これって実は貧血?40代女性を襲う「意外な症状」と解決法は
こんにちは。「予防医療」のスペシャリストで、医師の桐村里紗です。
月経があるほとんどの女性は、鉄不足です。
「私の体調ってこんなもの」と考えて諦めている、色々な心身の不調は、実は、鉄さえしっかり補えばケロっと改善する単純な話かもしれません。
疲れやすい、体が重い、うつうつとする、イライラするなどの不定愁訴があれば、いかに身体に鉄を補うかを考えてみてください。
月経の頻度や量によって鉄の需要も違いますし、腸内環境が悪いと、いくら鉄を補充しても全く吸収しないこともあります。
ちょっと難しい、月経と鉄の補給について、改めてお伝えします。
【ネオヘルスケアドクターLISAの「50歳になる前にやめる100のこと」#47】
まずはチェック、あなたは「鉄欠乏」?
まずは、鉄欠乏で起こる症状、いくつ当てはまるか、チェックしてみましょう。
- 立ちくらみ・めまいがしやすい
- 肩こり・頭痛・頭重になりやすい
- すぐに疲れやすい
- 不安や抑うつ、イライラしがちだ
- 寝つきが悪い、眠りが浅い
- 力が弱く、よく物を落としやすい
- シミやシワが多い
- アザができやすい
- 喉につっかえ感がある(錠剤などが飲み込みにくい)
- 冷え性である
いずれもが鉄欠乏で起こりうる症状なので、2つ以上当てはまれば疑いがあります。
鉄は身体の機能維持そのものにとても大切な存在
鉄の仕事は、酸素を運搬するだけではありません。
1. 赤血球の中の酸素を運ぶヘモグロビンの原材料
2. 骨・皮膚・粘膜の代謝
3. コラーゲンの合成
4. 白血球・免疫機能を維持
5. メンタルに関わる神経伝達物質セロトニン・ドーパミンなどの合成
6. 肝臓の解毒
7. 抗酸化作用
8. 筋力の維持
鉄が不足するとこれらの機能が一切衰えてしまいますから、不調のオンパレードになってしまうのです。
酸素を運搬するヘモグロビンを維持することは、人間の細胞にとってライフラインですから、鉄の量が減った場合には、赤血球に最優先に鉄を供給し、他の部門には供給をストップします。
そのため、血液検査で「ヘモグロビンが減る=貧血」と診断される手前の「隠れ貧血」の状態であっても、2.~8.までの仕事ができなくなっているはずなのです。
「隠れ貧血」は、「潜在性鉄欠乏」とも呼ばれますが、いわゆる「貧血」とは診断されないものの、体の中の鉄が不足している状態のことを言います。
なのに、女性は月経で毎月鉄を失っていく
女性に鉄欠乏が多い原因は、月経です。
男女ともに、普通に生活していて消費する鉄は、1日約1gです。女性はそれに加えて、1回の月経周期で、約15〜30mgの鉄を多く失います。
特に、初経が始まる時期や、妊娠出産期、授乳期には体の中の鉄を急に失いますから、この時期にぐっと具合が悪くなったと感じる場合には、鉄不足を疑ってみて欲しいのです。
思春期うつや産後うつは、鉄さえ補給すれば、難なく乗り越えられることかも知れません。
こんな生活をしていると余計に鉄を失う原因に!
