熱中症予防に飲んではいけないものって?医師が警告する「意外な危機」

こんにちは。「予防医療」のスペシャリストで、医師の桐村里紗です。

この連載では、人生100年時代の折り返し地点、50歳になる前にやめたい悪習慣についてお伝えしていきます。

水分と塩分をとらなきゃ!と、スポーツドリンクをがぶ飲みしていませんか?

スポーツドリンクは、必ずしも身体に良いとは限りません。スポーツドリンクがぶ飲みが招く「ペットボトル症候群」は、緊急入院のリスクもあります。

【ネオヘルスケアドクターLISAの「50歳になる前にやめる100のこと」#38】

スポーツドリンクがぶ飲みで入院の夏

私が、糖尿病内科にいた頃のこと、夏になると毎年恒例で、血糖値が500mg/dlを超えて、急激な高血糖で緊急入院を余儀なくされるケースがあります。

 

「ペットボトル症候群」は、夏の糖尿病内科のあるある患者さんです。

 

暑いから、喉が乾いたと、水やお茶など無糖の飲料ではなく、いわゆる清涼飲料水をがぶ飲みすることで、一気に大量の糖分をとって、血糖値が跳ね上がり急に重症の糖尿病を発症してしまうためです。

 

「清涼飲料水って、ジュースでしょう?スポーツドリンクと違うじゃないの」と、思われるかも知れませんが、スポーツドリンクも、清涼飲料水の一種です。

 

「ジュースは飲んでいません」と仰る方の中にも、「熱中症予防に、スポーツドリンクを飲むようにしています」という方がおられます。

 

これが思わぬ、リスクになってしまうのです。

 

熱中症予防に「スポーツドリンク」はNG、1本で糖分過剰に

例えば、最も有名なスポーツドリンクは、ペットボトル1本(500ml)で、約30gの糖分を含みます。スティックシュガーだと、約10本分。

 

炭酸飲料の場合が、約55gなので、半分以上含まれます。

 

WHO(世界保健機構)の示す1日の砂糖摂取目安は、25gとされていますので、ペットボトル1本でこれを超えてしまいます。

 

更に、「1日2リットルは水分をとらなくちゃ!」ということで、4本を頑張って飲むとすると、スティックシュガー40本分の糖分、1日の摂取目安の約5倍量の糖分を摂取してしまうことになります。

 

スポーツドリンクは「砂糖水」と心得て

スポーツドリンクは、少々の塩分などのミネラル分が溶けた砂糖水です。

 

原材料表示は、含有量の多い順に表示されていますが、「砂糖、果糖ぶどう糖液糖、果汁、食塩、酸味料、調味料(アミノ酸)など」とあり、主には、砂糖や果糖ブドウ糖液糖と、血糖値が跳ね上がる糖分が主なのですね。

 

「スポーツドリンク」と言われるように、筋肉を使うスポーツをする人であれば、この糖分をエネルギーとして燃焼できるかも知れませんが、体を動かさないのに、熱中症予防としてスポーツドリンクを飲むと、むしろ糖分が余り、血糖値を上げることになり兼ねません。

 

まだ糖尿病ではない人も気をつけて!リスクがあるのは「C」の人

ペットボトル症候群を発症する人の多くは、糖尿病と診断されている人ではありません。

 

糖尿病患者さんであれば、血糖値をあげる糖分を摂らないように「水分は、水やお茶でとりましょう」と指導されますから、逆に気をつけておられます。

 

リスキーなのは、健康診断で糖尿病リスク「C」判定程度の人。

 

まだ糖尿病ではないけれど、その気(け)がある人ですが、この場合は特に指導も受けませんし、C判定程度では気にしていないことが多い上に、急激に糖尿病を発症することになるなどと想像もできませんね。

 

血の繋がった家族に糖尿病患者さんがいる人も要注意です。

 

糖尿病のリスクがない人でも、血糖値が上がりやすい清涼飲料水は、血糖値を乱高下させるため、疲労倦怠感、イライラ、うつうつ、集中力の低下などの症状を引き起こす可能性があります。

 

では、無糖のスポーツドリンクはどうなのか?

最近は、無糖、低糖タイプのスポーツドリンクも発売されています。

 

ただし、この場合は、人工甘味料(アスパルテーム・L・フェニルアラニン、アセスルファムカリウム、スクラロース)などを含んでいることが一般的です。

 

糖尿病外来では、人工甘味料もお勧めしていません。

 

実は、ノーリスクだと思われていた人工甘味料が、食欲を増し、インスリン分泌を刺激し、肥満リスクと糖尿病リスクを増すことが分かってきたからです。

 

基本的には、水分補給は、水やお茶をお勧めしています。

 

もう一つ、汗をかく時期に「塩分」はどう補給する?

汗と共に塩分などのミネラル分も失うわけですが、塩分はどうやって補給するの?という疑問があるでしょう。

 

塩分は、飲料から補給しなくても、食事から十分に摂取できます。

 

汗からも塩分を失う夏は、食事から塩分を摂りましょう。

 

「塩分は体に悪い」というイメージがあるかも知れませんが、血液中に最も多いミネラルは、実は塩分です。塩分がないと、細胞が水分を保つことができず、脱水が進行し、生命の危機となります。

 

疾患のある人以外は、夏は「減塩」は不要なのです

高血圧や心疾患、腎疾患などで塩分制限の指導を受けている人以外は、夏に減塩は不要です。

 

特に、きゅうりやトマトなどの夏野菜に多く含まれるカリウムは、体の塩分を排泄する働きがありますので、これらをしっかりと食べているならば塩分が過剰になることはありません。

 

心配ならば、血圧を測りながら食べたら安心です。

 

自宅ではぜひ「自然海塩」を使ってみてください!

さらに、塩にも、種類があります。

 

食卓塩などの精製塩は、99%が塩化ナトリウムで、その他のミネラルがほとんど含まれません。塩化ナトリウムが体にダイレクトに働いて、水分を溜め込み、むくみや血圧上昇を起こしやすくなります。

 

一方で、自然海塩など未精製の塩は、塩化ナトリウム以外にも、カリウムやマグネシウムなど、塩分を排泄したり、血管を緩めて血圧を下げる作用のあるミネラルも含みます。

 

自宅の塩は、ぜひ、精製塩ではなく、自然海塩を。旨味や甘味も感じられ、料理もぐっと美味しくなりますよ。

 

【ネオヘルスケアドクターLISAの「50歳になる前にやめる100のこと」、週1回、土曜の夕方に配信!】

 

文/内科医・認定産業医 桐村里紗

tenrai代表取締役医師。1980年岡山県生まれ。2004年愛媛大学医学部医学科卒。内科医・認定産業医。治療よりも予防を重視し、「ヘルスケアは、カルチャーへ」というコンセプトを掲げ、新しい時代のヘルスケアを様々なメディアで発信している。フジテレビ「ホンマでっか!?TV」「とくダネ!」他メディア出演多数。著書『日本人はなぜ臭いと言われるのか 体臭と口臭の科学』(光文社新書)他。

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