モラハラ夫に25年間苛まれても「いまなお逃げられない」妻の悲しすぎる理由。「田園都市線沿線の専業主婦によく聞くお話です」

2023.05.21 WORK

夫婦問題・モラハラカウンセラーの麻野祐香です。経済的に自立した「働く女性」であってもなお逃げ切れずに苦しむ夫のモラハラについて、長年に渡りカウンセリングを続けてきた私なりの対策をお伝えしています。

 

モラハラのご相談を聞くたびに思うのですが、ほとんどのモラハラ夫が同じようなことを言い、同じような態度を取ります。それを知らない妻たちは「自分が悪いから夫を怒らせてしまう」「自分がきちんとしなといけない」と思い込み、自分を追い詰めてしまいます。モラハラ夫は、妻を追い詰めることにかけては本当に長けているのです。

 

今回登場するモラ夫もその一人。いつも矢つぎばやに命令し、答えを考えている間に「じゃあいい」と話をさえぎり、そのあと延々と暴言を吐きます。そんな夫の態度にいつも辛い思いをしているのが妻のBさんです。今回は働く女性ではなく、専業主婦に起きたエピソードですが、仮に妻が働いていても、収入に序列があれば同様の被害が発生し得ると思ってお読みください。

 

夫は一流大学を卒業して一流企業で出世、3人の子どもはなに不自由なく大学まで進学させられた

専業主婦のBさんは46歳。3人のお子さんのうち、いちばん下のお嬢さんがあと2年で大学を卒業します。25年前の新婚当初は夫の態度がモラハラだとはわからなかったそうですが、子どもが生まれるたびに暴言や自分に向けられる態度がどんどんひどくなっていきました。何度も家を出ようと考えましたが、子ども3人を養う経済力が自分にないことから、踏ん切りはつかなかったそうです。

 

「数年前、偶然ネット記事でモラハラという言葉を知りました。チェックリストを試してみると、夫はほとんどが当てはまっていました。病気の原因がわかるとホッとするのと同じで、長年苦しんだ夫の豹変は私がダメなせいではなく、夫に原因のあるモラハラだとわかってホッとしました。でも、だからといって夫から受ける言葉や態度で傷つかなくなるわけではありません」

 

ほとんどのケースで、妻は夫がモラハラだと判明するとまずは安心します。しかしモラハラ夫と離れず一緒にそのまま暮らしていく場合は、これはハラスメントだとわかっていてもモラハラ夫の言動で心を傷め続けてしまうのです。

 

Bさんの夫は一流大学を卒業後、一流企業に就職、順調に出世しました。すでに役職にもつき、部下がおおぜいいます。とにかくプライドが高く、理詰めでBさんを追い詰めるタイプのモラハラ夫でした。

 

一例を挙げましょう。まだ子どもたちが小さかった頃のお話です。Bさんは毎朝、夫が好きな味噌汁と炊きたてご飯、焼き魚、卵焼きを用意していました。

 

「でも、たまたま体調が悪く、起き上がるのがやっとという日がありました。そんな中でも何か作らないわけにはいかないので、頑張って食パンとコーヒーだけは準備しました。ですが、夫はテーブルの上を見て大きなため息をつき、冷酷な目で言いました。『君は僕がこれから会社に行って仕事をすることに対して敬意を持っていないのか。こんなの朝食とは言えないよね。こんなものを夫に食べさせて、妻と言えるのか』と」

 

もちろん、Bさんも、いつもと違う朝食を出せば、ルーチンを守りたい夫に「怒られる」ことはわかっていました。

 

「自分の体調が悪いことを伝えても、『そうか、君の体調が悪いから、僕がいつものルーチンができないのか。僕は自分のルーチンを守らないと1日のリズムが崩れるのは知っているよね? 結婚するときに、どんな時も仕事のある日の朝食はいつも通りのものを作ると約束したよね? それを君は自分の都合でやらなくていいと思ったっていうことだよね?』と詰められました」

 

もともと聞く耳は持たない夫ですが、こうなると謝る以外にできることがありません。いまにも倒れそうな体調ですが、泣きながら必死に謝りました。

 

「『そんなことは思っていません。体調が本当に悪くてできなかったの。体調が戻ればいつも通りの朝食を作るから、今日だけは許してください』。でも、夫は『言い訳しかできない女だ』と吐き捨てて、私をいたわることは一切ないまま会社に行ってしまいました」

 

思い返せば、妊娠中つわりがひどい時も、Bさんは出産当日まで夫の朝食を作り続けていました。あの時無理をして作っていたから、頑張れば朝食くらいどうにでもなるだろうと夫は思ってしまったのでしょうか。どうしてそこまで言われなければいけないのか、どうして体調の心配をしてくれないのか、自分の存在は一体何なんだろうと泣き崩れてしまいました。

 

「心配した子どもたちが『ママ、大丈夫?』と背中をさすってくれました。『パパはママに優しくないよね、僕たちには優しいのにね』といういたわりの言葉を聞いて、この子たちを育て上げるまでは夫の存在は必要、それまで私が我慢するしかないと思ったのです。離婚となれば夫はあることないこと言い立てて親権を取るだろうし、仮に私が子ども3人の親権を取ることができても収入がないため十分な生活をさせてあげることができません。自分の勝手で子ども達に苦労をさせたくないと思ったのです」

 

豊かなご家庭に潜みがちな暗い影。経済不安があると離婚のハードルは想像のはるか上まで高くなる

Bさんが離婚を思いとどまる最大の理由はズバリ、経済的不安でした。これは珍しいことではありません。モラハラ夫との離婚を決断できない方の多くはBさんのように経済的不安と親権確保のどちらか、または両方に不安を持っています。

 

過去に私が受けた相談の中から、多い順に「離婚を決断できない理由」を5つ挙げてみましょう。

 

①専業主婦のため収入がない ②パートで仕事をしているが収入が不十分 ③正社員ではあるが、子どものお迎えなどで残業ができないため会社に迷惑をかける。迷惑をかけると失職しかねない ④実家に頼れない ⑤天涯孤独なので離婚をすると本当に一人になってしまう

 

Bさんの場合は①のほか、④も関わってきたそうです。

 

「実家に離婚したいと相談したとき、父は『出戻りは家に入れられない』、母は『あんなに好条件の人はほかにいないから我慢しなさい。うちに戻ってこられても孫の面倒は見られないし援助もできない』ときっぱり言いました。短大卒業後の事務1年しか職歴のない私が今から仕事を探しても収入は知れているし、実家にも頼れないのですから、とにかく子どもたちが大学を卒業して自立するまでは我慢しかないなと」

 

もちろん、とにかく離婚することが先決だと思い切り、子連れで離婚をした人もいますが、中には「収入が思うように得られない」「朝晩働くことになり子どもが一人で留守番することになってしまった」「仕事に疲れて子どもに対して怒ってばかり」「この子がいるせいで仕事が制約されると子どもの存在を疎ましいと考えてしまう」など、想像もしていなかった自分の精神的変化に思い悩む方も多くいるのが現実です。離婚は衝動的にはしないこと。5年、10年の単位で計画的によく考えてから行動に移したほうが、こうした後悔を防ぐことができます。

 

つづき▶従順な妻にモラハラ夫が仕掛けた「信じがたいワナ」ゴミを捨てただけでそんな仕打ちがあり得るのか

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