インフルエンザがすでに46都道府県で流行発生警報に。「この冬の感染症」どう対策する?コロナは?その他の病気は?
現在、全国的に「定点当たりの患者報告数」が「流行発生警報」の開始値である定点あたり30を越えています。これから日本の冬は「入試」という「人生で絶対に欠席してはいけない大舞台」を迎えます。
この「普段と違う冬」の心構えを、免疫の専門家である新見正則医院院長・新見正則先生に伺いました。
*トップ画像出典・東京都健康安全研究センター インフルエンザ情報第14号 (2023年 12月15日発行)
5類化以降、コロナ3年で「感染しなかった分」が一気にきています。特に子ども
――インフルエンザ感染者数が高い数値で推移しています。いま何が起きているのでしょうか?
上図は2023‐24シーズン、つまり今年の東京都の定点観測推移です。左はし、スタートの36週(9月4日)の時点ですでにインフルエンザの感染が見られるのが今年のいちばんの特徴です。
下図は集団事例報告数です。23年36週から37週で一気に小学校と保育園での感染が広がったことが見て取れます。中学校もやや多いですね。
比較のため、さらに下にコロナ前の2018‐19シーズンの集団事例報告数をお示しします。グラフの形状から感染者数の割合まで、何もかも違うことがわかると思います。例年であればこのように湿度の低下する12月ごろに感染者数が増え、1月に入って増加します。
つまり、コロナで自粛した期間の感染がいま一気に起きていると考えていいでしょう。小学校の報告事例が多いのは、特に低学年の児童が幼稚園・保育園の時代に感染を経験せず、免疫を獲得できていないからとも仮定できます。
免疫とは、さまざまな感染症に少しずつ感染することで構築されていきます。何にも罹患しない状況を3年維持したしっぺ返しが一気にきている、と言えます。
もしかして、人類が病気に弱くなってしまったのでしょうか?
――漠然と感じるのですが、もしかしてコロナ禍の3年で人類全体が病気に弱くなったということでしょうか?
それはどうでしょうね。人類史上で3年もこんなに感染症をシャットアウトしていた経験がありませんから、比較ができません。
ただし、従来は「感染しても発症に至らない」何かに毎年微妙にかかり続けて免疫を維持できていたのかもしれず、その免疫ボーナスを一気に失った可能性、つまり人類全体が感染症に対して弱い状態に陥った可能性も否定はできません。これは調べようがありませんので、誰にもわかりません。
――23年は8月末からインフルエンザが流行を始めました。夏に流行するというのは、過去にもありましたか?
スペイン風邪をインフルエンザに数えるなら、答えはイエスです。スペイン風邪の日本での第1波は1918年8月から19年7月とされます。しかしこうしたパンデミックを除けば、そうそうは起きなかったことだと理解してよいと思います。
免疫は何かに微妙に感染し続ける「ブースター感染」で常時強化され続ける仕組みです。免疫の専門家の立場からすると、3年も厳密にガードしていたら真夏のインフルエンザなんてことも起きるよねという感覚です。
感染症のいちばんいい予防策はいちど罹患することです。でも、致死率の高いものはそうもいかないから、できる限り弱い方法で感染させる。それがワクチン接種です。どちらもできていないなら、いくらでも感染症の逆襲に遭います。
前編では今年の季節性感染症の状況について伺いました。後編では今年の対策と、受験生を持つご家庭へのアドバイスを伺います。
後編>>>受験生をかかえる家庭が不安に思う「ワクチン接種」と「感染症対策」この冬どうするべきなのでしょう?
■お話/新見正則医院 院長 新見正則先生
新見正則医院院長。1985年慶應義塾大学医学部卒業。98年移植免疫学にて英国オックスフォード大学医学博士取得(Doctor of Philosophy)。2002年より帝京大学医学部博士課程指導教授(外科学、移植免疫学、東洋医学)。2013年イグノーベル医学賞受賞(脳と免疫)。20代は外科医、30代は免疫学者、40代は漢方医として研鑽を積む。現在は、世界初の抗がんエビデンスを獲得した生薬フアイアの啓蒙普及のために自由診療のクリニックでがん、難病・難症の治療を行っている。『フローチャートコロナ後遺症漢方薬』はAmazonで三冠(東洋医学、整形外科、臨床外科)獲得。最新刊は『しあわせの見つけ方 予測不能な時代を生きる愛しき娘に贈る書簡32通』。
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