更年期世代の体調不良には「隠れた本当の原因」があるらしい…それっていったい何?【更年期ラウンドテーブルvol.3】
一般的に閉経の前後5年を指す、更年期。この時期は、ちょっとした疲れやめまい、生理周期の乱れなどを感じるたびに「更年期?それとも加齢?」と不安になってしまいます。
オトナサローネはこの10年間をよりよく過ごすための社会啓発「アフタヌーンエイジプロジェクト」をスタートしました。
口にしやすい「アフタヌーン」という言葉をご提案しつつ、「私の症状は更年期なの?他の病気?」「どうすればこの不調が軽減する?」「私の症状を相談する相手は?」など医学的知識をわかりやすく届け、最終的に「誰でも不調を口にしやすく休みやすい、脱落せず参加し続けられる社会」を実現するのが目的です。
この一環として、有識者らと読者が同じテーブルを囲んで率直な意見を口にする「ラウンドテーブル」を12月にスタートしました。
1回目はオトナサローネ連載でもおなじみ、「婦人科&漢方の医療専門家」である医師・新見正則先生、薬剤師・笹森有起先生を囲んで更年期の疑問をトーク。
前回「更年期の不眠やうつ。治療方法は?」に続く今回は、「セルフケアと薬の境界線はどこ?」について、本当のところを先生に教えてもらいます。
【アフタヌーンエイジプロジェクト・更年期ラウンドテーブルvol.3】
どうしても更年期の症状を我慢してしまう…どこで薬に頼ればいいんですか?
井一 前回は「更年期にはレジリエンス能力が必要だ!」という話題でした。我慢のし過ぎはよくないけれど、少々の我慢で済むならば耐えてみることも必要ですし、薬や病院を頼る前に、運動や生活習慣など、自力で体をケアする方法を考えることも大事。それでも辛いときは、我慢せず病院や薬を活用する。この話を聞いて、自分の体と相談する習慣は大事だと再認識しました。
力武 でも、我慢できる度合いは人それぞれだから、見極めが難しいですね。
新見 そうですね。できることなら薬に頼らず、自力でケアすることが基本です。それが強い体を作ります。そして、日ごろから運動をして、しっかり寝て、栄養バランスのよい食事を摂っていればいいんです。
日本は医療体制が整っているから、ちょっとせき込んだだけでも病院へ駆け込めるし、保険の範囲で診てもらえます。薬も、言えば安価で処方される。薬を飲んで安心する。だから、自力で治せる程度の症状でも薬を飲んだりしちゃうんですよね。患者さんに言われるがままに薬を出してしまう医者もいるし。
笹森 食事で摂る栄養と西洋の薬の中間として存在するのが、植物や動物などで作る生薬、漢方です。更年期外来でも、漢方はよく処方されます。
新見 食事か漢方か薬か。どれを選べばいいかの目安、ありますよ。
女性一同 え!本当ですか!?知りたいです!
新見 まず、薬は、悩んだら飲まないことです。逆に、漢方は悩んだら飲みます。そして、食事ならば、悩まず食べる。
女性一同 なるほど! 分かりやすいです。
鈴木 先生、ちなみに、コロナやインフルなど感染症の予防になる食べ物はありますか?
新見 強い体を作るという意味では、肉ですね。タンパク質は摂ったほうがいいです。タンパク質は、筋肉・骨・血液などを作るために欠かせない栄養素です。四足歩行の動物の肉を週に1~2回食べて、あとは鶏肉や魚も食べる。豆腐や納豆は毎日食べて、炭水化物は減らす。その上で、たまに甘い物を食べてもいいと思います。
前川 タンパク質は、プロテインでもいいですか?
新見 数カ月間飲んでみて、自分に合うと思ったら飲み続ければいいと思います。私は、プロテインより肉のほうがおいしいと思うから肉を食べますが。自分がおいしく食事できるほうを選べばいいですよ。
悩ましい「むくみ」の話。足のむくみは自然現象ですが、手のむくみは要注意!
鈴木 私、更年期に入ってからむくみに悩むようになったんですけど、治す方法はありますか?
笹森 どこがむくみますか?
