更年期世代の肌たるみは「骨が減る」せい?閉経前後の注意事項【医師に聞く】

閉経前後に急激に女性ホルモン分泌が減る、という話は近年よく知られるようになりました。食事や運動である程度対策したほうが良いことや、いわゆる更年期症状がつらい場合は婦人科に頼って治療したほうが良いということも、広く知られるようになりました。

しかし、女性ホルモンと「骨」の関係性については、驚くほど知られていません。

そこで、イーク表参道 副院長 高尾美穂先生に伺いました。

 

基礎のおさらい・女性のサイクルとホルモン

女性ホルモンには、卵巣から分泌されるエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の2種類があります。特にエストロゲンは女性らしさをつくるホルモンで、第二次性徴以降卵巣から分泌されるようになり、子宮などの生殖器の発育を促進させ、女性らしい丸みのある体形をつくったり、肌を美しくしたりする作用があります。思春期、性成熟期を経ると、ホルモンを分泌する卵巣の機能は少しずつお休みモードに。閉経前後5年ずつの計10年間を指す更年期には、女性ホルモンの分泌は急激に減少します。

 

女性ホルモンの代表であるエストロゲンは「女性らしさのためのホルモン」です。うるおいのある肌や、つやのある髪を保つほか、コレステロール値を抑え、血管を強く保ち、骨量を調整し、自律神経の働きを安定させます。

月経周期において、エストロゲンがピークを迎えると排卵が起こります。排卵期は女性にとって”妊娠できるチャンス”です。排卵をしたあと、妊娠を継続させるプロゲステロンが分泌され、妊娠が成立しなかった場合に、子宮内膜を排出するために起こるのが生理です。

 エストロゲンには骨量維持の役割もある

エストロゲンのもっとも重要な働きの一つが「骨量の維持」です。カルシウムの1日の目標摂取量は650㎎であり、フランスでは十分に摂取されていますが、日本では目標摂取量を下回ります。

フランスと日本で何か違うのかを考えたとき、大きな違いは「水」。

日本の水に含まれる、ミネラルの量はわずかですが、1リットルあたり550㎎もカルシウムが入っているような水がフランスには存在しています。また、この水で野菜など食べ物が育つので、食品に含まれるミネラル量に大きな差があるわけです。

 女性ホルモンの減少で顔の骨が減っていく?!

エストロゲンの分泌が減少することで骨密度が低下し、骨粗しょう症になりやすいことはよく知られています。実は、肌を支える顔面の骨も例外ではありません。

図1

肌のたるみは肌自体の機能低下だけでなく、コラーゲンの質の変化や、筋肉の衰えも関係しています。そして骨はそれらすべての組織の基礎となる部分。土台が萎縮すれば、必然的に上に乗っている肌は張りを保てません。骨量の低下に伴い眼窩も広がって落ちくぼんで見え、「老け顔」が加速度的に進行してしまいます。米国における研究では、年代別に腰椎と顔面骨(上顎、下顎)の骨密度の比較をしたところ、腰椎よりも顔面骨のほうが、加齢による骨密度の減少割合が約10%も大きいことが分かりました。しかも、腰椎の骨量減少は閉経後10年前後経過した61歳以上の高年層でも認められるのに対し、顔面骨の骨密度は、41~60歳の中年層でもすでに減少していました(図1)。骨密度の減少というと高齢期に進むものと考えている方も多いかもしれませんが、特に顔面の骨に関しては、40代から骨量の低下が進行していると考えておいた方が良いでしょう(図2)。

骨量の維持のために重要な5つのこと

では、骨量を維持するために重要なことは何でしょうか。

1つめ、カルシウムを十分とることができている事が重要です。

2つめ、エストロゲンが「あるべきときにある」こと。思春期は特に無茶なダイエットで生理が止まってしまったりすることもありますが、定期的に生理があることが重要です。

3つめ、ビタミンDとビタミンKの摂取。ビタミンDは干しシイタケやシャケ、ビタミンKは納豆などに含まれています。

4つめ、骨に衝撃が加わることが重要です。適度に運動をしましょう。

5つめ、適度に太陽を浴びること。太陽を浴びることで皮膚からビタミンDが生成されます。

骨の健康に大きく関わる女性ホルモンを補うためには?

