更年期の不調はHRT以外でもケアできるの!? 漢方・植物療法ってなに?

自然の力を借りて、体のバランスを整えていく治療法

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漢方はさまざまな生薬を組み合わせて処方し、全身状態のレベルアップに働きかけ、自然治癒力を高めていく治療法です。
一人ひとりの症状を見て、自覚症状や、その人の体格や顔色などの身体的な特徴から診断するのが特徴。更年期特有の不快な症状が少しずつ楽になっていくことも多いのです。
乳がん、子宮体がんなど、女性ホルモン依存性のがんの治療経験がある人はホルモン補充療法(HRT)が禁忌となることもあり、漢方をすすめられるケースが多いでしょう。

 

一方、「薬に頼らず、セルフケアで不調を改善して、体の若さをキープしたい」という人には、ハーブなどの植物の力でやさしく体に働きかける植物療法がおすすめです。植物療法も漢方と同様に、人が本来持っている自然治癒力を引き出して、体のバランスを整えてくれます。「何となく不調」というときは、穏やかに作用する植物療法で体と心を癒やしましょう。

 

具体的にはどのような漢方や植物療法が取り入れられるのでしょうか。

 

更年期におすすめな主な漢方薬

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当帰芍薬散 (とうきしゃくやくさん)

やせ型で繊細、体力がなく、冷え性の人に。貧血、頻尿、めまい、耳鳴り、動悸、肩こり、頭重などに有効。更年期のさまざまな症状に幅広く処方される。

 

加味逍遙散 (かみしょうようさん)

どちらかというと虚弱な人に。食欲不振、不眠、イライラ、のぼせ、
多汗、肩こり、頭痛などに有効。

 

桂枝 茯苓丸 (けいしぶくりょうがん)

肌の色つやがよく、がっちりした体格の人に。一方で、腹診によって繊細な人に処方される場合も。頭痛、肩こり、のぼせ、手足の冷え、めまい、下腹部のかたさがあるときにも有効。

 

柴胡加竜骨牡蛎湯 (さいこかりゅうこつぼれいとう)

上腹部のがっちりした体格の人に。のぼせ、不眠、動悸、肩こりなどに有効。カキの貝殻を乾燥させ、カルシウムを含んでおり、心を落ち着かせたり、血圧を安定させたりする作用もある。

 

女神散 (にょしんさん)

体力が中程度以上ある人に。のぼせ、めまい、気のふさぎなどに有効。

 

牛車腎気丸 (ごしゃじんきがん)

体力が低下気味で、コレステロール値が高い人に。腰痛、手足の冷え、しびれ、頻尿などにも有効。

 

加味帰脾湯(かみきひとう)

虚弱体質の人に。不眠やイライラに有効。

 

補中益気湯 (ほちゅうえっきとう)

胃腸障害、虚弱体質、病後の体力回復に有効。体を活性化させる。

 

葛根湯 (かっこんとう)

体を温める働きがあり、風邪薬として知られる。体力が充実している人の頭痛、肩こりに有効。

 

八味地黄丸 (はちみじおうがん)

頻尿、膀胱炎などの排尿障害に有効。腰を温め、痛みをとる働きもあり、腟や外陰部の萎縮にも効果がある。

 

芍薬甘草湯 (しゃくやくかんぞうとう)

就寝中や運動中に足がつるなど、急激な筋肉のけいれんや痛みを鎮める働きがある。痛みが起こってから服用する。

 

 

更年期におすすめな主な植物療法

植物の力をかりて、本来身体に備えている自然治癒力に働きかける療法を植物療法。ハーブティーなどで口から飲んだり、アロマポットで香りをかいだり、マッサージで肌に塗ったりしてケアをします。
マッサージにおすすめの植物オイルが、種子から抽出されたオーガニックオイル。皮膚や粘膜になじみやすく、腟のケアにも使うことができます。オイルは食用ではなく、アロマ専門店などでマッサージ用を購入してください。アプリコットカーネルオイル、マンゴー種子オイル、マカデミアナッツオイル、グレープシードオイル、スイートアーモンドオイルなどがあります。

(協力/森田敦子 植物療法士、サンルイ・インターナッショナル代表)