鈴木 手の指です。前に買った指輪が入らなくなって、手を見たらむくんでいたので気が付きました。
笹森 手指ですか……ちょっと気になりますね。
新見 足なら問題ないけれど、手指のむくみは要注意ですね。
鈴木 え?どうしてですか?
新見 足は心臓から離れていて、かつ常に心臓から下にあるので、夕方になるとむくんでしまうのは自然なことです。一方、手は心臓に近く、いつも心臓の下にあるわけじゃないから、普通に生活しているとそんなにむくまないんです。ただ、仕事で1日中パソコン入力したりして、常に手が心臓より下にある場合は、むくんでしまうこともあります。
鈴木 たしかに、長時間パソコンを触っていることはありますが……。不安になってきました。どうしたらいいですか?
新見 ときどき、腕から手先までを心臓より上に上げて、手の血行を促してください。肩甲骨を動かす意識をするといいですよ。それでも治らないようだったら、病院で診てもらうことも考えたほうがいいでしょう。
井一 先生、仕事中ではなくて、お酒を飲んだ翌日にむくむのはどうでしょう。自然なことですか?
新見 お酒を飲むと、血中のアルコール濃度が上がってむくみます。ですから、それもある意味自然現象ですね。
井一 ということは、負担をかけないために、やはり休肝日を作ることが重要なんですか?
新見 いやいや、休肝日なんて意味ないですよ。アルコールはいわば、生涯で飲める上限量がそれぞれの人ごとに決まっている毒です。一生でお酒を飲める量は決まっているから、1日空けても毎日飲んでも、飲める量は同じ。それより、累計でどれだけの量を飲んだかが重要です。
井一 でも、お医者さんは「休肝日を取りましょう」って言いますよ?
新見 それは、休肝日を取ることで飲む量を減らせるかもしれないからです。でも、本当に酒好きな人は、休肝日なんて取っても、翌日は休肝日のぶんも飲んじゃうよね。
一同 (笑)
「移動する痛み」は気にしなくて構いません。病院にかかるべき痛みもあります
鈴木 先生、私、体のあちこちが痛くなるのも気になっているんです。
新見 どのあたりが痛くなりますか?
鈴木 それが、痛い場所が移動するんです。数日前は腰、昨日は膝みたいな感じで。
井一 読者さんの取材でも、たまに聞きます。日によって違う場所が痛むという話。
新見 あちこち移動する痛みなら、怖い病気ではないと思います。いつも同じ場所が痛む場合は、そこに何か不調がある知らせかもしれないので、検査してみたほうがいいでしょう。ちなみに、寝ているときは痛まないんですよね?
鈴木 はい。
新見 就寝中でも目が覚めてしまうほど辛い痛みならば病院を受診してください。それ以外なら気にせずに、スルーでいいです。私は自分の患者さんにも、気にしなくてもいい状態なら「大丈夫」と言います。ただ、それで励ましになって自力で回復できる人もいるけれど、不安になっちゃう人もいるから、全員に通用するわけではないですが。
井一 基本は、いますぐ重篤な病気になるレベルでないならスルーってことでしょうか?
新見 薬を飲んだり病院へ行ったりしてもいいですが、ちょっとしたことで薬や病院に頼る習慣をつけてしまうと、スルーできなくなりますよね。人間、ときにスルーも必要です。
世の中には、命の危険とまでは言わなくても、簡単には治らない病気もあります。片頭痛もそうです。なんでも完璧に治さなければいけないと思うと、人生苦労します。うまく付き合っていくことで、楽に生きられると思います。
前川 本当にそうですね。私も片頭痛がひどかった頃、薬を飲めば辛さは軽減できましたが、根本的に治ったわけではないから、上手く付き合うしかなかったです。
40代50代が「血液検査の結果」でもっとも注意すべき数値は何なのでしょう?
鈴木 スルーといえば先日、血液検査を受けて結果が届いたんですが、どれが注意すべき数値で、どれはスルーでいいのか、見ても分からなくて。検査の結果報告書を持ってきたので、教えてもらえますか?
