ひとりで映画に行ける?ミュージカルは?40代がはじめてひとり観劇をしてわかったこと
オトナサローネで根強い人気を誇るのが「おひとりさまレベル」チェック記事。40代のおひとりさまがひとりでどこまでできるか、「ひとりでできるもん」レベルを客観的に考えてみた内容です。
レベル1は「ファーストトフード・カフェ・喫茶」にひとりで行けること。
いかがですか、ひとりで行けますか? 敢えては行かないけど行けることは行ける人まで含めると、レベル1はほとんどの人がクリアしているようです。
レベル2は少しだけハードルが上がり「ファミレス・定食チェーン」。これも、働く女性の場合は多くがクリアではと思います。
続く3が「映画館、美術館、水族館」。4は「ラーメン、牛丼、回転寿司、個人定食店」。ここから先は「4はクリアだけど3はむり」「むしろレベル7はできるけど2がむり」などばらつきが出ます。
>>女の「おひとりさまレベル」を10段階にしてみた【どこまで1人で行ける?】
同じレベルの中でもできること、できないことがある私
この記事を書いている私の場合、レベル3の中でグラデがあります。
美術館は一人で行く。
映画はイヤ、わざわざ一人で行きたくない。
水族館や動物園は行こうという発想がなかった、行けば楽しいかも?
そんな私に「ひとりでミュージカルを見てみませんか?」というお誘いが。なにそれ怖い!
まず、ミュージカルに着ていく服がわからない
私は生まれて一度もミュージカルを見たことがありません。
そもそも舞台経験がない。いや、出演じゃなくて見る側のです。
なので、最初に口から出たセリフは「……すいません、ミュージカルってどんな服で行くんですか?」。
笑わないでよ、だって歌舞伎座の前では和装のマダムをお見かけするし、宝塚ならおしゃれをして行くのがマナーだと聞くし。
と正直に口にしてしまったところ、6歳からのミュージカルファンだという編集部鵜沢が肩を震わせながら教えてくれました。
「大丈夫…ジーンズの人もいるし、おしゃれしてくる人もいるし、いろいろだから…」
大人向けの演目なら落ち着いた雰囲気だし、ファミリー向けならそれこそ子どももいるとのこと。
「それより、ミュージカルは1本の上演時間が長いけど、映画気分でスケジュール入れてない?うしろの予定は大丈夫?」
慌てて今回観劇する劇団四季『パリのアメリカ人』を確認してみると、約3時間! 危なかった、てっきり90分くらいだと思って、後ろに食事の予定を入れるところでした。
3時間の長丁場。予習はどのくらい必要?
次に沸いた疑問は「……どのくらいお話の予習をしておいたほうがいいの?」。
たとえばバレエくらい背景がわかりにくいの? お察しの通り、オペラや歌舞伎、能も行ったことがありませんが、どれも予習しておかないと楽しみどころがわからないと聞いています。
これも鵜沢に質問してみると、
「私は前情報を全然入れないで、現場でガチの雰囲気を受け取るのが好き。でも、完璧に予習してくる人ももちろんいるし、映画だって予習組がいるし、本当に人それぞれ」。
なるほど、3時間の長丁場だけど、バレエよりは筋がわかるんだな…?じゃあ私もガチで行ってみようかな…?
行ってみてわかった!意外とおひとりさまのファンがいる
さて、当日。劇団四季『パリのアメリカ人』は横浜のKAAT神奈川芸術劇場で上演中です。最寄りの日本大通り駅は中華街の1駅前。都内からは副都心線、東急東横線で乗り入れがあります。
私は開場時間に到着しましたが、開演60分前はまだガラガラ。観察していると、大抵の人は20~15分前に到着、さっとプログラムを買い、「本日のキャスト」をチェックして素早く席に向かっていました。なるほど、まずはキャストをチェックするのか…。
上演前に周囲を見てみると、一番多いのは男女2人連れ、次に女性同士、その次が女性おひとりさまでした。40代、50代の同世代が多そうにお見受けしたので、おひとりさまレベル4か5くらいに「ひとりミュージカル」が入ってもいいのかも。
なお、このKAATでは軽食を用意した売店が楽しめるのだそう。オーケストラならば上演前にワインを飲んでいる人も見かけますが、劇団四季の場合は客席内飲食禁止。しっかりとした食事は観劇前かあとにしたほうがよいのですね。
予習は本当にいらないかも!完全に没入できるお話
劇団四季『パリのアメリカ人』は、1951年の映画『巴里のアメリカ人』に想を得た作品。端折ってご紹介すると、1人の女性をめぐる、絵描き・音楽家・資産家の息子3人の男性の恋のお話でした。
あれ?『雨に唄えば』なんかもそうですが、この時代のミュージカル映画、歌のシーンは鮮明に思い出せるけれど、お話のアウトラインがいまひとつ記憶にない…?男性3人もいたっけ…?
