これって不倫?それとも純愛?「一歩手前」の位置がわからなくなる

2021.02.16 LOVE

後ろ指をさされる関係とわかっていても、やめられない不毛なつながり。

不倫を選ぶ女性たちの背景には何があるのか、またこれからどうするのか、垣間見えた胸の内をご紹介します。

前編はこちらから

【不倫の精算#18後編】

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「それって電気店に頼むことなの…?」

Eさんが電気店の彼に向ける関心はどんどん深くなっていき、購入したレコーダーの取り付けから録画するディスク、果ては掃除用のモップまで、あらゆる用事を作っては彼を家に呼んでいる状態だった。

 

それ以外にもLINEでは日々やり取りをしている。

 

 

「ねえ、大丈夫なの?」

と尋ねると

「何が?

遊びじゃないし、平気でしょ」

とEさんは自分の様子にはまったく頓着していなかった。

 

一方で夫への愚痴は増える。

夫は件の新品のレコーダーに手も触れない、私が彼の店から買ったものに「高い」とケチをつける、とぶつぶつ話すEさんは、夫の不満には目も向けていない。

 

どう見ても「彼の好意を得るための行動」だ。

「この間はね、あの人のためにパンを焼いたの。

あの人、うれしそうに食べてくれて。

『料理がうまいんですね』って、次はお惣菜系のパンでも作ろうかしら」

店員と客の関係を超えた気持ちを抱えているのが手に取るように伝わる。

 

それでも、

「おかしな関係とか狙ってないでしょうね」

と言うと、一気に機嫌を悪くしてこちらを睨みつけるのだった。

 

正直、あなたはモンスターカスタマーになりつつある

そんなEさんから不安そうな声で電話があったとき、「やっぱり」というのが最初の感想だった。

 

「彼から『LINEはやめます』って言われたの。

何かあった? って訊いても言ってくれないし、私、何かしたかなあ?

それに、この間は別の人がうちに来たのよ。

何も聞いてないし、このままじゃ彼に会えなくなる」

 

そう口にするEさんは、度が過ぎた好意を向けられる彼の戸惑いがわからない。

 

無理やりに用事を作られること、行けば過剰なもてなしを受けること、LINEでまで会話が続くこと。

そして、「夫の反対を押し切ってまでうちの店で買い物をする姿」は、彼にとっては決して「いいお客さま」ではない。

 

別の店で買いたがる夫をねじ伏せた話など、Eさんにとっては「彼は喜んでくれるはず」のことかもしれない。が、彼にしてみれば、客でしかない女の家庭に自分のせいで不協和音が生まれるなど、うれしいはずがない。

客という立場から堂々とつながりを深くしていく彼女の気持ちを、彼が畏怖するのは十分だった。

 

彼のほうから遠ざけられるのを見れば、ここで目が覚めるだろう。

「どうしたらいい?」と繰り返すEさんに

「これ以上あなたが何かすると、彼に迷惑をかけるかもしれない」

と伝えると、スマートフォンの奥でぐっと息を詰める気配がした。

 

だが、次に彼女が発したのは、

「あの人が好きなの。

このまま終わりなんてイヤ」

そんな本人が気づかないうちに“ダダ漏れ“になっていた本音だった。

 

敢えて「勘違いさせるLINE」を送り続けたオトコの下心と罪

「……」

 

それは相手もとっくに気づいているだろうと思い黙っていると、

「だ、だって、あの人もね、私と過ごすのは楽しいですって、LINEもうれしいって話してくれたのよ。

LINEではね、彼女はずっといないしひとり暮らしだから、あなたがいてくれて幸せだって。

そう書いてたのよ」

Eさんは必死に言い訳する。

 

そうだ、彼がそうやって彼女の好意を安易に受け止めてしまったから、「暴走」が加速したのだ。

 

「でも、それが本当なら、今こんな状態にはならないんじゃない?」

そう答えると、

「お店で何か言われたのかも。

それなら私がちゃんと説明すればいいし。

あの人は何も悪くないし」

とEさんはすぐに返す。

 

「彼、あなたが既婚者であることは最初から知ってるよね?

それで、あなたがいて幸せだとかLINEで伝えるオトコって、どうなんだろうね」

こう言うと沈黙した。

 

彼女から受けていたいろいろな“報告”のなかで、彼は

「あなたの旦那さんが羨ましい」

「こんな俺に優しくしてくれる女性なんて、あなたしかいない」

など、耳をくすぐるような言葉をかけていた。

 

実際にLINEの画面を見せられたとき、これが既婚女性に送るメッセージなのかと違和感を覚えた。

が、そのおかしさを彼女は自分への好意と捉え、言動をエスカレートさせた。

 

自分の売上のためにあれこれと尽くす彼女を、男性はどんな目で見ていただろうか。

 

“あわよくば“が見え隠れする微妙な言葉の数々と、いきなり距離を置いてきた振る舞いを見れば、「下心の成就」を彼が諦めたであろうことは容易に想像がつくのだった。

 

あなたにもありませんか?「きっとカレも私が好き」という勘違い

結局、Eさんは彼への恋心を捨てきれず、告白することに決めた。

何を言われようと、心のどこかで

「あの人も同じ気持ちなのでは」

という期待を捨てきれずに、最後の賭けに出たのだ。

 

だが、顛末を聞いてみれば、賭けには負けた。

 

家に呼びつけて思いを打ち明けたら

「人に言えないような関係は無理です。

今までありがとうございました」

と素っ気ない言葉を残して、彼はさっさと家を出ていったのだった。

 

「“人に言えない”ねえ……」

じゃあ、あなたが彼女に送っていた口説き文句はどうなんだと思った。が、今さらそれを伝えても彼女の傷を広げるだけだ。

 

「たとえば、彼があなたの気持ちを受け入れていたら、不倫関係になるのよね?

不倫のリスクは知っていると思うけど、それが本当にいい結果なのかはわからないよ。

ごめん、私はどうしても不倫には賛成できないから」

と、ゆっくり伝えた。

 

「……」

Eさんは黙って聞いていたが、小さな声で

「うん、そう、そうだと思う。

これでよかったって、本当はちょっと思ってる……」

そう言うと、ふぅぅと大きなため息を吐いた。

 

ささやかな出会いから恋心を大きく育ててしまうのは、既婚であれ独身であれ実際によくあることだ。

踏みとどまれたことが幸運なのだと、「これでよかった」と思える現実を選んでほしいと、彼女の浅い呼吸の音を聞きながら思った。

 

 

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