「怒る」ことのメリットは? 怒らないほうがいいと思う2つの理由

2017.07.09 WORK

国会議員の豊田真由子氏が秘書に「このハゲーーーーー!!!」と罵倒した事件は記憶に新しい。あのような罵詈雑言は言わないまでも、人に対して怒ったり、イライラしたりすることは大人になれば誰にでもあることだと思う。でも、怒ることで何かいいことあるんだろうか? ある時期を境にそう感じている。

 

自由な部下に囲まれて

ギャル雑誌の編集長をしているとき、周囲から言われたことがある。「あまり怒らないですよね」、と。

編集部はなかなか自由なメンバーが多く、原稿や提出物の〆切を守らない者、会議や打ち合わせに遅刻してくる者、〆切なのに勝手に帰っちゃう者、連絡が取れなくなる者、強引に自分の都合に合わせさせる者……。なかなかの強者ぞろいだった。私がなめられていただけかもしれないが(苦笑)。

確かに、声を荒げて怒ったりすることはあまりなかったと思う。だから周囲からみれば「怒らない」という印象を抱くのかもしれない。もちろん、まったく注意をしなかったわけでも、叱らなかったわけでも、イライラしていなかったわけでもないのだけれど。

私が部下に対して、あまり怒らなかった理由は、大きくわけて2つある。

 

理由の1つは「反面教師」

怒らない理由の1つは、「反面教師」である。

自分が編集長になるまでに8人の編集長のもとで仕事をした。各編集長とも部下の指導法や注意の仕方はさまざまだったが、中にはものすごく声を荒げて感情的に怒る編集長がいた。

その編集長は部下を厳しい言葉で罵倒したり、モノを投げたり、提出物を破ったり、場合によっては徹底的に無視したりすることもあった。今、このように部下を指導していたらパワハラで訴られてもおかしくないだろう。そして、冒頭の豊田真由子議員とあまり変わらないレベルかもしれない。

当時20代だった私もいろいろな言葉で罵倒されたが、もっとも衝撃だったのは差別用語を言われたこと。「こんなページしか作れないんだったら、“か〇わ”になるよ!!!」と言われた。これを言われたのはコンテ会議という、雑誌のページをどんな内容にしてどう見せるかの構成を打ち合わせていたとき。私のコンテがどんなにひどいものだったかは記憶にないが、たとえ出来が悪かったとしても、仕事の指導をするときにそのような言葉の選びはいかがなものか……と人格を疑った。

 

精神的に追い詰められた人もいる

ひどい言葉で罵倒された部下は私だけではなく、その人の部下になった半数以上の人間が言われていた(言われない人もいた)。実はそれによって精神的に追い詰められ、休職した人、退職した人もいる。

そんな上司をみて、中には「編集長たるもの部下には厳しく」と思った人もいるかもしれないが、私はこう思った「ああいう人にはなりたくない」と。高圧的な人だし、周囲の人は気を使うようになるし、ヒステリックで怖い人だと思われる。もしかしたらそういう人間になりたいタイプのかたもいるのかもしれないが、少なくとも私は憧れなかった。声を荒げて怒る編集長が反面教師となって、自分は怒らない人になろうと思った。

 

2つ目の理由は「もったいない」から

もう1つは、自分のエネルギー消費が「もったいない」と思ったからである。

怒る上司をみて「ああはなるまい」と思っていたし、実行していたつもりだけれど、まったく後輩や部下を注意をしなかったわけではない。そして時には少し興奮して叱っていたときもあった。

でも、その後はいつもイヤな気持ちになっていた。後輩や部下を叱ったり注意したりする「自分自身」がイヤだった。

叱ったり注意したりする行為は、実はものすごく感情的エネルギーを消費することだと思う。しかもマイナス方向の……。誰かを注意したあとは、注意された人間が精神的ダメージを負うのはもちろんだが、注意した人間も精神的に疲労する。少なくとも私は、その行為をした自分がイヤになり、疲れてしまうことが多かった。

 

怒ることは自分自身にダメージ

叱ったりしてイライラした感情を持つことは、相手に少なからず精神的ダメージを与えてしまうだけでなく、自分にとってもマイナスで、エネルギーを消耗する行為は、何もいいことがないなと思うようになった。だからよっぽどのことではない限り、叱ったりイライラしたりしないことにした。

叱ることがあるとすれば、愛情をもって育てたいと思う部下だけにした。その人をもっと育てたい、いい仕事ができる編集者になってほしいと思う相手だけには、どうしても言うべきときだけ叱った。もちろん感情的になって声を荒げるのではなく、できるだけ冷静に、そしてできるだけ短時間で注意した。

逆に、そう思わない相手には、基本的に注意しないし、たとえすることがあってもシンプルに「以後、気を付けてください」とだけにした。

 

怒る行為にプラス効果が見つからない

「怒る」「イライラする」という感情は、相手にとってだけでなく、自分にとってもプラスなことはない。むしろマイナスなことだと私は思った。怒ることのプラス効果が自分にとって見つけられなかった。

誰にとっても1日は24時間しかなく、その限られた時間をどういう感情で過ごすのか。人生は一度きり。私は同じ24時間を過ごすなら、できるだけ楽しいという気持ちで過ごす時間を長くしたい。簡単にいえば怒っているエネルギーも時間ももったいない!

もちろんイラッとすることはある。でも「感情的な人になりたくないな」「自分のエネルギーがもったいない」と思って、その感情を長続きさせないようにしている。アンガーマネジメントという、怒りのコントロールをするといった理論も話題になっているが、そんなに難しいことでなく、ただ単に怒ることにはあんまりいいことはない気がする。

「反面教師」と、自分のエネルギーと時間が「もったいない」、私があまり怒らない理由はこの2つにある。

 

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