と思いつつあとでプログラムを読んでみると、映画では漠然としていた時代背景が1945年、終戦直後のパリと明確に定まり、人物設定もリアルに肉付けされていました。
映画の舞台化というよりは、映画版を下敷きにしたミュージカルという感覚なのかな。少なくとも本作では映画を予習したかどうかは味わいには影響がないと感じました。
バレエ好きもきっと大満足、全編くまなく緻密なバレエ
そして重大なこと。本作は「かなりガチでバレエ」でした。それもそのはず、振付は世界トップクラスのバレエ振付家クリストファー・ウィールドンの手によるもの。
ヒロイン・リズは香水店に勤めるバレリーナの卵として描かれ、特に序盤はリズの踊りを堪能できます。ラストまで、全編くまなくバレエ。ミュージカルといえば歌とダンスなのかと思っていましたが、こんなにバレエだったとは。
個人的に心に残ったのは、ラブストーリーの枠にとどまらない、緊張ある時代の空気感描写でした。
1945年、ナチスの占領が終わったばかりのパリ。上の写真は「停電が起きたので自転車でジェネレーターを回す」場面ですが、パリってこんなにも破壊され窮乏し、市民はここまでナチスの後遺症におびえていたのか…。序盤ではナチスの協力者が糾弾される描写もあります。身内を疑い密告する戦い、もしかして焼き尽くされた東京よりひどかったのかな。
ですがアメリカへのあこがれを口にするシーンでは、場面ががらりと変わり、まばゆいまでの光ときらびやかな衣裳でタップダンスが繰り広げられます。
アメリカはあまりに光り輝き、そしてパリは対比として余計に沈鬱。ですが、そもそもこの作品はアメリカ人が描いたパリですから、根底には裏返しになった文化の都、パリへの憧憬が見え隠れします。この入れ子の構造に途中で気づき、かなり驚きました。
終盤、「パリのアメリカ人」とは一体誰だったのか、意外なひとことにも驚愕。なるほど、きみがガーシュウィンか!
予習はいらないが、メガネが必須。絵の美しさを堪能したい
盲点だったのは、予習なんか気にする必要がないかわり、老眼世代にはメガネが必須だったこと。全編プロジェクションマッピングが活用され、思ったよりも物理的な奥行きのある舞台なのです。
うっかりメガネをかけ忘れて前半を見始めてしまいましたが、途中で荷物をガサゴソいわせていい雰囲気ではなく、また俳優は高速で舞台を踊り回るので、序盤は顔がはっきり見えていないと誰が誰かを見失います。
が、そんなことはわからなくても大丈夫なくらい絵が美しい。ただぼーっと、若くてまだ人生の先行きが自由な人たちは毎日がワクワクしてていいなあ、ワクワクしてると世界はこんなにも美しく見えるんだなあ、と完全なるオバサン目線で見守ることができます。
キュンとしたりワクワクしたりすることがめっきり(または完全に)なくなるご無沙汰40代は、やっぱりこういうお話で養分を摂取しないとならない…と思いながら帰路につきました。
この公演は8月11日まで横浜で上演されたのち、今年の9月1日からは名古屋、2020年2月には京都へ巡演します。横浜公演も日によってはまだチケットの手配が可能。ワクワクの種が必要な人は、ぜひ養分を摂取してください!
■劇団四季 ミュージカル『パリのアメリカ人』公演概要
★横浜公演
◇公演期間 上演中~8月11日(日・祝)千秋楽 ※千秋楽公演分まで発売中
◇会 場 KAAT神奈川芸術劇場<ホール>(神奈川県横浜市中区山下町281)
みなとみらい線「日本大通り駅」3番出口より 徒歩5分
◇料金(税込)S席 11,880円/A席 8,640円/サイドA席 8,640円/B席 6,480円/サイドB席 6,480円
C席 3,240円/サイドC席 3,240円/サイドイス付立見席 3,240円
★名古屋公演
◇公演期間 9月1日(日)~ 2020年1月5日(日)千秋楽 ※期間限定公演・千秋楽公演分まで発売中
◇会 場 名古屋四季劇場(名古屋市中村区名駅南2-11-11)
◇料金(税込)S席 11,880円/A席 8,640円/B席 6,480円/C席 3,240円
★京都公演
◇公演期間 2020年2月 開幕予定
◇会 場 京都劇場(京都市下京区烏丸通塩小路下ル 京都駅ビル内)
◆予約方法 ネット予約 SHIKI ON-LINE TICKET http://489444.com(24時間受付)
電話予約 劇団四季予約センター 0120-489444(午前10時~午後6時)他
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