
【岩井志麻子】なぜコロナ禍が「こんなに不安」なのだろう?
自著の宣伝のようですまんが、私の代表作とされている『ぼっけぇ、きょうてぇ』に収録されている、『密告函』なる短編小説。あれが今ちょっとだけ、再評価されている。
「今にも通用する嫌さがある」「ここに出てくる『密告函』って、今ならパソコンやスマホだよね」「匿名での嫌がらせ。百年間、変わりない」等々。
村八分にされるのが怖い
明治時代、全国的にコレラが蔓延した。我が故郷であり、小説の舞台ともなっている岡山県でも猛威を振るい、多数の死者を出した。
しかし、あの人は感染者、あいつがみんなに移した、となれば、下手をすれば村八分にされてしまうと村人は怯え、なんとか我が家から出た感染者を隠蔽しようとする。感染していないふりをしようとする。なんとか感染者を隔離したいのに、できない。
そこで村役場に、密告函なる投書箱が設置された。あの人は感染しているんじゃないか、と疑わしい人の名前を紙に書いて、こっそり入れてくれというのだ。
もちろん、紙には告発する自分の名前なんか書かなくてもいい。とことん匿名で、怪しい人を密告してくれというのだ。匿名でいいのだからと、かなりの投書が集まった。
ところが蓋を開けてみたら、真にコレラ患者と思しき人達の名前よりも、個人的な恨みを持つ相手の名前を書いた紙ばかりが出てきたのだ。
感染者の報告より、個人的な恨み
この物語、登場人物も含めて私の創作ではあるのだが、かなり実話が元になっている。
本当に村役場には密告箱が設置されていたし、そこに投げ込まれた紙には、病気の蔓延を抑え込みたいという願いよりも、とにかく「あいつを村八分にしてやりたい」という自分の憎しみばかりが書かれていたという。
特別に岡山県民が陰湿なんじゃなくて、全国各地にこういう状況はあったはずだ。いや、まったくもって今現在もそれに近いことになってないか。
もちろん、感染する病気そのものの怖さもあるが。今は、自分の手元に密告函がある。
その気になれば、憎いあいつのことを書き込める。もちろん匿名で。ただし、自分を嫌っているあいつの手の中にも密告函はある……。令和の感染症の恐怖って、これだよな。
もう、実名でなければ書き込めないようにしたほうがいいんじゃないか、手元の函は。
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