺内公一(てらうち・まさかず)
東京科学大学(旧東京医科歯科大学) 教授。医学博士。産婦人科医。長年にわたり更年期障害や骨粗鬆症など「ゆらぎ世代」の女性の診療に従事。日本に数少ない更年期医療のスペシャリスト。中高年女性特有の「うつ・不安・不眠」といった心の不調から、加齢に伴う体の変化、さらに食事やサプリメントが女性の体に与える影響まで、心と体の両面から多角的な研究・診療を行っている。最新の科学的エビデンスに基づきながらも、一人ひとりの悩みに優しく寄り添うわかりやすい解説に定評がある。

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