誰に見られていたかがわからない。永遠に「恐怖」の中を生きる【不倫の精算#15後編】

不倫を選ぶ女性たちの背景には何があるのか、またこれからどうするのか、垣間見えた胸の内。前編からの続きです

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【不倫の精算#15後編】

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仕事以外に関心のなかった夫が、豹変した瞬間

そんなBさんに彼も同調したのか、誘われる時間が早くなり、またふたりでバーから出るのも深夜で、「もっと一緒にいたい」という情熱を確認しあう日々だった。

 

「浮かれきっていた」と何度も口にするBさんが夫の変化に気づいたのは、そんな不倫関係が三ヶ月ほど続いた頃だった。

 

いつものように着飾って出ていこうとすると

「今夜も遅くなるのか」

と“冷たい声で”話しかけられた。

 

そのとき「胸によぎった一瞬の不安」を、Bさんは今でも覚えているという。

 

週末の“お出かけ”は、仕事が忙しく家事も育児も関われない夫がBさんのために認めた時間だった。

 

はじめこそ、いつも同じ時間に出て0時前には帰宅していたBさんだったが、その頃には

「夫と娘のご飯を大急ぎで作ってメイクして、夫の帰宅と同時に家を出る感じ。

土曜日は出勤しても残業はしない約束で、

『高校の同級生と再開して約束しているから、できるだけ早く戻ってね』

ってお願いしていたの」

という。

 

以前より家を空ける時間が長くなっていた。

それを正面からとがめられたことはなかったが、その夜の夫の言葉は

「明らかに私を非難している」

とBさんは感じた。

 

「また、あの店に行くのか」

と夫は重ねて尋ねてくる。

 

「そ、そうよ。いつもあそこよ。

Aのお店って知っているでしょ?」

とBさんは慌てて返す。

 

友人のAは夫にも紹介したことがあり、また“本当にそこに行っている”ことが、Bさんにとっては唯一の心頼みだった。

心臓が重たい音をたてる。

 

まさか、彼とのことが……。

 

次に飛んできた夫の言葉で、Bさんはいっそう凍りついた。

 

「娘は今夜も俺の部屋で寝かせるから、大きな音を立てるなよ」

夜中の2時近くに帰った先週、酔っておぼつかない手でついコップを落としてしまい、そのせいで娘が目を覚ましたことを指していた。

「……」

Bさんはうなずくだけで家を飛び出した。その日から、夫の態度は変わった。

 

掴まれた。その恐怖だけで甘い時間は吹き飛ぶ

「どこで夫は気づいたのだろう」

この夜、Bさんの脳裏を繰り返しめぐっていたのは恐怖だけだった。

 

彼にのぼせ上がる一方、夫への関心はがっくりと下がっていた。そんな自分に何の違和感も持たないまま、週末だけを楽しみに過ごしていた。

 

娘との時間はもちろん大事にするが、夫に対してはろくにお疲れさまの言葉もない。会話もない。「遊びに行かせてもらうから」と、食卓にはあえて夫の好物を出していたが、どれも明らかに時短で済ませられる内容だった。

 

新しく買うのはメイク用品、よそ行きのワンピース。夫がこの数ヶ月目にしていたのは「お出かけの時間に意識を向けている」Bさんの姿だったろう。

 

通販でこっそり買ったセクシーな下着は慎重に隠していたが、「夫に気付かれた今」はそれすら不安を増すひとつであり、Bさんの「週末の幸せな時間」は一気に爆弾のような重たさでのしかかった。

 

彼と会っている間も夫の言葉ばかりが蘇り、ベッドでの時間もバーに移動してからも、「もし夫が監視していたら」と思うと身が固くなるような恐怖を覚える。

 

そんなBさんを彼は気遣ってくれたが、本当のことを言い出せないまま、「体調が悪くて」とその夜は0時で帰宅した。

 

