自分は、こんなにも呼吸のことを知らなかった。理系住職の「健康と精神の話」

自分でうまく処理できないストレスや怒りに、上手に禅のエッセンスをとり入れてみたい。そんな人のために、新しい連載がスタートします。東京理科大・数学科を卒業後、鎌倉の建長寺で修業。神奈川県伊勢原市にある臨済宗・福智山 能満寺の住職をつとめている松本隆行さんが、「あんまり宗教くさくない」ロジカルな禅のお話しを。

まず「呼吸と向き合う」ことからすべてが始まる

 

1日に20000回もしている呼吸。私たちは知らず知らずのうちに行っていますが、その様子は意外と知らないものです。

 

鼻の奥のどこを通っているのか。肺のどの部分に集まっているのか。腹式呼吸で行なっているのか。吸った息は、いったいどこで暖かくなっているのか。風が通りゆく音はどんなか。

 

なんで、こんなことを考えるようになったかといえば、それは鎌倉にある建長寺の修行道場に身を置くことになったからです。入門当初は、えらく厳しく坐禅の仕方を指導されます。手の置き方はどうか。姿勢は真っ直ぐになっているか。首は傾いてないか。初めてのことばかりでキョロキョロするとまた怒られます。

時に、巡警という役の人が木の棒を持って回ってきますが、その人に寝てると判断されれば、強く背中を叩かれます。

 

そして、色々な指導の中でも特にやかましいのが、呼吸です。

 

禅の呼吸とは?

 

・腹式呼吸であること。

 

・寝息と間違われないために、音はたてないこと。

 

・呼吸を10まで数えて、また1から10まで繰り返すこと。

(ひとつ、ふたつ、と数えます。数息観と言います)

 

鼻の調子が悪い時や、咳き込みがちな時は大変です。少し口を開けて呼吸して見たり、喉の調子を感じながら呼吸します。そして、1年半ほどたつと、次第に要領がつかめてきて、自然な呼吸に集中できる様になります。

 

修行中の生活は、かなりハードです。3時間の睡眠、掃除、托鉢、境内の作業、坐禅、そして食事は質素です。

 

それでも1年半たった頃には、わずか3時間しか寝ていないのに、多少眠気はあるものの、身体は活気があり、頭はよく回り、周囲に配慮ができる様になってきます。

 

こんなことを言うと、まだ当時は20代で若かったからだと思われるでしょうが、30代、40代の雲水(修行僧)のほうがそれに増して元気だったりするのです。

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