「50代で廃人寸前だった」小谷実可子が明かす、コロナ禍でのオリンピック招致に燃え尽きても、競技復帰に向かわせたものとは

目標達成後にやってくる燃え尽き感。立ち止まりそうになる自分を奮い立たせたのは「次なる目標

――前を向いてぐんぐん進んできた小谷さんでも、立ち止まってしまった時期があるそうですね。

 

「ソウルオリンピックでは、ソロとデュエットでメダルをとりましたが、2回目のバルセロナでは、代表に選ばれたものの出場機会を得られず、自分はシンクロ界の役には立てない、何のために生きていけばいいのかと人生のどん底を味わいました。

 

そんなときに思い出したのが、とあるアメリカ男性に誘われ野生のイルカと泳いだときこと。2週間ほどカリブ海でただ泳ぐ日々でした。大自然のなかにいると、私はオリンピックのメダリストですごいことを成し遂げたと思っていたけれど、地球のなかではちっぽけで無意味な存在なんだと。

 

時々、野生のイルカと一緒に泳いでいると、とても幸せな気持ちになれました。私は振り付けや音楽がなければ、人の心を動かす演技ができないけれど、野生のイルカはただそこにいるだけで人を笑顔にできるんだと感動してしまいました。そのとき、私はこの世に生まれて地球に生かされている存在なのだから、生まれてよかったと思われる存在でありたいと思ったんです」

 

――さまざまな役職のお仕事をされている背景にはそんなことがあったんですね。東京2020オリンピック・パラリンピックの招致や、運営に係るお仕事もその一つでしたが、その後にマスターズへの挑戦が始まりました。これも、「自分は何ができるのか」「社会に貢献できるのか」を考えたからでしょうか。

 

「オリンピックはコロナ禍ということもあり、すべてが初めてのことばかりで不安な日々でした。無観客での開催になりましたが、なんとか全競技日程を終えることができました。毎日全力投球で取り組んだ分、終わったあとに空っぽな状態になってしまい……。燃え尽き状態で無気力になっていたところに、日本で世界マスターズ水泳選手権が開催されることを思い出し、せっかく自国で開催されるなら挑戦してみようと。新たな目標ができたんですね」

 

――やはり目標を持つということが大切なんですね。

 

「そうですね。最初にお話をしたように、目標があるから練習も楽しくできる。それに日本代表としてオリンピックなど世界の大会に出場していたときはすべて周りがおぜん立てしてくれて競技に集中していましたが、マスターズでは異なりました。

 

練習場所の確保から体のメンテナンスまで全部自分でやらないといけない。テーピング用のテープや鎮痛剤も買いに行きますよ。出費がかさむので、ドラッグストアのクーポンを利用したり、ポイント10倍デーの日に買い物に行ったり。大変だけれど、自分で工夫しながらやるのは、20代の頃とは違う喜びを得られました」

 

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