
「不倫しないとやっていけない」潜在離婚妻のホンネ【不倫の精算#33】後編
後ろ指をさされる関係とわかっていても、やめられない不毛なつながり。
不倫を選ぶ女性たちの背景には何があるのか、またこれからどうするのか、垣間見えた胸の内をご紹介します。
この記事の前編>>>「会えない時代に不倫する妻」あまりにも辛い現実とは【不倫の精算#33】後編
在宅勤務がつきつけてくる「その夫、いらない」という現実
「大変だったね」
Pさんの言葉が止まり、思い出したように注文したカフェオレに手を伸ばすのを見て、やっと返した。
「……うん」
「窮屈っていうか、ストレスだよね、仕事から帰ったらそんな人がいると思うと」
そう言うと、Pさんはカップを覗いたまま答えた。
「そうなの。
子どもを迎えに行ってふたりで帰るけど、散らかった部屋とかお皿が残ったシンクとか見ると、本当に気が滅入るの。
だから不倫したくなったの」
「……でも、不倫は」
正面から否定する勇気はなく、濁した口調で言葉を継ごうとすると、
「わかっているわよ。あなたの記事には全部そう書いてあるもの。
でも、無理よ。
現実逃避しないと、あの家でやっていくのは無理」
無理なの、と念を押すようにつぶやくPさんの声には、力があった。
不倫を「現実逃避」と言う女性は今までもいたが、Pさんの場合は“本当に切羽詰まっている“のを感じた。
逃げ場のない家、夫に対抗できない自分、間近でその様子を見る我が子。
ネガティブな状況しかないなかで、彼女が見つけた抜け道は不倫という「妻として絶対に選んではいけない道」だった。
身動きの取れない現状。「意趣返し」は幸福なのか?
それから、Pさんは自分のしていることについて話してくれた。
いま肉体関係を持っているのはマッチングアプリで知り合った独身男性で、やり取りが盛り上がったので写真を交換したらお互いにOKになり、知り合って一週間後にランチの約束をし、その日のうちにホテルに行ったそうだ。
それからは二週間に一度ほどの頻度で会っており、今も「特に問題なく過ごしている」。
話を聞くほどに、未知の感染症が流行している今の状態で信頼関係のない他人と深い接触を持つのは問題なのではと感じた。が、それを指摘するのもためらわれて、ただ耳を傾けていた。
「体の相性が良くってね、楽しいの」
この言葉を吐いたとき、Pさんの声は上向いていた。
そっと表情をうかがうと、その瞳が興奮できらきらと輝いているのがわかった。
夫への仕返しなのか。
そう感じた。
別の男との情事を楽しむことで、それを知らない、気が付かないままの夫を見下すことで、ストレスを消化しているのか。
Pさんの話題は不倫相手と過ごすベッドの“内容”に移り、赤裸々に行為の詳細を話す様子は、どこか勝ち誇ったような、「夫の知らない刺激を楽しむ自分」を満喫しているような気がした。
すっきりしたはずなのにその表情は晴れない。心の奥底は…
「……」
違和感は、カフェに現れたときの彼女の姿にあった。
まるで重たいものを背負っているかのように曲がった背中、まっすぐにこちらを見ない瞳、マスクをしていても想像がつく、口角の下がった唇。
本当に不倫を楽しんでいるのなら、それで満足しているのなら、打ち明ける相手の前にそんな「疲れた自分」では立たない。
どんなに後ろめたい関係に身を置いていても、自身がそれを幸せと感じているのなら、黙っていても心情の明るさが表に滲むものなのだ。
最初に「疲れているの」とPさんは口にしたが、その言葉こそ本音であり、その姿を晒したあとで不倫の“楽しさ”をかき口説いても説得力はないのだ。
「疲れているねえ」
嫌味のつもりでは決してなかったが、思わず口をついて出た言葉に、Pさんは声を止めた。
感染したらどうしよう。でも「夫にばれること」は…?
「……うん」
Pさんは目をそらして答えた。
「ごめん、水を差すつもりじゃないのだけど」
そう言うと、
「わかってる、こっちこそごめんね、こんな話で。
誰かに聞いてほしくて……」
ふうとため息をついて、Pさんは続けた。
「本当はね、会うのは怖いのよ、感染したらどうしようって毎回思うし。
私は家庭があってあの人も出社しているから、お互い絶対に気をつけようねって消毒とかはしっかりしているの。
それでも、どうなるかなんてわからないからね……」
やめればいいじゃない不倫なんて、と言いかけたが、できなかった。
そんなことは本人が一番よくわかっているのだ。
リスクが高くても、「会うしかない」。
それが、彼女の選んだ現実だ。
「ねえ、でも、夫に対してはこれっぽっちも罪悪感なんてないのよ」
視線を向けると、この日はじめて、Pさんの瞳が穏やかに笑みを作るのが見えた。
この瞬間こそ、Pさんが手にしたかった安堵なのかもしれない。
前編>>>「会えない時代に不倫する妻」あまりにも辛い現実とは
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