更年期には歯が欠ける?口臭が出る?口ケアの素朴な疑問【口コミ名医に聞く】

一般に、閉経の前後5年を更年期と呼びます。日本人の閉経の平均年齢は約50歳なので、45-55歳の世代は更年期に当たる人が多いもの。身体の不調に苦しみ「更年期障害」の状態になる場合もあります。

 

「最近更年期だからか肌がかゆい」「更年期のせいで太っちゃって」と、悩みは人それぞれにあるもの。ですが、いっぽうで直接的には更年期のせいではない、つまり「治療すればすぐ治る症状」が混ざっていることもあります。

 

今回は、「歯科」の分野に関する疑問をピックアップ。

 

更年期をやり過ごすために絶対必用なホームドクターのひとり、「地元で評判の口コミ名医」のかしの木歯科医院・山嵜智浩先生に聞きました。

 

Q1・「更年期だから歯が弱くなる」のは本当?

A:俗信です。ただし、骨は弱くなるのでご注意を。

 

よく、「更年期だから歯が欠ける」「妊娠すると子どもに歯のカルシウムを取られる」と言いますが、歯については俗信です。

 

でも、気をつけてほしいのが、歯とは違い、骨は実際にもろくなる点。

 

例えば、更年期に骨粗鬆症が発生しやすいのはよく知られた話です。

 

骨はカルシウムを体内に貯蔵する役割を持ち、血中のカルシウム濃度が下がれば自らを壊して放出します。女性ホルモンの一つ、エストロゲンにはこうした骨代謝のバランスを保つ働きがあるのですが、エストロゲンの分泌が急激に減少する更年期にはこの骨代謝バランスが崩れてしまいます。結果、骨がもろくなってしまうのです。

 

ですが、歯にはこうした貯蔵と放出の機能はありません。妊娠すると歯がもろくなるのは、つわりや育児などで口腔ケアに手が回らなくなるのが原因と考えられています。更年期に歯が欠ける理由は次のQ2でお話します。

 

そもそも、日本人は歯が薄い傾向があります。世界でもアジア人の歯科治療がいちばん難しいと言われますが、理由はエナメル質が薄いから。虫歯になりやすい、欠けやすい歯なのです。

 

肉食の欧米人は歯が頑丈で、ガチっと噛み合わせて肉を引きちぎって食べますが、穀物食のアジア人は臼のようにすりつぶして食べます。この違いがあるのかもしれません。

 

どちらにせよ、エナメル質の薄い日本人が長く歯を使いたい場合、かみ合わせの問題はとてもデリケートです。かみ合わせの悪い歯は早めに歯科に相談してください。

 

Q2・でも、私は48歳で歯が欠けました。更年期とは関係ないですか?

A:更年期ではなく「40代、50代だから」です。

 

直接の関連はないとはいえ、現実に更年期ごろには、歯が欠けた、割れたという話がよく出はじめます。

 

実は、枯れ木と同じように、歯からも時間がたつにつれ水分が抜けていきます。ですから、20代より40代のほうが歯は硬く、柔軟性に欠ける分だけ、歯が割れたり欠けたりするリスクが上がります。

 

妊娠出産期はケアに手が回らずに虫歯が増えますが、更年期ごろは歯の硬さが上がる上、過去40年以上の間の噛み締めや、夜の歯ぎしりなどの不可抗力で歯が限界を迎えています。

 

物理的に割れやすくなっているので、歯ぎしりでのかみ割りもこの先50代、60代と年齢が上がるにつれて増えます。あまりにも歯ぎしりが強い人は、マウスピースを作り、ガードしたほうがいいでしょう。

 

Q3・では「更年期だからクチが臭い」は本当ですか?

A:「歯周病が原因の口臭」という意味なら、あり得ます。

 

歯が欠けることよりも、更年期世代は歯周病を気にしたほうがいいでしょう。歯周病は実は歯や歯ぐきの病気ではなく骨の病気です。

 

歯周病というと、「歯から血が出る病気」というイメージがついていますが、虫歯がない、血も出ないから大丈夫と思っているならちょっと危険。虫歯を作る菌と歯周病の菌は違うので、どれだけケアをしていてもリスクは誰にでも均等にあります。

 

日頃きちんと歯みがきをしていて、歯にトラブルのない人でも、40代に入るとぐんと歯周病が増えます。これまで使い続けてきた歯の食いしばりや歯ぎしりが原因で破骨細胞が誤作動し、骨を壊してしまうこともあるからです。

 

もし、歯がぐらぐらしたり、噛み合わせがふわふわしたら危険信号です。すぐ歯医者に行ってください。

 

Q4・虫歯はないけれど、歯のチェックをしてほしい。「検診」だと自費診療になりますか?

A:まずは連絡してみてください。

 

私は郊外の住宅地でごく一般的な歯科医院を運営していますが、患者さんのうち半分は定期検診での来院です。もちろん、時間に余裕のある主婦層が多いエリアだということもあります。特に働いている人は異常もないのに定期チェックに行く時間はないでしょう。

 

ただ、40代以上の女性は、こうして意外にみんな定期的に歯科にかかっているものだということは知っておいてください。歯が痛いからと急に飛び込んでくる患者さんは、昨今は明らかに減る傾向です。

 

さて、まったく問題のない口腔の場合、確かに、検診だけにとどまれば自費診療です。ただし、断言しますが、99.9%の人は何かしら口の中にトラブルがあります。定期検診がまったく不要という人はほぼいません。

 

痛みもないのに歯科に行くなんてと遠慮のある人もいると思いますが、たとえば自分は歯が磨けているのかがわからない、口臭がある気がする、舌が白い、口内炎など、どんなことでもまずは受診してください。

 

お話/かしの木歯科 山嵜(やまざき)智浩先生/鹿児島県出身。2002年日本大学歯学部卒業後、法人歯科医院2カ所に勤務。
2010年に東京都東大和市上北台に「かしの木歯科医院」を開業(多摩モノレール桜街道駅・上北台駅から徒歩8分)。
特に歯と歯のかみ合わせに関する造詣が深く、ロジカルでわかりやすい治療指針に遠方からの口コミ患者も増加中。
かしの木歯科医院サイト

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