小さな「足場」を積み重ねて 「できる!」のゴールをめざそう

じっとしているのが苦手、集中が続かない、衝動的に行動してしまう…ADHDと診断されていなくても、このような特性をかかえることで「生きにくさ」を感じている人は多くいます。今回は、臨床心理士による著作「ADHD脳で困っている私がしあわせになる方法」から、「ツライ」を「楽」に変えるヒントをお送りします。【ADHD女子#17】

生きることが困難な人ほど便利な道具やシステムを使いこなそう

ここまで見てきたように、 さまざまな困りごとはADHDの脳のクセが複雑にからみ合うことによって起こっています。

ですから、「あしたから心を入れかえる」「今度こそミスはしない!」

という根性論だけでは絶対にうまくいきません。ここ、 重要です。

もちろんやる気はとてもたいせつ。 そう決意できる素直さも素敵。

それは維持しつつ、 具体的な対策をプラスしていきましょう。

 

いきなりですが、 ボルダリングをご存じですか?

「ホールド」 と呼ばれる壁の突起をつかみ、 それを足場にして

壁をよじ登ってゴールをめざすスポーツです。

上級者は使えるホールドが少ないのですが、 初心者はたくさんのホールドを足場にします。

足場が多ければ多いほど登りやすいのです。

 

私たちの人生も同じです。 むずかしいときには足場をふやしましょう。

足場とは、 便利な道具だったり、 失敗しにくいシステムだったり、

スケジュール帳だったり、 集中できる環境だったり、 スマホのアラームだったり、

手助けしてくれる人とのいい関係だったり。

しかもボルダリングと違って、 足場は無数にふやせます。

 

次の章からは、 そんな 「足場」 のつくり方を紹介します。

読みながら 「それができたら最初から苦労してないよ」 と思うかもしれません。

読んだ瞬間に 「あ、 私にはムリ」 と思うかもしれない。

でもね、 早急な判断はしないでください。

あきらめの早さは、 抑制制御の障害によるものだと思い直してみて。

もし「これならできるかも」が一つでも見つかったら、

それだけでも実践してみましょう。1カ所だけでも足場ができれば、

見える世界は確実に変わるはずだから。

実際にやってみても 「やっぱりムリ」 と思うかもしれません。

でも、 自分の特性に応じてアレンジしたり、 誰かの力を借りたりすれば、 うまくいくことも多いもの。

成功の喜びは、 私たちADHDに絶対に欠かせない 「ごほうび」 になるはずです。

 

注意点が一つあります。

それは 「これをやれば、 普通のことが普通にできる」 とは思わないでほしいということ。

ADHDではない人たちの 「普通」 と、 私たちの 「普通」 は違います。

いえ、「普通」 なんて、 そもそも存在しないのです。

そんなあいまいなものに合わせようと、 自分をすり減らしてしまうのはもったいない。

私たちの 「普通」 は 「普通じゃない」 ことだと胸を張りましょう。

>>次へ(5/6 22:30更新)

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