活字が読めないレベルまでメンタルをやられた私。大人が救われるために必要なものって|『倫敦塔』

2022.05.17 LIFE

あなたは今週、どんな本を読んでいますか?

国内の読書会のパイオニアにして、日本最大級の読書コミュニティ「猫町倶楽部」のメンバーの皆さんが、働く40代女性のために自分の読書体験をシェア。おすすめの書籍が「自分をどう変えてくれたのか」、その体験を教えてくれる連載です。

今週のオススメ人は、富山県在住のまあささんです。

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はじめまして!富山県に住むまあさと申します。何かしらおもしろそうだなとアンテナに引っ掛かれば古典作品からコミックまで広く浅く読みます。どうぞよろしくお願いします。

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今週の1冊▶『倫敦塔』夏目漱石、『羅生門』芥川龍之介、『瓶詰地獄』夢野久作、『秘密』谷崎純一郎、『駆け込み訴え』太宰治

 

体調を崩してしまった。ちょっと復活のタイミングで念願の読書会に参加してみると……

昨年少し体調を崩したこともあり、療養のため働くペースを落としバイト生活を経て、ようやく4月からフルタイムで働き始めたところです。猫町倶楽部に入ったのはちょうど1年前、バイト生活に入ろうとしていた時のことでした。今では毎日開かれている多種多様な読書会に圧倒されながらも、おもしろそうな本を見つけては読書会に楽しく参加しています。

 

読書会にはいくつの形式があって、猫町倶楽部では、課題となる本を読んで、みんなで感想や気づきなどをシェアする「課題本型」という形式を取っています。参加条件は、課題本を読了すること。もちろんその読書会ページの参加ボタンを押して意思表示するのも必要です(何回か読むだけ読んで参加ボタンを押してなかったこともあります泣)。

 

文学作品だけでなく、ビジネス書、映画の感想会、海外SF、バリバリの古典から長編作品まで、いくつものタイプの本の読書会があって、そのいくつかに参加してきました。

 

「本当に意味あるのかな…?」疑いながら参加した短編読書会が私の運命を決めた

その中で、私が思いがけず入り浸っているのが「30分で読める短編読書会」です。読書会としては抜群に面白いと感じています。短い作品なのに、そんなに話すことがあるの?確かにそうですよね、正直最初は私も疑いの目で見ていたところもあったくらいなので当然です。

 

この読書会で課題本として取り上げられる作品は、文字通り30分ほどで読めてしまうものです。これまで参加したのは、夏目漱石「倫敦塔」、芥川龍之介「羅生門」、夢野久作「瓶詰地獄」、谷崎純一郎「秘密」、太宰治「駆け込み訴え」(順不同)。

 

どうですか、このラインナップ。名前だけは知っているものの、作品は教科書でしか読んだことがなかったり、名前しかわからなかったり、どちらかといえば避けてきたと言っても過言では
ありません。

 

では、どうして読もうと思ったのか、ズバリ「短いから」です。これなら読めそうと思ったのです。

 

体調にメンタルも引きずられるように下降気味(自覚あり)、気晴らしにでもと本を手に取っても読めなくなった時期に、気分を変えたくて前から気になっていた猫町倶楽部の門を叩きました。そしていきなり長編は無理だろうと踏んで、苦手意識のある古典だけれども短い作品の読書会をチョイスしたわけです。

 

思いもよらなかった。ときに苦痛を伴う読書が「楽しみ!」に変わる瞬間

が、これが結果、大当たりでした。よくある試し読み感覚に近く、しかもスマホやタブレットでちょっとした隙間時間に少しずつ読み進められる手軽さがとてもありがたかった。電子書籍で読みはじめるまで少々てこずり、「読むのに苦労してます」と猫町のみなさんに泣きついたりもしました。

 

しかし徐々に慣れてくれば、病院の待ち時間や通勤を使い、ちょっとずつ読み進めて1週間もかかりませんでした。

 

時間のやりくりが下手で、そういうときこそ本を読みたくなる、そんな私にはぴったりの短さでした。

 

世の中に短編小説は多々あれども、この時に読んだ夏目漱石の『倫敦塔』は、読みたいけど読めないジレンマから解放してくれたように感じていて、今でもたまに読み返しています。もちろん、実際の倫敦塔見物にもいつか行きたいです。

 

その後、いくつか短編を読んでくると、古典作品への微妙な警戒心も薄れはじめ、今年にはいってからは、某ドラマにも触発されて川端康成の「雪国」も読めるほどになりました。ただ、今から思えば、『倫敦塔』読書会の頃は、まだまだ不安だらけでした。

 

とりあえず一読したものの、あの有名な『坊っちゃん』すら読んだことがないのに参加しても大丈夫だろうか、とか、zoom操作もよくわからないし、とか。

 

また、読んだのは青空文庫だけど、やっぱり紙の本で読むべきだったかな? どんな人が来るんだろう? 場違いな雰囲気だったらどうしよう? 何もかもが不安で自信がなくて、キャンセルすることもできずに当日を迎えました。

 

不安と緊張と逃げ出したい気持ちと。はじめて参加する読書会は…?

しかしそれは当日の会場であっけなく氷解しました。

 

まず「他人の意見を否定しない」のが猫町のルール。「作品や作者を否定しても参加者の意見は否定されません。」というのを聞いて、いざ読書会開始。「夏目漱石は教科書以外知りません。数十年ぶりに読みました」と恐る恐る話し出したところで、ふっと一気に緊張がほぐれていくのがわかりました。

 

作品が短いからこそ、話したい人物や事件が同じということも多く、口火を切ってくれた意見に対して、「それ!私もそう思った!やっぱり!」や「そういうことか!私はこの人のことがよくわからなくてね、どうしてこういうことをするかなあ」がすんなり出てくるようです。それは不思議なくらい、場の雰囲気を和らげてくれます。同じ作品を読んだ、という共通項があるからかもしれません。

 

さらに、自分の考えがまとまらずもやもやしていても、それをそのまま話してくれた人もいました。それでも大丈夫、同じところをもやもやしていた人もいました。もちろん、詳しい方がいる場合には疑問について丁寧に教えてくれることもあり、理解が一気に進むこともままあります。正しい理解、ではなく、自分なりの理解が、です。ここが読書会で一番大事なところで、正しい感想、ではなく、自分の感想を話す場所だ、ということに気づかされました。

 

大人には「自分の感想を否定せずに聞いてくれる場所」が必要だと思う

この経験を経て、読書会に参加するために、と目標を立てて、課題本が読めるようになっていきました。自分なりの感想をシェアする場所があることで、ずいぶん気持ちが楽になり、やっと、読める時に読めるものを読めばいいんだと気楽に考えることができるようになりました。

 

この先のどのくらいの本が読めるかわかりませんけれど、猫町倶楽部にも頼りながら、無理せず気負わず構えず飽きたらやめるくらいの勢いで読み続けていきたいです。

 

倫敦塔・幻影の盾 』夏目漱石・著 539円(10%税込)/新潮社

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猫町倶楽部は、年間約200回の読書会を主催・運営する、日本最大級の読書会コミュニティです。
1年間の延べ参加人数は約9000人。一度の読書会に集まる人数は最大で300人、下は10代から上は70代までと幅広い世代に支持されています。

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