【岩井志麻子】なぜかモテる女に「共通する会話術」とは?

2021.01.19 LOVE

二人の女性死刑囚には、本人達は否定したいはずの共通点がある。首都圏で捕まったK、地方で捕まったM、ともに肥満体の不美人なのに、男にモテモテだったことだ。

しかも被害者や、難を逃れられた男達には、どうしようもないダメ男は見当たらず、皆それなりの職業や経済力があったり、真面目な人、優しい人と評判だったりした。

女性死刑囚たちがモテる理由

だから「モテたのは、二人とも口が上手いんだ」といわれ、実際その通りだった。

私はMの方は現地に飛んで取材もしたが、このときなんともいえない気持ちになったのは、
「Mはとにかく、男を誉めてくれる。男もいい年になったら、そんな誉められたりしないだろ。でもMは、『あなたいい男ね』『男らしい』みたいに真顔でいってくれた」

と、何人かのMを知る男にいわれたことだ。弱みに付け込む、商売上のお世辞、という受け取り方もできるが、それでも男はいってほしいし、いわれるとうれしいのだ。

Kの場合、婚活をしている体で男を誘うが最初から結婚する気はなく、金を取ったら逃げるか始末する気だったので、何でも話を合わせられ、理想的な結婚相手を演じられた。

 

インフルエンサーAがモテる理由

知り合いのAも、容姿はさほどでないのにモテモテ女性だ。ただAは一般人なので、本人や関係者を特定されないよう、ちょいと脚色を加えて書くのをおことわりしておく。

さてAは一般人だが、人気芸能人並みのフォロワーを持つ、いわゆるインフルエンサーだ。Aは、狙った男の前で波瀾万丈の人生を語る。高名な富豪の子を産んだ。ある有名芸能人と結婚していた。今は世界的な企業の社長に可愛がられている。
彼らの実名は、決して出さない。口止めされているのではなく、存在しないからだ。

それ単なる詐欺師、虚言症じゃないかと突っ込む人もいる。否定はできないが、なんといってもAは、全身全霊で作り話をするというのか、話しているうちに自分でも自分の話を信じてしまい、嘘をついている自覚をなくし、赤裸々に語る正直な女になっていく。
だからこそ、Aの話は魅惑的だ。Aは、目の前の男を観客にしていく。役柄が憑依した名演技だから、観客もこれは創作とわかってしまっても、もっと舞台を観たくなる。

無神経なバカ正直と、精進しないが故の大根演技は、モテ現場では有効でない。詐欺は論外として、自分もだませるほどの真摯な演技で、恋愛舞台を楽しませる名女優になろう。

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この記事は
作家 岩井志麻子

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