「更年期?それともうつ病?」憂鬱な自分の状態がわからなくてますます落ち込んでしまいます
青年期、壮年期などと同じような時期の呼び方として、女性の閉経の前後5年を更年期と呼びます。
日本人の閉経の平均は50歳のため、45~55歳は更年期にあたる人が多数。この時期に女性ホルモンの分泌が急激に減少するため、更年期障害と呼ばれる状態に至る人もいます。
乳がんのセカンドオピニオンを中心に診察する医師の新見正則先生は、丁寧に私たちの訴えに耳を傾けながら、「だいじょうぶ!更年期は絶対終わるから!」と太鼓判を押してくれる力強い味方。そんな新見先生に「医師に聞いていいのか迷うこと」をまとめて聞くシリーズです。
【Dr.新見の更年期あかるい相談室】#18
Q・自律神経失調?うつ?それとも更年期症状? 自分の状態がわからずますます悶々とします
新見先生、こんにちは。私はいま53歳で、昨年52歳で閉経しました。不調は5年ほど前、48歳ごろから出始めました。最初は胃が痛くなったり頭がぼーっとしたりして、さまざまな科を受診して、最後にたどりついた婦人科で「更年期の入り口だねぇ」と言われたことで納得して日々をやり過ごしてきました。
最近不調の波が続いたので、1ヶ月前から婦人科でHRTを始め、漢方の加味逍遙散も服用を始めました。そのころから強い目眩に襲われるようになりました。いつもならば1日2日休めば回復したのですが、今回はいつものようには回復できずに現在は休職中です。
家事もままならす、何よりも気分の落ち込みがすごくて、1ヶ月前は寝たきりの状態でした。気にしてしまうので自分ではあれこれ調べないように医師に言われているのですが、でもネットでいろいろ検索して、私は自律神経失調症?うつ病?などと悶々とした日々でした。
婦人科の先生のアドバイスや自分なりの検索の結果、朝散歩をしたり、運動をしたりして、徐々に改善してきてるとは思うのですが、頭が重いというか、ぼーっとしてしまうのが辛く、私はもしかしてうつ病なのかと心配で不安でたまらなくなります。
できることは前向きにやっているのに、どうしてこういう気持ちになってしまうのか、と。
また、婦人科のHRTには抵抗がないのですが、セロトニンを増やす薬も勧められていて、こちらには抵抗があります。長文ですみません。
(かりんさん・53歳 更年期症状の度合い/とてもつらく耐えられないときがある)
A・更年期は必ず終わるから大丈夫です。でも…
かりんさん、お苦しいでしょうね。辛い中でもご自分なりにいろいろと対策をして不調を克服しようとしている姿勢、立派だなと感じます。
最初にぼくからエールです。更年期障害は必ず治ります。心配しないでください、大丈夫です。
そして質問です。今回のご相談には通院先として婦人科のことだけが書いてありましたが、1か月休む診断書は誰が書いたのかな? 婦人科の先生は休む診断書はめったに書きませんので、おそらくお書きになっていないだけで、心療内科へもお通いなのだろうなとぼくは想像しました。今回は心療内科と婦人科の両方にお通いだろうなという前提でお返事しますね。間違っていたらごめんなさい。
薬は納得いくまで医師に質問して、話を聞いた上で飲んでください
さて、セロトニンを増やす薬というのは、心療内科で処方される「選択的セロトニン再取り込み阻害薬」という種類の薬だろうなと思います。ただし、副作用が出にくく精神専門の医師でなくても処方しやすいため、婦人科でも処方されることがあります。
ぼくは個人的には命に関わらないなら飲みたくない薬は無理に飲まなくてもいいと考えますが、かりんさんが飲みたくない理由は何なのでしょうか。副作用でしょうか? それとも脳に作用する薬を飲みたくないというイメージ的な問題でしょうか? もしすでに飲んでいる場合、メンタルのお薬は「勝手にやめない」ことが大事です。その上で、医師とちゃんと相談をしてください。治療方針に納得した上で薬を飲まないと効く薬も効きません。医師に飲みたくないんだという意思をはっきり伝えて、どうすればいいのかを相談してください。
ぼくは乳がんの患者さんのセカンドオピニオンを手掛けていますが、乳がん治療中は10年に渡って抗エストロゲン薬を服用するため強制的にみんなが更年期と同様の状態に陥ります。HRTはできませんので、みんな薬ではない自分なりの何かを見つけて更年期障害を乗り越えていきます。そこで必ずみなさんにお伝えするのが、更年期障害そのものは命に関わる病気ではなく、気楽に前向きに療養したら絶対治るということです。
更年期性の抑うつ症状も、心療内科の大うつ症状も、対策は基本的には同じです
抑うつはいくつかに分類されますが、更年期性のうつ症状も、大うつ症状も、基本的な経過はほぼ同じです。そしてメンタルの薬もHRTも、そんなにすぐにすごくよく効くということがないところも似ています。だいたい3か月くらいかけてジワジワと調子が上がっていくものです。ですから、どうですかと聞いて「ちょっと調子がいいです」と言われるくらいが医師として安心です。ただし、副作用は割とすぐ、1か月もしないうちに出ますので我慢はしないでください。
ちょっと気になるのは、かりんさんが前向きにいろいろなことを試しているのに調子が戻らないという点です。質問文には書ききれなかった原因がその背景にある気がするんです。
たとえば、夫が、子どもが、姑が、職場がというような「環境要因」は何か思い当たりませんか? もしこうした人間関係に耐え難い問題があるならば、いまこの更年期という時期に戦おうとはせず、できるだけ逃げてください。離婚でも別居でも家出でも、何でもしていいんです。かりんさんの心の平安がいちばん大切ですから、更年期に我慢はしないでください。
その上で、メンタルの問題は「人の記憶は上書きができる」という機能を利用するのがベストだとぼくは信じています。うつうつとした気分が続く人は、ささいなことでも楽しいことを小さく小さく積み上げて、コツコツと上書きしていくのです。コーヒーが美味しい、猫が鳴いた、テレビが面白い、そんなことも一つ一つ「楽しい」と敢えて言葉にして口に出して認識してみてください。
とはいえ、わかります、うつうつ状態のときって「上書きするためのインクが足りていない」ですよね。楽しいことで上書きしましょうと言われても、そもそも楽しいことが見つからない。すべてが辛い。インクの出も悪いからなのですが、もしメンタルの薬やHRTでバチっと合う薬が見つかるとインクがスムーズに出るようになり、格段にラクになります。ずっと飲み続けるのではなく、ある程度インクが出てくるまで利用するという気持ちで薬を飲んでみるのもありだと思います。
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■新見正則医院 院長 新見正則先生
1985年 慶應義塾大学医学部卒業。98年 英国オックスフォード大学医学博士取得(Doctor of Philosophy)。2008年より帝京大学医学部博士課程指導教授。20代は外科医、30代は免疫学者、40代は漢方医として研鑽を積む。現在は乳がん患者に対するセカンドオピニオンを中心に、漢方、肥満、運動、更年期など女性の悩みに幅広く寄り添う自由診療のクリニックで診察を続ける。がん治療に於いては、明確な抗がんエビデンスを有する生薬、フアイアの普及も行う。
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