新見 (報告書を見ながら)どれも大事な数値ですが、注意すべき項目を強いて言うなら、HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー。糖尿病の指標。正常値4.6~6.2%) とCr(クレアチニン。腎機能の指標。正常値は男性1.2mg/dl以下、女性1.0mg/dl以下)かな。これらは、一度悪くなると食生活改善や運動をしても治らないですから。
例えば、総蛋白を表すTP(トータルプロテイン。正常値は6.7〜8.3 g/dL)は、栄養状態に関わる指標で、数値が低すぎると体が弱ってしまうし、高すぎると多発性骨髄腫の可能性などが出てきますが、生活の改善で正常にすることが可能です。
肝機能を診るAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)やALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)、γ-GTP(ガンマグルタミルトランスペプチダーゼ)は、酒や薬の飲み過ぎで数値が上がるので、基本的には酒を飲まなければ下がります。でも、HbA1c やCrの値が悪くなると、酒や薬を控えたり生活習慣を改善したりしても戻らないことがほとんどです。
他に、白血球値が高いと炎症が疑われますし、赤血球値が低いと貧血。血小板の数が少ないと病気がどこかにあると思われます。
大事なのは、これらの数値を一時の点で見ず、長い期間の線で見ることです。定期的にデータを残しておくことで、スルーできる数値か医師に相談したほうがいい状態になってしまったか、境界線の判断がしやすくなります。
井一 腎臓は要注意なんですね。これまで肝臓ばかり気にして、腎臓はあまり注意していなかったです。
体調不良の本当の原因は「気づいていない何か」かもしれない…たとえば、夫!?
新見 でもね。体調不良の本当の原因って、他にあったりするものですよ。病院では言わない、本当の悩みね。
鈴木 例えば?
新見 夫のことが大嫌いで、でも夫の稼ぎで暮らしているから離婚できない。そんなことを考えながら生活するうち、体に拒否反応のようなブツブツができたりするんです。
井一 子どもが学校に行くのが嫌で、でも嫌と口にするとお母さんが悲しむから我慢して、しまいにお腹の痛みなんかが出てきてどうしても行けなくなってしまう、みたいな話ですね。
新見 でしょ?そういう気配を感じた相手に、試しに「離婚したら治りそうな気がする?」と聞くと、激しくうなずく。そんな患者さん、たくさんいますよ。
井一 そんなこと、思っていても普通は先生に話しませんよね。
新見 保険診療をしていると、医師もなかなかここまで深く話を聞けないんです。私が自分のクリニックを始めた理由は、患者さんの本当の悩みを聞き、根本から取り除く意味もあります。夫が病気の原因だと分かると、それだけで体調がよくなる患者さんがいるのも事実です。
力武 私はストレス性の病気にかかりやすく、原因不明と言われたこともあります。新見先生のクリニックで相談すれば、根本原因が分かったかもしれませんね。
新見 自力でケアできそうにないときは、我慢せず、どうぞ相談に来てください。お薬の相談は、ぜひ笹森先生に。
笹森 相談がないことが元気の証拠ですが、もしものときはお待ちしています。
鈴木 いつでも相談できる場所があると思うだけでも、なんだか不安が少なくなります。
◆ラウンドテーブルに参加して有識者に質問してみたい方、ご登録ください。次回開催時ご連絡差し上げます。こちらから
更年期、あなたと同じ悩みを持つ人はどうやって切り抜けたの?
◆いろんな人の「更年期の入り口と出口」ドキュメンタリー
◆更年期に何が起きる?マンガでわかりやすい!
>>>マンガ100人の更年期
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■参加者のご紹介
新見正則先生
新見正則医院院長。1985年慶應義塾大学医学部卒業。
笹森有起先生
pluskampo株式会社代表薬剤師。青森県出身。東北医科薬科大学を卒業し薬剤師免許を取得。調剤薬局での勤務を6年経験。薬剤師として働く中で漢方薬に出会い、自身の自然治癒力を最大限に引き出し、結果として症状が緩和する漢方薬の効果や考え方、哲学に感銘を受け、フリーランス薬剤師を経て起業。新見先生が普及する生薬フアイアと注目のエクオールを組み合わせた画期的なサプリメント「エクオールバランスビューティ」を開発。
鈴木里砂さん(52歳)夫、息子(高2)と都内在住。
前川祐美子さん(55歳) 夫、長男(23歳)、ミニチュアダックスと都内在住。フリーランスのWEB編集者。趣味はクラシックバレエ、ヨガ。
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