閉経後HRT中です。コレステロールが高いと言われたのですが…?【医師Q&A】

2021.03.06 WELLNESS

40代・50代の「ちょっとした身体の悩み」や「どこに相談すればいいかわからない医療の困りごと」について、医師で予防医療スペシャリストの桐村里紗先生に教えていただきます。

 

Q:閉経。コレステロールが高いと言われました。どうすれば?

こんにちは。私はいま53歳で、非常勤講師をしています。
今日は閉経と血液検査の数値の捉え方、また対策についてお伺いします。

52歳半ばで閉経、半年後に関節痛が出てきたりしています。血液検査で鉄分はしっかりとれていて、中性脂肪は50と下限値であるものの、HDLコレステロールが89、LDLコレステロールが149です。

ちょうど、HRT療法を開始したところです。LDLを減らしましょうといわれ、運動を意識してはいますが、なぜこのように、中性脂肪は低いのにLDLが高くなるのかがわかりません。

また、LDLだけ減らすには、いま行っている運動と、食事で飽和脂肪酸をとらないようにする以外に方法があるのかなどお伺いできれば幸いです。(53歳・非常勤講師)

A:閉経後はコレステロールだけ高くなって当然。コレステロールは、女性ホルモンの原料です

まず、女性ホルモンの変動とコレステロールは、密接に関連していますが、中性脂肪は、特に関連がありません。女性の場合、閉経に伴って、コレステロール値のみが高くなることは珍しいことではありません。

 

コレステロールには、実は2種類の基準値があります。

 

日本動脈硬化学会の基準値では、LDLコレステロール値が140mg/dL以上、HDLコレステロール値が40mg/dL未満、である場合に脂質異常症とされています。

 

ただし、これは男女共通の基準値で、女性の閉経に関わるコレステロールの上昇が加味されていません。

 

女性の年齢的な変化に即した「日本人間ドック学会」の新基準では、45〜64歳の女性のLDLコレステロールは73~183mg/dl、HDLコレステロールは、40~119mg/dlが基準値となっています。この場合、相談者さまのコレステロールは基準値内ということになりますね。

 

コレステロールはホルモンの原料。閉経後にはLDL値が上昇しやすい

実は、コレステロールは、ホルモンの原料です。
女性ホルモン(エストロゲンやプロゲステロン)、男性ホルモン(アンドロゲン)、副腎皮質ホルモン(コルチゾール)などのホルモンは、コレステロールを原料にしています。

月経がある女性では、女性ホルモンをつくる為にコレステロールが利用されます。女性ホルモン・エストロゲンは、LDLコレステロールの取り込みを促進させるために、血中のLDLコレステロールを低下させます。

閉経後には、この働きがストップするので、血液検査でLDLコレステロールが上昇してしまうことになります。

一方で、中性脂肪は、女性ホルモンの分泌と関連がないために、閉経前後で変化することはありません。

 

誤解しがちですが……運動をしてもコレステロールは下がらない!

まず、運動をしても、LDLコレステロールは下がりません。
一方で、中性脂肪は下がりますし、HDLコレステロールを上げることはできます。

ただし、相談者さまの場合、中性脂肪は正常下限、そしてHDLコレステロールはむしろ高めで良好です。
そのため、運動をすることでこれらのバランスが改善することは期待できなさそうです。

ただし、有酸素運動は、動脈硬化を予防し、細胞のミトコンドリア機能を活性化し、抗酸化力、免疫力などを高め、ロコモを予防するためには必須ですから、ぜひ続けてください。

 

LDLだけよりもHDLとLDLの比をみること

実は、LDLの値だけで、動脈硬化のリスクをみるわけではありません。
血栓の原因になるLDLと血管を掃除してくれるHDLの比が大事です。
LDL/HDLの比=1.5未満であれば、動脈硬化のリスクが低く理想的とされています。