動悸がおさまらない胸のまま、おそるおそる部屋に入る。電気の消えたリビングも、娘と夫がいる寝室も静かだったが、シャワーを浴びる気にもなれなかった。

 

そんな事実、なかったことにしたい。不倫の泥沼

「どうしよう、夫に不倫がばれたかも」

その夜から数日後に電話をかけてきたBさんは、憔悴しきった声ですべてを話してくれた。

 

夫から急に家計簿を見せろと言われたこと。

残業の予定が変わっても連絡せず帰宅すること。

昼休みに突然電話してきて居場所を確認すること。

そのどれもが、「私の不倫の証拠をつかみたがっている」とBさんは感じていた。

 

「知っているんだぞ」とは言わなくてもあからさまに出せば、こちらが警戒するのはわかっているはずであり、それ以上に「探っているんだぞ」と示すような夫の様子がBさんは恐ろしかった。

 

今のBさんは、彼とはきっぱりと別れた。友人のバーにも一ヶ月ほど足を向けていない。

 

「そのAさんにはこのことは話したの?」

と尋ねると、

「夫が変わったことは言ってないけど、しばらくお店には行けないって言ったの。

急に来なくなったら心配するだろうから」

と力ない返事が戻ってきた。

 

連絡をした日、友人には不安そうな声でこう言われたという。

「もしかして、何かあった?

あなたたち、うちでは相当目立っていたから気をつけろって言ったじゃない」

 

これを聞いたBさんは、いたたまれなくなって電話を切ったそうだ。

 

もちろん、友人に非がないのはわかっている。

むしろ不倫がばれれば大きな迷惑をかけることになる。それを想像すると「心臓が痛むような」焦燥が襲うのだ。

 

Bさんはしきりに

「夫の疑いをそらす方法」

「不倫していないとわからせる証拠」

を欲しがった。だが私は、動けば動くほど、逆に夫を刺激することになると感じた。

 

不倫の疑いを持たれていわゆる「悪あがき」に走る人は多いが、その言動こそが裏にあるやましさを露見させる。

「何もしないこと」

これしか、Bさんに返せる言葉はなかった。

 

誰が見ていたかわからない。爆弾がずっと生活を脅かし続ける

急に“お出かけ”をやめたBさんに対して、夫は何も言わないそうだ。

 

Bさんには「疑われていながら不倫相手と情事を楽しむ」ような度胸はなかった。出ていくのをやめて、彼とのLINEのやり取りや写真もすべて消した。

 

だが、この極端に行動を変えたことが夫の疑いを加速させたのか、不意打ちのような帰宅や突然の連絡はやまず、いっそうBさんを追い詰める。

 

Bさんは自分ではどうしようもない「真実」に怯えていた。

 

「私、バーで彼と腕を組んだりイチャイチャがすごかったのね。

それで若いカップルに『仲いいですね』とか言われるのがうれしくて、肩にもたれかかるとかいつもやっていて……。

Aにも言われたけど、誰が見ていたかわからないの。

もし夫の知り合いとか私の友人とかが見ていて、それが夫の耳に入ったら……」

 

バーで繰り広げた“醜態”を、どれだけの人に見られたか。

 

あのときは、それが羨望のまなざしだと思っていた。

だが、現実を見れば

「不倫相手と深いスキンシップをとる自分」

は痴態でしかなく、どんな言い逃れもできないのだ。

 

夫が何を知り、何をしたがっているのか、本当のことはわからない。

いま言動を改めても、過去の自分を消すことはできない。

この“爆弾”がいつBさんを襲うのか、もしくは不発のまま朽ちていくのか、誰にもコントロールはできないのだ。

 

 

「どう見ても不倫」というつながりを不特定多数の人に見られるリスクは、高揚しているときはなかなか思いつかない。

だが、疑われる段階になったとき、その過去が何より自分を苦しめることになる。

いっときの快楽が大きな責めとなるのが不倫であり、その後始末も、必ず自分が負うことを忘れずにいたい。

 

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