腸にストレスをかける【5つのNG生活習慣】と怖い病気リスク
生きていくうえでストレスは、あって当たり前。でもストレスをため込まないことが大事なのです。ストレスをため込まないためには、どうすればいいのでしょうか? ストレスに関する書籍の多くは、「ものごとを前向きに受け止める」「〝こうあるべき〟ではなく、柔軟に考える」など、心からストレスにアプローチする方法を紹介しています。でも本当にストレスできつい思いをしているときに、心の在り様を整えるのはけっこう大変です(以上書籍より抜粋)。そこで今回は、腸研究の第一人者、松生恒夫先生による著書『大丈夫! 何とかなります ストレスは解消できる』から腸の状態を整え、腸へのストレスを減らすことで、脳や心を元気にする方法をピックアップしてお送りします。【腸と健康 #6】
【5大ストレス】その1 偏った食事/野菜や果物不足、肉や揚げ油などの脂質のとりすぎ
健康のため、脳や腸のストレスを減らすため、何をすべきか? そんな質問を受けたら「栄養バランスのとれた食事をとりましょう」と私は答えます。「そんなことわかっているよ」「耳にたこができるほど聞いている」という声が聞こえてきそうですね。でも「知っている、わかっていること」と「実践していること」は違います。
「栄養バランスを考えて食べるべき」とわかっていても、仕事が忙しい、料理を作るなんてめんどうくさい、残業で疲れて食事の準備ができないなど、さまざまな理由で市販のお弁当や総菜などを利用している人も多いのではないでしょうか? 市販のお弁当なども、最近はだいぶ栄養バランスに気を配るようになってきたと思います。でもどうしても野菜や果物は不足してしまいますし、揚げ物のおかずが多くなりがちです。
肉や揚げ油に含まれる脂質は酸化しやすく、体の中でストレスを与える脂肪に変わります。酸化した脂肪は腸にダメージを与えるのです。
酸化ストレスは脳にもよくありません。酸化ストレスがかかると、脳血管の動脈硬化が進行して詰まりやすくなり、脳梗塞などの脳血管障害のリスクが高まります。さらに脳内に、アルツハイマー病の原因といわれるたんぱく質・アミロイドβを増やすこともわかっています。
最近の研究により高糖質も酸化ストレスを増加させることがわかってきたので、精製した穀物や白砂糖などをとりすぎるのもよくありません。
【5大ストレス】その2 エアコンの普及などで、寒さに対応できない人が増加中
気温差や気圧の変化など、天候によって体調が悪くなる人を最近は気象病と呼んだりするようですね。実際、寒暖差が10℃以上になると心身に大きなストレスがかかります。
クリニックで診察をしていても、急に寒くなると大腸の不調を訴える患者さんが増える傾向にあります。
私たちの体には体温調節機能が備わっています。たとえば暑くなれば汗をかいて体に熱がこもらないように、寒いときは末梢の血管を収縮して熱が逃げないようにコントロールしているのです(寒いときに、手足が冷たくなるのは、このためです)。ところが地球温暖化やエアコンの普及、住宅の気密性の向上などの理由で体温調節機能が乱れて、とくに寒さ(低温)に対して体が対応できない人が増えています。
寒さを我慢すると、腸にも脳にもストレスがかかります。
たとえば寒さを我慢していると大腸の働きが低下して、便秘になります。また寒さを我慢することで大腸が冷えてしまい下痢をする人もいるでしょう。
寒いと血管はキュッと収縮し、血流が悪くなります。脳や体内で使われる酸素や栄養素は血液によって全身に運ばれます。また、寒さで血流が悪くなると、細胞で熱をつくる働きも低下してしまうので、さらに体が冷えるという悪循環に陥ってしまいます。
【5大ストレス】その3 緊張状態が続く/緊張型頭痛はストレスで起こる代表的なトラブル
人間が生活していくうえで、適度な緊張は必要です。緊張している=自律神経のうち交感神経が優位になっている、という状態です。逆にリラックスしているとき、優位になっているのは副交感神経です。
