「引きこもり歴15年」でも芥川賞作家になれた、田中慎弥が教える「人生仕切り直し」の糸口とは?

2025.06.25 WORK

「死ぬよりは、逃げる道を選んでください」

芥川賞作家の田中慎弥さんの言葉です。田中さんは大学受験失敗後、約15年間ひきこもり生活をしていたそうです。

 

属する組織やシステムに従うしかなくなった「奴隷状態」を脱したいと願うのなら、「いまいる場所から逃げること」と田中さんは断言します。ひきこもりもその手段のひとつ。

 

でも全力で逃げた「そのあと」、私たちはどう生きたらよいのでしょう? その後の人生、何を足がかりに考えればよいのでしょうか。

 

実際に「逃げた」経験を持つ田中さんが語る「人生の仕切り直し」について、お伝えしたいと思います。

 

※この記事は、『孤独に生きよ 逃げるが勝ちの思考』田中慎弥著(徳間書店)より一部を抜粋・編集してお送りします。

 

 

「仕切りなおしの職業」を考えるとき、手がかりとなるものは?

かつて抱いていた夢を棚卸しし、現状と照らし合わせてみる。すると、やっぱり夢は夢だ、これは現在の自分にはつながらない、そう愕然とするかもしれません。その代表格は、野球やサッカーなどのプロスポーツ選手でしょう。

 

三十代でその夢を実現させることはたしかに不可能です。でも、そこでもう少し視野を拡げてみる。野球やサッカーに関する仕事ということだったらどうか。可能性はあるのではないでしょうか。

 

プロスポーツの世界では、選手という立場以外にも、審判、球団の職員、球場のスタッフ、マスコミ関係者などなど、取り巻く仕事はたくさんあります。野球もサッカーも、競技として洗練されていて、世界を股にかける巨大なエンターテインメントに発展しています。

 

多くの人々が魅了されるのも当然だと思います。純粋に観戦を楽しむのもいいですが、一歩先に進めて、そこまで好きなら仕事にしようと考えてもいいのではないですか。選手にはなれないけれど、その巨大エンターテインメントに関連した仕事を目指してみてはどうでしょう。

 

実際に就いたら就いたで、もちろんファンとして楽しんでいたときには想像もつかなかった苦労や軋轢(あつれき)が、山ほどあるに違いありません。

 

でも、それはあなたにとってマイナスにはなりえない。自分の好きな道に仕事でかかわることのストイックさは、奴隷の対極にあります。

 

鍛えぬかれた、いってみれば超人的なプロアスリートを応援するのは、最高の娯楽だと思います。反発を恐れず言えば、応援する側は楽だし、傷つくこともないわけです。エンターテインメントたるゆえんです。

 

でも、もしもあなたがその競技を本当に好きなら、もっと切実にかかわろうとしてもいいのではないでしょうか。反発承知でもうひとつ言うなら、他人を応援して満足している場合なのですか。他人がメシを食っている姿を横で眺めていて、果たして自分の腹が膨れるのか?

 

自分の好きなことは、そっと大事にしておきたい。仕事に絡めるのは抵抗がある。嫌いになってしまったらどうするのか。

 

そうした気持ちが湧くかもしれません。それはそれで人情として理解できます。でも長い年月、ずっと好きだったものを、そうそう簡単に嫌いにはならないし、嫌いになろうと思ってもできない。それも人情です。あと、少しくらいのリスクは背負わないと、現状は打開できません。

 

あなたにとっての「なにか」、この場合はプロスポーツに対する憧れ、ということになりますが、それに思い当たれば、仕切りなおしの職業としてそこを目がけて進んでみてはどうでしょう。

 

やりたいと、漠然とでも頭に浮かんだのなら、その職業に就くことが、完全に無理だとは感じていない証拠なのですから。

 

 

続きを読む

スポンサーリンク

スポンサーリンク

スポンサーリンク