  • 1.5未満:動脈硬化リスクが低い
  • 2以上:血栓ができ始め動脈硬化が起こり始め
  • 2.5以上:血栓のリスクあり、動脈硬化のリスクあり

相談者様の場合、LDL149/HDL89≒1.6 と比較的良好です。
HDLが比較的高いため、動脈硬化リスクは高くないと言えます。
LDLの値だけでなく、バランスをみていくことが重要です。
ただ、理想に近づくためには、もうちょっとといったところですね。

 

意外に意味がない?食事療法は必ずしも効果が出るわけではない

実は、食事のコレステロールを減らしても、血中のLDLコレステロールが必ずしも減るわけではありません。

実は、体内のコレステロールの70-80%は、肝臓から作られます(内因性コレステロール)。
一方で、小腸で吸収される食事由来のコレステロールは、体内のコレステロールの20~30%です(外因性コレステロール)。

体内のコレステロールの量は、一定量になるように絶妙に調整されているので、食事からのコレステロールの摂取を減らすと、逆に肝臓が多く作り出してしまうこともあります。

また、食事からのコレステロールの吸収率は、20~80%と人によって差があります。
吸収率が悪いタイプでは、食事制限をしても効果が得られにくいのです。
現状では「あなたは食事制限が効くタイプ!」という診断が簡単にはできないため、食事療法をやってみて血液検査に変化があるかどうかみるしかありません。

食事からの吸収を抑えるには、コレステロールの多い食事を減らすことに加えて、食物繊維を含む野菜・海藻類・キノコ類・豆類・雑穀類などをしっかり摂取して、排泄を促すことも大切です。

 

ただし、油だけは質を重視して摂る必要があります

食事由来のコレステロールが関係ないタイプであっても、油の質には注意する必要があります。
劣化した油は動脈硬化を促進するため、質の悪い油を含む食品は控える必要があります。
植物性油脂、加工油脂を含む加工食品、サラダ油、コーン油、大豆油、マーガリン、ショートニングなどのとり過ぎは、動脈硬化を促進します。

注意しないと、様々な加工食品に含まれています。

魚の油であるEPAやDHA,アマニ油、えごま油、麻の実油などのオメガ3系脂肪酸は、むしろ積極的に摂りましょう。
加熱すると劣化しますので、これらは、非加熱が基本。
動脈硬化を抑制する効果があります。

加熱調理には、米油、国産菜種油、エクストラバージンオリーブオイルなどのオメガ9系脂肪酸を多く含む油が向いています。オメガ9系脂肪酸も、LDLコレステロールを下げ、HDLコレステロールを上げる働きがあります。

 

LDLよりも変性LDLが重要です。チェックしてみて

さらに言えば、実は、LDLコレステロール=悪玉とも限りません。
LDLコレステロールの中でも、酸化・劣化した「変性LDL」が本当の悪玉であって、酸化・劣化していない場合は、動脈硬化のリスクにはなりづらいことがわかっています。

一般的な血液検査で分かるLDLコレステロールは、酸化・劣化したものか、そうでないかの区別がつきません。
どっちか分からないから、「丸ごと悪者にしちゃえ」という判断になります。

この区別をつけるには、「LOX-index®︎(ロックスインデックス)」という血液検査が必要です。
この検査で「変性LDL」などの数値をみることで、本当の動脈硬化のリスクが分かります。
自費検査になりますが、全国の医療機関に導入されていますので、一度受けてみられては?

 

 

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桐村里紗先生

内科医・認定産業医。tenrai代表取締役医師。1980年岡山県生まれ。2004年愛媛大学医学部医学科卒。内科医・認定産業医。治療よりも予防を重視し、「ヘルスケアは、カルチャーへ」というコンセプトを掲げ、新しい時代のヘルスケアを様々なメディアで発信している。フジテレビ「ホンマでっか!?TV」「とくダネ!」他メディア出演多数。著書『日本人はなぜ臭いと言われるのか 体臭と口臭の科学』(光文社新書)他。

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この記事を書いたのは
内科医・認定産業医 桐村里紗

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