酷暑の水分補給に飲むべきものとは?「減塩」が命とりになるシンプルな理由

こんにちは。「予防医療」のスペシャリストで、医師の桐村里紗です。

この連載では、人生100年時代の折り返し地点、50歳になる前にやめたい悪習慣についてお伝えしていきます。

健康に良いはずの減塩ですが、酷暑の減塩は、むしろ、危険かも。

【ネオヘルスケアドクターLISAの「50歳になる前にやめる100のこと」#39】

 

その減塩、あなたに本当に必要ですか?

「健康のために、減塩しています」という方、たくさんおられますね。

 

「塩は体に悪い」という考えも、常識になっています。

 

高血圧に心疾患、腎障害などを予防するため、健康のために、減塩が勧められています。

 

でも、その減塩、皆さんに、必要でしょうか?

 

悪者のように扱われている塩ですが、血が出たときに、皆さん、自分の血液を舐めてみて下さいな。

 

鉄分の味とともに、ちょっぴりしょっぱい感じがするはずです。

 

実は、血液の中で最も多いミネラルは、塩。

 

つまり、ナトリウム(Na)とクロール(Cl)です。

 

意外に致命的な「低ナトリウム血症」

もし、血液の中のナトリウムが低下してしまうとどうなるかというと、実は、致命的です。

 

血液に水分が保持され、生命維持に超重要な血流が維持できるのは、ナトリウムのお陰です。なので、ナトリウムが低下すると、水分が血液から漏れて、細胞の方に運ばれて、血流が低下するだけでなく、細胞がむくみます。

 

特に、脳細胞のむくみがリスキーで、「低ナトリウム血症」は、最悪、死に至ることも。

 

  • 軽度:130mEq/l以下:軽度の虚脱感や疲労感、健忘などの認知症様症状
  • 中等度:120mEq/l以下:頭痛、めまい、悪心、嘔吐、錯乱など
  • 重度:110mEq/l以下:痙攣、昏睡状態、脳ヘルニア、死亡

 

低ナトリウム血症、結構、迫力がありますね。

 

過度に減塩しながら「水分をとり過ぎる」と危険

血液中のナトリウムはとても大切なので、濃度を一定に保とうと体ががんばります。

 

腎臓から尿が作られる際に、ナトリウムは適度に再吸収されます。

 

特に、腎機能が低下しているシニア層は、低ナトリウム血症になりやすいので注意が必要です。

 

それだけでなく、真夏に汗で大量の水と塩分を失っているのに、過度な減塩をし、水分ばかりを補うことでも、低ナトリウム血症のリスクがあります。

 

特に、水分のみをがぶ飲みしてしまうと、急に血液が水分で希釈されることになり、急にナトリウム濃度が低下します。

 

軽い脱力感や倦怠感、それが進むと、めまいや頭痛、嘔吐。それを放置すると、いよいよ痙攣や重度の意識障害などに進行するため、救急搬送を要する状態になります。

 

夏場は水分といっしょに、適度に塩分も補給を

高血圧や心不全、腎不全など持病がある方は、医師の指示に従って頂く必要がありますが、それ以外の健康な方は、夏は過度の減塩を控えて、塩分をとりましょう。

 

前回記事『熱中症予防に飲んではいけないものって?医師が警告する「意外な危機」』(リンク)で、お伝えしたように、糖分を含むスポーツドリンクは、血糖急上昇のリスクもありますので、こちらもあまりお勧めできません。

 

それに、スポーツドリンクは、血液よりもかなり薄い塩分濃度の飲み物です。こちらも、急にがぶ飲みをすると、血液を薄める可能性があります。

 

対策としては、

  • 普段の食事で、適度な塩分を摂っておくこと。
  • 携帯するのであれば、梅干しや塩昆布などのしょっぱいものを。
  • 水分は、一気にがぶ飲みするよりも、こまめに補給を。

これで、安全に、水分、塩分補給ができます。

 

麦茶?緑茶?「飲むべき水分」とはどんなものか

水分は、水やお茶など無糖のものを基本としましょう。

 

一気飲みせずに、チビチビ飲む方が、お腹が膨れず体への定着も良いです。

 

従来、カフェインには利尿作用があり、脱水を補うにはよろしくないとされてきましたが、最近の研究では、健常者においてカフェインを含む飲み物を飲んでも、24時間の尿量が増えないことが明らかになっています。

 

カフェインには耐性があるため、常用する人では、脱水を起こすほどの利尿作用はないと考えられるようになっています。

 

緑茶や番茶、ほうじ茶、ウーロン茶などはいずれもカフェインを含みますが、その水分で脱水が進行することは起こりづらいようです。

 

紅茶やコーヒーも同様ですが、糖入りのものは控えましょう。

 

ただし、耐性や利尿作用には個人差もあるため、確実なのは、カフェインを含まない飲料です。水や麦茶、ルイボスティー、ハーブティーなどを選びましょう。

 

 

食事で塩分だけでなく水分も効率よく補うには、夏は汁物やスープを取り入れるのがおすすめです。

 

普段使いの塩は未精製の自然海塩を

一言で「塩」と言っても、色々と種類があります。

 

食卓塩に代表される精製塩は、99%が塩化ナトリウムで、ダイレクトに血圧を上げる働きがあり、レスキュー時には役立ちますが、日常使いには不健康。

 

未精製の自然海塩で、平釜製法や天日干しのものを選べば、ナトリウムを排泄し血圧を下げる「カリウム」、血管を緩めて血圧を下げる「マグネシウム」などのミネラルも含んでいます。

 

旨味もありますので、使用量も自然と減らすことができますよ。

 

塩分を味方につけながら、酷暑の夏を乗り切りましょう。

 

【ネオヘルスケアドクターLISAの「50歳になる前にやめる100のこと」、週1回、土曜の夕方に配信!】

 

文/内科医・認定産業医 桐村里紗

tenrai代表取締役医師。1980年岡山県生まれ。2004年愛媛大学医学部医学科卒。内科医・認定産業医。治療よりも予防を重視し、「ヘルスケアは、カルチャーへ」というコンセプトを掲げ、新しい時代のヘルスケアを様々なメディアで発信している。フジテレビ「ホンマでっか!?TV」「とくダネ!」他メディア出演多数。著書『日本人はなぜ臭いと言われるのか 体臭と口臭の科学』(光文社新書)他。

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