低下した女性ホルモンを補うために、女性ホルモンと似た役割を持つ「大豆イソフラボン」を摂取することでエストロゲン様作用が期待できます。中でも「大豆イソフラボン」に含まれるダイゼインが腸内細菌によって代謝されて産生される「エクオール」という成分はエストロゲンによく似た働きをします (図3)。

エクオールの作用として特に骨密度減少の抑制(図4)、肌のシワ改善(図5)や血管の健康を保つなど、ミドルエイジ女性の健康維持についてよい効果が報告されています。

図3

 

 

図4

図5

 

しかし残念なことに、エクオールを産生する腸内細菌は、すべての人の腸にいるわけではありません。つまり、食事で大豆をたくさん摂っても、エクオールを産生できる人とできない人がいるのです。その割合は、日本人では2人に1人と言われています。しかも、住んでいる地域や年代によってもこの比率が異なることも分かっています。腸のなかの菌のバランス、すなわち腸内細菌叢は毎日の食生活に深く関わりがあり、関東に比べて関西の人の方がエクオール産生者が少ないのは、関西では納豆を食べる習慣があまりないから?とも推測されています(図6)。若い人たち、特に20代はエクオールをつくれる人が約20~30%程度しかないという報告もあり、食生活の欧米化によるものだとも考えられています。

エクオールが産生できるか簡単にチェックすることができます。

自身がエクオール産生者かどうかは、簡単な尿検査でチェックすることができます。エクオール産生は、自身の女性ホルモンケアに大きく関わってくるので、ぜひチェックしてみて下さい。

図6

図6

 

 

 

エクオールがつくれていない人の対策は?

エクオールがつくれていない人には、いくつかタイプがあります。

  • エクオール産生菌がいない
  • エクオール産生菌が少なくて十分にエクオールが産生されていない
  • ほかの腸内細菌に邪魔されて、エクオール産生菌が活動できていない
  • 大豆や大豆製品を食べていない/量が少ない

B、C、Dの人は、食生活や生活習慣で変えられる可能性がありますので、エクオールがつくれていなかったとしても、ぜひ大豆や大豆製品を食べることと、腸内環境を見直すことが大切です。腸内環境を整えていくこと以外に、エクオールを直接摂れるサプリメントも発売されています。いろいろな対策が出来るようになってきましたので、自分の続けやすい方法を選ぶことができます。

Q「どうして骨と肌の関係は語られてこなかったんですか?」

閉経後の課題自体、取り組むようになったのは実はそれほど昔ではありません。第二次世界大戦より昔であれば、閉経を迎えるより先に平均寿命がきていました。

骨の問題は閉経から15年、20年たって表れてくるものなので、閉経後の骨に対する対策がなされ始めたのはこの10年20年の話です。顔の骨量も減っていくという報告は、ここ5年くらいの話題です。

 

Q「骨の意識は早ければ早いほどいいですか?」

骨は1日で作られるものではなく、また見た目で減っているという自覚もありません。日々の積み重ねが重要なので、できるだけ早い時期から対策していくことが大事です。

具体的には意識してバランス良く栄養素をとること、エストロゲンがある状態を保つということ、何かプラスできるものがあればプラスすること。エクオールを摂取できるサプリ類もいいでしょう。

一方で、カルシウムの吸収を阻害するものをとらないようにしましょう。たとえばリン。骨には必要ですが、過剰摂取はいけません。たとえばコンビニ食やペットボトル類には多く含まれています。

また、紫外線は皮膚の敵ではありますが、15歳から20歳の骨量のピークを迎える頃には太陽を浴び、しっかり骨量を増やしていきましょう。

 

高尾先生からOTONA SALONE読者へ向けてのメッセージ

毎日は小さな選択でできています。

毎日ベストな選択ではなくていい。でも、今日は元気だから階段を使って上ろう、

今日は時間があるからお出汁からお味噌汁を作ってみようと、よりよい何かを選んでみてください。

小さな選択肢一つ一つをきちんと考え、理由を持って選ぶこと。

自分にとっていいことは何なのかを「考える」感覚が大事です。

忙しく過ごす方も多く生活も乱れすい時代ですが、どうぞよりよい今日をお過ごしください。

 

お話・高尾 美穂(たかお みほ)先生
女性のための統合ヘルスクリニック イーク表参道 副院長産婦人科専門医・医学博士・日本スポーツ協会公認スポーツドクター/スポーツ庁 国立スポーツ科学センター 女性アスリート育成支援プロジェクトメンバー。
東京慈恵会医科大学大学院修了後、慈恵医大病院 産婦人科助教、 東京労災病院女性総合外来などを経て現職。イーク表参道では、婦人科部門責任者として女性それぞれのライフステージ・ライフスタイルに合った治療法を提示し、選択をサポートしています。

 

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