さらに、過度な運動をする場合は、汗1リットルにつき、0.5mgの鉄が余計に失われます。
そもそも、かなりバランスの良い食生活をしていてもなかなか摂取できないのが鉄ですから、過度なダイエットや偏った食生活、特に炭水化物ばかりであったり、インスタントや加工食品が多い食生活では、鉄不足になります。
子宮筋腫などを放置して、過多月経が続くと、ますます鉄不足が進行します。
そもそも食事から鉄を摂れると思わない方がいい
食事から鉄を補いたいところですが、鉄はとても吸収が悪いため、ほとんど摂れないと思うべきです。
- 成人1日の鉄の摂取推奨量は、10.5~11g
- 妊娠期初期・授乳期は、プラス2.5mg
- 妊娠中期・後期は、プラス15mg
摂りましょうと言われています。
ただし、植物性の鉄(非ヘム鉄)の吸収率は、たった2~5%! 比較的吸収が良いとされる動物性の鉄(ヘム鉄)でも、15~20%しか吸収されません。
あくまでも計算上ですが、1日1mgは絶対に鉄を失うことに加えて、1回の月経周期が5日前後として、15〜30mgの鉄を失う場合、1日3〜6mg多く鉄を失います。つまり、月経期間には、1日 4~7mgを失います。
吸収の良いヘム鉄が20%吸収されるとして、1日に20〜35mgは、食事から摂取しないと間に合わないことになります。
約30mgを摂取しようとして、献立を考えると、
- 鶏レバー:約300g(串3本分)
- カツオ:1.4kg分
最も多く効率が良いのはレバーですが、毎日レバーを食べるわけにもいきませんね。
吸収の悪いヘム鉄であれば、1日200~350mgもの量が必要になりますが、茹でたほうれん草100gは、鉄0.9g。ステンレス鍋で茹でたひじき100gは、鉄0.3g。キロ単位で食べないと必要量をまかなえないことになります。
ですが、鉄鍋は使えます!
ひじきも鉄鍋で茹でると、100g当たりで、鉄2.7gに増えます。ひじきに含まれる鉄は大したことがないのですが、鉄鍋由来の鉄分が加わります。
鉄鍋は、食品に吸収の良い鉄分が溶け出すことで効率的に鉄分を摂取できるためおすすめです。
特に、酸性のものを茹でると多く溶け出すため、トマトや酢など酸性のものを煮ると効率的です。
(出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂))
40代50代は「ヘム鉄のサプリメント」が現実的
症状がある人の場合、食品だけでなんとかしようとするとかなり辛い期間が長引いてしまいます。私たち分子栄養療法医は、最も吸収の良いヘム鉄のサプリメントをおすすめしています。
月経がある日もない日も、足りない人が補給する目的であれば、25〜30mg程度の内服をおすすめしています。
「鉄を飲んだら胃が荒れた」という声がよくありますが、この場合、胃腸障害がおきやすい非ヘム鉄を選んでいると思われます。鉄欠乏性貧血の場合に、病院で保険診療で処方できる鉄も、残念ながら非ヘム鉄です。
胃腸障害なく、吸収効率が良いタイプのヘム鉄を選ぶことをお勧めします。ドラッグストアや専門店で相談してみましょう。
また、鉄吸収のため腸内環境を整えるのも大事
鉄を口から補っても、全く改善しない人がいます。この場合、腸内環境が悪いのではないか?と疑ってみるべきです。
食生活がめちゃくちゃで、腸内環境が悪いと、鉄などのミネラルを腸内の腐敗菌が奪ってしまい、いくらサプリメントにお金をかけようが、全く意味なしでお金の無駄!
月経の出血量が多くないのに、鉄不足の人は、食事を整えて腸内環境を改善するだけでも、鉄の吸収が回復することもあります。
鉄の多い食品だけでなく、発酵食品や腸内細菌のエサである食物繊維源として野菜や海藻、キノコ類、豆類などをしっかりバランス良く食べて、腸内環境も同時に改善しましょう。
鉄不足以外で起きる貧血を識別する必要もある
ただし、貧血と言っても、原因は様々で、必ずしも鉄不足とは限りません。貧血の種類によっては、鉄が体内で過剰に蓄積している場合もありますから、できれば、血液検査で、貧血検査だけでなく、鉄の蓄えであるフェリチンという数値も測って、確認することをお勧めします。
分子整合栄養療法(オーソモレキュラー療法)という栄養療法を行なっているクリニック検索はこちら。
「ヘモグロビン」の数値が低く「貧血」の病名がつく際には、保険で検査が可能になる場合がありますが、それ以外は、保険が効かず、自費検査になります。一般的には、1万円代で行うことができます。
これって貧血?めまい?区別しにくい不調は何科に相談すればいい?
そもそも、「貧血」と思っても、貧血ではないかも知れません。
「貧血」「めまい」は、よくある症状ですが、区別がつきづらく、病院に相談したいけど何科に行けばいいかわからない。受診しても「うちじゃないから他科に行って」などと冷たくあしらわれてしまう。というお声をよく聞きます。
これらの区別をつけることは、自分の体をよく知る一歩です。以下の記事もご参考に。
>>>「貧血」?「めまい」?何科に相談?
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