【オーガニックコットンってなんだ?】今更聞けない”素材のギモン”~稲沢朋子のゆるサステナ連載vol.3~
今更聞けない、オーガニックコットン素朴なギモン
▶▶▶答えてくれたのはこの方!
原田直哉(はらだ・なおや)さん/株式会社カーサフライン代表取締役
PROFILE/1976年7月30日生まれ。 大学在学時から、環境経済学を研究し、卒業後はアパレル販売員に。 桑沢デザイン研究所で、ドレスデザインを専攻したのち、 セレクトショップのディレクターを務める中でアメリカでエシカルファッションに触れるなど、 20代から積極的に国内外のエシカルな取り組みに関わる。 レディースのアパレルメーカーやオーガニックコットンのブランドなどを経験したのち、 株式会社カーサフラインを起業。
「オーガニックコットン」って本当に肌に優しいんですか?
編:「サステナブルについて私たちド素人ですが、今回はオーガニックコットンについて、知ったかぶりをやめろうと思い、いろいろ教えていただきたいです。よろしくお願いします!まずは、知ったかぶりらしいギモンです。オーガニックコットンってよく肌に優しいって言われますが、この認識あってますよね…??」
原:「よろしくお願いいします。結果からお伝えすると、オーガニックコットンとそうでないコットンの肌ざわりは違いません」
編:「え…。肌に優しいって思いこんでました…。」
原:「そういう方多いです(笑)。コットンの生産地の中でも特にインド、エジプト、カルフォルニア、中国のウィグル、この4か所で採れるコットンが高級とされているんですが、超長綿(ちょうちょうめん)といって、繊維1本1本が非常に長くそれで作った生地は確かに肌ざわりがいいよかったりするんですね。ただ、それはどっちかというと品種の問題。オーガニックかオーガニックじゃないか、というのはあまり関係ないんです」
編:「なぜ、皆さんオーガニック=肌に優しいという思い込みが広まったのでしょうか?」
原:「そもそもオーガニックコットンというのは綿の状態=繊維を糸にしていくときに薬品を使ったほうがハリのある扱いやすい糸が作れるんです。逆に言うと薬品を使用しないと、強い糸が作れない。なので、それを生地にするときも糸をギューッとねじれなくて、ふわっと糸をよっていくことになるんです。結果、ふわっとした生地ができやすかった、という糸の製造過程がかなり影響してるんじゃないかと思います。つまり原料の問題ではない。
また、オーガニックに対して意識の高いメーカーさんだったりすると、デザイン的にもナチュラルでほっこりしたものがお得意だったという背景もあるのでしょう」
編:「つまり、オーガニックコットンをけん引してきたブランドやメーカーの素材の製造過程と、デザインの趣味嗜好に依存した結果、世の中にふわっと優しそうな素材が広まったと」
原:「そうですね。日本でオーガニックコットンが本格的に広まってきたのは2015年頃でしょうか。それ以前から無印良品さんとかは先導していらっしゃいましたが、希少な存在ですよね」
どのあたりが環境に配慮してるんですか?
編:「そもそも、オーガニックコットンが環境配慮の面でどうサステナブルなのかをおうかがいしたいです」
原:「大きくいうと2つあって、1つは(働く人の)健康被害の軽減と、もう1つは土壌汚染・水質汚染の軽減です。
コットンってこの単一品種で世界の殺虫剤の約16%、世界の農薬使用量の6%を超えると言われているんです。つまりそれだけ農薬まみれの中で生産者の方は働いてる。通常のコットンの収穫時には枯葉剤などが使われるわけですが、体に害の出やすい農薬も当然混ざってるでしょうし。
比較的安価な農薬入りのコットンを買うという選択肢も僕たちにはあるけど、それをすると世界中のコットン農家の従事者の死を早める結果になるわけです。それでもそちらを選択しますか?ということですね。
また、土壌や水質も同じく農薬によって汚染されます。これらは回復するのにかなり年数がかかるんですね。なので、オーガニックコットンの認証には、一切の農薬を使用しなくなってからその状態を3年以上維持しないと、オーガニックコットンをうたえないという規定があるんです。例えば去年農薬をやめたとて、まだ土壌に農薬が残留してるからそれはオーガニックコットンだとは言えないということ。
一番の理想は、世界中でオーガニックコットンのニーズが増えることだと思います。そうすると働く人の健康被害も土壌・水質汚染も自然と軽減されることになるわけですから」
▶▶次ページ
「私たちがオーガニックコットンを買うことで、何が改善される?」
スポンサーリンク