ストレスの多い現代社会。40代からの女性はどう働くべき?【上野千鶴子さんに聞く②】
■自分らしく働く=正気な生き方
━━管理職、リーダー職であっても、パワーゲームではなく、自分らしく働きたいという女性たちは少なくないと思います。
上野:人生は仕事だけじゃないですからね。仕事のために人生があるのではなく、人生のために仕事があるのですから。
パワーゲームにコミットして定年までのあいだにトップにまで上り詰めようという人は男女ともに少数派だと思います。そうでないとしたら、40代50代は定年後を見据えた助走期間です。なぜかというと会社員人生には必ず終わりがくる。あるとき「明日からあなたは会社へ来なくていい」と言われます。定年が60歳から65歳に延長してもここから先が長い。人生100年時代ですから、30年はあります。オギャーと生まれた赤ん坊が30歳過ぎるまでの年月です。そうなると40代、50代は次のラウンドをどうするかが、大事になります。私は定年後に軟着陸しているモデル退職者の調査をしましたが、わかったのはわりと早い時期から複線人生を始めていることでした。私達の調査ではだいたい40代から助走期間が始まっていました。
━━40代から仕事以外のことを始めているのですか?
上野:そうです。しだいに生活の中で仕事とそれ以外のウェイトの割合が変わってくるんです。だから40代で新しいことを始めるのに早すぎることはありません。少しずつでいいからチャレンジしてみることをオススメします。60歳で定年してからが長いです。はっきり申し上げますとなかなか死ねません。私達は死ぬに死ねない時代を生きています。
後半生は下り坂の人生ですけれど、どうやって機嫌よく生きていくかを考える必要があります。親を見送り、子育てからも卒業します。夫がいてもそれまでにキャンセルしているか、これからの時間を一緒に生きるかどうか選択する時期でもあります。長く続いている夫婦って何度かの節目で仕切り直しをして、諦めも含めて再選択をしながら夫婦関係を続けているのでしょう。
見合いでも恋愛でも結婚は「くじ」みたいなものです。よほどひどい人でなければ、慣れれば習慣になります。日常って習慣の積み重ねですからね。仕方ないわ。この人とやっていこうと思う。そういうのを「仕合わせ」というのでしょう。私が見た限りでは、離婚した人たちは結婚に破綻した人たちというよりも、結婚にあきらめがつかない人たち、欲の深い人たちです。その人たちが離婚するエネルギーを発揮して、そうじゃない人が離婚せずに夫婦を続けているのだと思います。
『最後の講義完全版 上野千鶴子 これからの時代を生きるあなたへ 安心して弱者になれる社会を作りたい』
知のスペシャリストが学生たちに「今日が人生最後の日だったら何を語るか」というテーマで特別講義を行うNHKの人気番組「最後の講義」。上野千鶴子さんの回ではこれまでの学問を通じて女性の問題に対してどう社会を変えようとしてこられたか、本当に必要なのは弱者になったときに助けてもらえる社会であることを率直な言葉で語り、後輩たちにエールを送ってくれています。
著者:上野千鶴子
出版社:主婦の友社
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続き→【上野千鶴子さんに聞く③】40代、50代。親の介護と、自分の老後が不安です (4月19日(火)17時公開)
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