たとえば仕事をするときなどは、交感神経を優位にして、体を緊張状態にします。いわゆる戦闘モードにするわけです。ただし緊張しっぱなしでは体が疲労してしまいます。だから夕方になると副交感神経優位にスイッチが切りかわって、体を休めようとする、人間の体はもともとそんなふうにできているのです。
でも残業が続いたり、夜遅くまでゲームやSNSなどに夢中になったりなど、緊張状態が長く続くと自律神経のバランスは乱れ、体はストレスを感じます。
緊張のしすぎによるストレスで起こる代表的なトラブルが「緊張型頭痛」と「便秘」でしょう。日本人の3人に1人は頭痛持ちで、頭痛に悩む人の多くがこの緊張型頭痛だと言われています。旅行や出張に行くと便秘をするのは、緊張のしすぎで腸も動きが悪くなったり、ダメージを受けたりするからです。また緊張した状態が続くと過敏性腸症候群や腹部膨満感を招くこともあります。
【5大ストレス】その4 慢性的な運動不足
「健康のため、適度な運動が必要」とよく言われますが、運動不足が健康に悪影響を与えることは明らかです。たとえば世界的に有名な医学雑誌「ランセット」には、次のような報告が載りました。
⃝運動が不足すると、心臓病や糖尿病、大腸がん(結腸がん)、乳がんが増える(ハーバード大学の研究チーム)
⃝運動をしている人は、まったく運動しない人に比べて死亡リスクが14 %低下する(台湾国家衛生研究所の研究チーム)
大腸も例外ではありません。運動不足は大腸の動きを悪くし、便秘などを引き起こす要因のひとつです。また適度な運動は気分転換になるので、副交感神経を優位にして、脳のストレスを軽減する作用があります。
世界保健機関(WHO)と米国疾病管理予防センター(CDC)は、1日30分の運動を週5回程度行う(トータルで週に150分の運動)ことを推奨しています。しかしこれはなかなかハードルが高いよう。日本でこの基準を満たしている人は20%程度だと言われています。
【5大ストレス】その5 不規則な生活/1日のリズムを作るため、朝食は大事
不規則な生活がなぜいけないのか? それは自律神経のバランスが乱れるからです。朝、起きたばかりは副交感神経が優位ですが、太陽の光を浴びたり、朝食を食べたりすることで体は徐々に目覚め、交感神経優位に切りかわり、活動モードになります。また胃腸に食べ物が入ると、胃・結腸反射が起こり、腸にたまっていた食べカスが下行結腸まで移行します。すると大蠕動運動が起こり、排便へとつながります。大蠕動運動は日に数回起こりますが、朝が最も強いことが知られています。ですから朝食を抜くような不規則な生活が習慣になってしまうと、腸の働きは鈍くなり、おなかが張ったり便秘したりするのです。
また食事時間の偏りは、食欲を過剰に増進させるなど脳にとってもストレスになります。たとえば朝食を食べないと食事の間隔が開きます。すると次の食事のときに、空腹を満たそうと早食いになりがち。脳が満腹だと感じるには食べ始めてから約20分かかりますが、早食いをすると満腹中枢が刺激される前に食べ物をどんどん口に入れてしまうので食べすぎや肥満につながります。
▶大腸がん、乳がんの発症率が低い地中海地域の「腸が喜ぶ朝食」とは?>>詳しく読む
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松生 恒夫 ・著 中村知史・イラスト 主婦の友社・刊
あなたのそのストレス、軽くなります!
腸研究の第一人者、松生恒夫先生による、
腸からはじめるストレス解消アイデアが満載です。
大丈夫! 何とかなります ストレスは解消できる
松生 恒夫 ・著 中村知史・イラスト 主婦の友社・刊
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