
「今はコロナよりコロナ後遺症を全力で避けてほしい」免疫学者が憂慮する第8波が「過ぎたあとの惨状」
感染症法上の2類から5類への分類見直しも始まった新型コロナウイルス感染症。
「すでに第8波の渦中とされますが、感染者数が増えれば増えるほど、間違いなく『コロナ後遺症』に苦しむ患者さんも増えていきます。現在のところコロナ後遺症は治療方法がないも同然。このまま推移すればコロナよりも後遺症のほうが社会問題になる恐れもある」と警鐘を鳴らすのは免疫学者の新見正則医師。
日頃からコロナ後遺症患者の診察も行う新見医師にその現状を聞きました。
現状は「ワクチンを打つ/打たない」よりも、「いかに後遺症を出さないか」に注力するフェイズ
新型コロナウイルス感染症の発生からもうすぐ3年。第6波以降は死亡率も低下し、様相が変わりました。
「とりわけ第7波以降は、ワクチンもその効果に精彩を欠くのはご存じの通りです。現状は『ワクチンを打てば感染の不安がない』とは考えず、『打っても感染するかもしれない』と考えておくのが妥当でしょう。ただし、ワクチンが不要になったわけではありません。たった1つの切り札だったワクチンが、免疫力を上げるために何枚も持っておくカードの1枚になっただけと捉えてほしい」
そう話す新見医師は、むしろ新型コロナ感染よりも「新型コロナウイルス後遺症」を脅威に感じるそう。
「インフルエンザと新型コロナの最大の違いは後遺症。新型コロナに於いては驚くほどの高頻度で後遺症が発生する上、極めて強い症状に苦しめられます。こんなに多くの人が強い後遺症に悩まされる感染症、これまで何があったろう?と恐ろしく思うくらいです」
昨年12月の広島県の調査によれば、後遺症は34%が経験、うち休職するレベルの重度の後遺症が15%に発生しています。これまで全国で累計約2500万人が感染しているため、単純計算で125万人が休職に至った可能性が。仮に第8波で累計感染者数が4000万人に迫る場合、休職経験者が200万人近くに達するかもしれません。
「今年はひと冬を通じて免疫力を高く保ち、仮に感染しても発症せず抑え込める健康状態を維持することが大切です。もし発症してしまってもできる限り素早く治し、後遺症を出さずに済むようにしたい。後遺症のリスク要因が何なのかはわかっていませんが、これだけ不顕性感染もある中ではコロナ感染を完全に防御するのは難しいでしょう。そのため、かかることは織り込んでおき、とにかく悪化させずに後遺症を出さないことに気を配ってほしい」
コロナ後遺症「こんなに苦しいなら死んでしまいたい」と泣く女性
徐々に認知が広がるコロナ後遺症ですが、新見医師は「まだまだ医師にも知られておらず、受診しても治療につながらないことが多い」と述べます。
「ぼくもコロナ後遺症の診察を始めてまだ1年足らず。きっかけは、年明けの第6波のあと『検査では異常がないが、コロナに罹患した後に調子が戻らない』と訴える患者さんが立て続けにやってたことでした。経営層や士業など『働くほど利益になるので休む理由のない人たち』の来院が相次ぎ、周囲の医師たちも『コロナ後遺症なんて本当にあるの?』と半信半疑の中、ぼくは『ある』と確信を持ちました」
印象的な例を挙げてもらいましょう。22年3月末に受診したイズミさん(46歳)は、中学生、高校生の子どもと夫の4人で東京郊外に暮らす働くママ。上場企業で意思決定ができる要職に就く、いわば「休む理由のない人たち」の代表格です。2月に家族全員が順番にコロナに感染、イズミさんも少し体調が戻ったあと、1か月後にまったく動けなくなりました。来院できる体調ではなく、診察もオンラインでスタートしました。
「日常生活が極めて制限されるコロナ後遺症の典型症例は2つ。1つは『重力に逆らえない』、もう1つが『パフォーマンスが戻らない』です。イズミさんも両方に苦しんでいました。まず、『重力に逆らえない』ためベッドの上で座ることも辛いほか、シャワーは浴びられても手を肩の上に上げられず髪が洗えませんでした。嚥下も難しくなり、食事がのどを通りません。寝たきりで動いていないのにもかかわらず、体重は50㎏から47㎏に落ちたそうです」
体重減で筋力ががくんと落ちてしまったイズミさんはいっそう疲れやすくなり、同時に音や光にも過敏になりました。ダラダラと続く微熱、だるさ、そして不眠。
「仕事にも大問題が発生していました。ブレインフォグと呼ばれる、思考にもやがかかる状態で『パフォーマンスが戻らない』。仕事をせねばと気持ちは焦りますが、指に力が入らないのでパソコンのタイピングができず、目が文字を追うこともできません。『先生、私は頭が悪くなってしまったんでしょうか。どうしてもパソコンの画面が見られないんです。この状態って治るんでしょうか』と涙ながらに質問されました」
もちろんイズミさんも手をこまねいていたわけではなく、這うようにいろいろな病院の門を叩き続けていました。複数の大学病院でMRI、CT、心電図などの検査を受けましたが診断がつかず、困り果てて新見医師の元にたどり着いたのだそう。
「泣きながら『こんなに辛いならもう生きていたくない、自殺しようと思っていました』と続けます。『検査を受けても異常はないと言われるだけで、何がおかしいのかすらわからない。病名すらないので先が見えない、辛いからもういっそ死んでしまいたい』と言うんですね。これほどまでに辛いのかと」
コロナ後遺症患者はみんな流浪で疲れ果ててしまっている
対して、新見医師の反応は明快でした。
「コロナ後遺症の患者さんたちは、あちこちで邪険に扱われて、もう本当に疲れ果てているんです。ですから、いちばん大切なのは共感の言葉。『大丈夫だよ、治るよ。あと何日で治るかまでは言えないけれど、コロナ後遺症で死んだ人は自死以外ではいないから安心して』と答えたところ、彼女はしばらく黙り込み、そのあと絞り出すように『先生、はじめて治ると言われました』と口にして、それからぽろぽろと涙を流しました」
この診察がイズミさんにとっては転機になりました。それまでは診断書がないため有給休暇の状態でしたが、「コロナ後遺症」の診断書を手に改めて半年の休職を相談し、併せて新見医師から漢方の処方を受けて治療をスタートしました。
「彼女はその後もオンライン診察を継続していますが、初診から約半年の時点で症状が落ち着いたためリワークトレーニングに入ったと言っていました。年内には復帰する見込みだそうです。コロナ後遺症は雲をつかむような、正体の見えない病気。患者さんの訴えを丁寧に聞き、大丈夫だよ、安心して一緒に治そうよと伝えることが大切です。それを学ぶことができた症例です」
もう1人の症例からはまた違う様相と困りごとが見えてきます。その「意外な主訴」とは?
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