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更年期の諸症状

女性ホルモンの調整作用のあるチェストベリー、エストロゲンに似た作用を持つセージを1:1でブレンドしたハーブティーを飲む。ゆずやクラリ―セージの精油3 ~ 4滴を天然塩大さじ2に混ぜたアロマバスソルトも効果的。

 

免疫力アップ

免疫力を活性化するハーブとして知られるエキナセアのチンキ※を、水かお湯で薄めて飲む。また、抗菌効果の高いティートリーの精油を植物オイル10mlに2~4滴加えて、全身をマッサージするのもよい。

※チンキとは、ハーブの濃縮エキスのこと。アロマ専門店で購入できます。チンキと精油は、用量・用法を守って使用しましょう。

 

ドライアイ、疲れ目

ラベンダーの精油を洗面器のお湯に1~ 2滴落としてよく混ぜ、タオルをくぐらせて絞り、目元に当てて温湿布する。目の乾きからくる充血を抑え、リラックス効果が得られる。

 

肩こり、腰痛

湿布薬と同じ成分のウィンターグリーンの精油1滴を、植物オイル3 ~ 5mlに加えて、痛む場所にすり込むようにマッサージする。洗面器のお湯に天然塩大さじ1とともにウィンターグリーンの精油1滴を落とし、ホットタオルを作って温湿布するのもおすすめ。

 

足のむくみ

カリウムを豊富に含み、余分な水分を排出する効果があるネトル(西洋イラクサ)のハーブティーを飲む。植物オイル10mlにジュニパーの精油2~4滴を加えて、足のつま先から上に向かってマッサージするのも効果的。

 

便秘

消化器の働きを活性化し、デトックス効果があるダンデライオンのハーブティーを飲む。ストレスからくるおなかの張りと便秘には、マジョラムの精油2~4滴を植物オイル10mlに加え、おなかを中心にマッサージするのもよい。

 

膣の乾燥

粘膜の潤いをアップするラズベリーリーフ、または生殖器の強壮効果のあるメリッサのチンキを水かお湯で薄めて飲む。粘膜になじみやすいアプリコットカーネルオイルで腟まわりをマッサージするのも効果的。

 

手足の冷え

血行を促進し、新陳代謝を高めるゆずの精油1~2滴と、天然塩大さじ2を洗面器のお湯に入れて、手浴、足浴を。植物オイル3~ 5mlにゆずの精油1滴を加え、指先から体の中心に向かってマッサージするのもおすすめ。

 

不眠

気持ちを安定させるゆずの精油2 ~ 4滴を、植物オイル10mlに加えて、胸元をマッサージすると安眠効果が得られる。ディフューザーやアロマポットで香りを漂わせてもOK 。

 

落ち込み、うつ

憂うつな気持ちを明るく、上向きにしてくれるセントジョーンズワ―トのハーブティーや、水かお湯で薄めたチンキを飲む。不安な気持ちを癒やしてくれるネロリの精油6 ~12滴を、植物オイル30mlに加えて、全身をマッサージするのも効果的。

 

 

『50歳からの婦人科 ~こころとからだのセルフケア~』
松峯寿美・著
高橋書店 1,485円

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【お話】

松峯寿美 (まつみねひさみ) 先生
1946年生まれ。産婦人科医。70年、東京女子医科大学院卒業。医学博士。(婦人科)とくに不妊治療、思春期・更年期医療に力を注ぐ。
卒業後は女子医大に10年間勤務、〝不妊外来〟を創設。80年東峯婦人クリニック(東京・木場)院長に就任。女性専門外来の先駆けとなる。著書やマスメディアへの登場、からだの不調で悩む女性へ向けた講演なども多数。
妊娠・出産・更年期・老年期まで、婦人科系QOL(生活の質)を保つ医療を実践。骨盤底筋トラブルの治療や子宮脱を改善する経腟手術も行い、高齢女性の健康管理を見守り支える一方、2018年3月第一回「日本産前産後ケア・子育て支援学会」では、大会長をつとめた。 女性の一生を支える存在でありたい、こころもからだも美しくいきいきと過ごせる人生であるように、との思いで日々診療に向き合っている。

 

※記事の内容は書籍刊行当初の情報です。

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