
どの「花」になら会ってみたい?女郎を花に見立てた『一目千本』は大ヒットしたが、いつの時代も著作者は経済苦で【NHK大河『べらぼう』#3】
*TOP画像/重三郎(横浜流星) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」3話(1月19日放送)より(C)NHK
吉原で生まれ育ち、江戸のメディア王に成り上がった蔦重の人生を描いた、大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」の第3話が1月19日に放送されました。40代50代働く女性の目線で毎話、作品の内容や時代背景を深掘り解説していきます。
吉原の女郎をあたたかいまなざしで見つめる蔦重。彼の次なるアイデアとは?
重三郎(横浜流星)は源内(安田顕)の「序」を挿入した『吉原細見』を出したものの、吉原のにぎわいは戻りません。多くの人たちが「源内か なら ちょいと読んでみよう」という気で読んでみるものの、それで終わってしまうよう。確かに、ガイドブックを興味本位で読んでみたものの、実際にそこに足を運ぶ人というのは多くはないようにも思います。
そうこうしているうちに、地方に売られる女郎や狭い室内で寝たきり状態にある女郎など、女郎たちがおかれる状況はさらに厳しいものに…。
そこで、重三郎が打った手は女郎を花に見立てた本『一目千本』の制作です。このアイデアは北尾重政(橋本淳)との会話でひらめきました。女郎を挿し花に見立てるとはなんとも粋なアイデア。
重三郎(横浜流星) 重政(橋本淳) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」3話(1月19日放送)より(C)NHK
『一目千本』 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」3話(1月19日放送)より(C)NHK
『一目千本』 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」3話(1月19日放送)より(C)NHK
重三郎と重政が「ツ~ンとしてる女郎は わさびの花とか」「夜 冴えないのは 昼顔とか」と、男同士の会話に花を咲かせるシーンは視聴者の笑いを誘いました。
視聴者の中には“私だったらどの花に見立ててもらえるんだろう?”と思った人や“この挿し花に見立てられた女性に会ってみたい”などと思った人もいるのではないでしょうか。
【史実解説】江戸時代は集めた資金で出版物を制作していた!?
史実においても、重三郎は遊郭から資金を集め、花魁の評判記や吉原の三大イベントの1つである俄(にわか)のガイドブックを発行していました。江戸時代において吉原は多くの男たちにとって憧れの場所でしたが、それは重三郎のマーケティングの成果といっても過言ではありません。重三郎は錦絵や出版物などをうまく活用し、多くの人たちを“江戸に行った際には吉原で遊んでみたい”という気にさせました。
花魁の中にも重三郎に依頼し、自分を売り出してもらっていた人がいました。現代において、アイドルや高級クラブのホステスは雑誌やSNSなどを活用して自身をブランディングし、存在を世に知らしめていますが、当時においては錦絵やガイドブックなどを使って同様のことが行われていたのです。
重三郎は経済的に恵まれていたわけでも、版元として有利な立場にあったわけでもありません。吉原の遊郭と信頼関係を構築していたからこそ、自身のアイデアをかたちにするための資金を調達できました。
また、当時、読者や本屋は本の代金を出版前に版元に対して支払うのが一般的でした。この商取引は入銀といいます。版元は入銀帳という予約を受け付ける帳面を持って営業活動を行っていました。本放送では、唐丸(渡邉斗翔)が「けど 本って お金出したお客さんに配るだけのもんだよね」と、重三郎に話していましたよね。
江戸時代の著作者の苦悩 自分の絵や文章を世に送るにはカネがかかる
蔦重の時代、ほとんどの著作者は銀(出版費)を版元に入れて、出版してもらっていました。著作者と版元の間で出版費用の固定費(板下の作成と板木彫り)を折半するのが一般的で、売れっ子も例外ではありませんでした。ただし、よく売れた本の後編を出す場合などは、著作者は入銀の負担なしですむこともあったそう。また、著作者が完成した本の何割かを買い取る方式を採用する版元もありました。
この時代、入銀(掲載料)はその本の話題性によっても左右されました。例えば、蔦重は当時人気の絵師と一流の狂歌師による絵本を何冊か出版していますが、これらの絵本の掲載料(入銀)は高額であったと考えられています。書き手は人気の本や話題性のある本に掲載することで、名声を高められるなどのメリットがありました。
現代でも、出版社側の儲けが期待できない本などは、著作者が出版費用の一部を自己負担することがあります。筆者も原稿を掲載料のようなものを支払って載せてもらうことがあります(費用の捻出はなかなか大変です)。出版時に経済的な負担を強いられた江戸時代の書き手たちに同情できるような気がします。
江戸時代の作家や絵師の多くが本業の収入のみでは生活できなかったといわれています。副業をしていた書き手もいたんだとか。あるいは、本業のある人がものを書くことも多くありました。例えば、滑稽本『浮世風呂』などで知られる式亭三馬(しきていさんば)は薬屋を営んでいました。いつの時代も、著作者は人気商売であり、経済的に不安定。生活費を筆一本で稼ぐのはむずかしいですね。
本記事では、第三話のストーリーを深堀りしました。関連記事では、江戸時代の歯磨き事情についてお伝えします。
関連記事▶▶江戸時代「虫歯、歯周病ケア」って、どうしてたの?意外なほど最近まで、歯のケアは贅沢なことだった【NHK大河『べらぼう』】
参考資料
車浮代『蔦屋重三郎と江戸文化を創った13人: 歌麿にも写楽にも仕掛人がいた!』PHP研究所 2024年
鈴木俊幸『蔦屋重三郎』平凡社 2012年
橋口侯之介『江戸の古本屋』平凡社 2018年
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