更年期女性はなぜ「うつ」になる?最新研究から驚きの事実、やっぱり腸とも関係があるらしい

更年期障害のひとつとして、代表的なうつ症状。更年期世代は、長い人生の中でも特にうつ症状になりやすい世代と言われています。近年の研究で、その原因となる女性ホルモンの減少には、腸内細菌が関わっていることが明らかになってきました。

今回は、最新の研究論文で発表された、更年期世代のうつ症状と腸内細菌の関係性について、ウンログの腸活うんち専門家・長瀬みなみがわかりやすく解説していきます。

 

ご存じでしたか?「更年期の女性はうつになりやすい」

男性と比較して、女性は2倍の確率でうつ症状を発症しやすいことがわかっています。特に更年期の女性においては、意欲がわかない、気力がない、気分が落ち込む、憂鬱な気分が続くなど、うつ症状は代表的な症状のひとつになっています。

 

更年期のうつ症状の原因には、女性ホルモンの急激な減少が大きく関わっています。そのほかにも、子育てが終わる、夫婦の時間が増えて問題が顕在化する、今後の健康に関する不安、親の介護など社会的・心理的ストレスによってもうつ症状が起こりやすいと言われているのです。他にも、加齢や更年期を迎えることによる体の変化、見た目の変化もストレスになってしまうことも。更年期は人生の中でも特にうつ症状を引き起こす原因となるような要素が集中している時期なのです。

 

意識的な運動や、食生活の改善、ストレスコントロールなどをうまく取り入れて、セルフケアを行うようにしましょう。

 

閉経前のうつ病に腸内細菌が関係している

 

閉経タイミングでのうつ症状と腸内細菌との関係が、2023年に学術誌「Cell」で発表された武漢大学人民病院トランスレーショナル医学研究所のDi Liらの研究論文で明らかになりました。1960年代から更年期のうつ症状に腸内細菌が関係していると考えられてきましたが、研究によってその詳細が明らかになったのはこれが初めて。ここではその内容について、解説します。

 

閉経を迎えるタイミングでうつ病を患っている患者では、女性ホルモンの一種である「エストラジオール」が、健常な女性と比較して著しく減少します。エストラジオールの減少はうつ症状以外の更年期症状とも深く関係しているため、更年期症状に対してホルモン療法を行う場合は、症状改善のモニタリング数値として利用されています。

 

実は、エストラジオールとうつ病の関係は100年以上前から示唆されていました。健常者とうつ病患者それぞれの腸内でエストラジオールが分解され減少するスピードを比較すると、うつ病患者の方が4倍もスピードが速いのです。しかし、どのような腸内細菌が関係しているのかまではわかっていませんでした。

 

今回の研究では、うつ病患者と健常者それぞれのうんちから腸内細菌を解析して違いを比較。結果、うつ病患者のうんちには、”Klebsiella aerogenes”という腸内細菌が健常者よりも多く含まれていることがわかりました。さらに、”Klebsiella aerogenes”が作り出す「3β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ」という酵素が、うつ病患者の腸内に多く存在していました。この酵素によって、腸内のエストラジオールが分解されて減少し、うつ病の発症に繋がっているのではないかと考えられます。

 

特定の菌ではなく、多様性が大切

エストラジオールの分解・減少に関わっているのは、”Klebsiella aerogenes”という特定の腸内細菌ではなく、酵素そのものです。この酵素を作り出す腸内細菌の種類が閉経タイミングでのうつ病の発症に関与していると考えられます。

 

この研究ではもう1つの実験が行われています。遺伝子操作によって、「3β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ」を作り出せるようにした大腸菌をマウスに移植し、マウスの行動の変化を観察しました。大腸菌を移植されたマウスは、うつ病のような消極的な行動をとるようになったのです。このことから、”Klebsiella aerogenes”以外にも、3β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼを作り出す腸内細菌が存在する可能性があることがわかります。

 

腸内環境改善は、特定の腸内細菌を減らしたり排除することを目的とするような論調で語られることが多いです。しかし、特定の腸内細菌を減らす・増やすための1to1の方法はわかっていないことだらけなのが現状です。さらに、腸内細菌の働きは腸内のバランスによって変化していると考えられています。つまり、特定の腸内細菌だけにスポットライトを当てた腸活はあまり意味があることではないかもしれません。

 

腸内環境を整えて備えよう!

 

更年期、特に閉経タイミングでのうつ症状と腸内細菌の関係について、最新の論文をご紹介しました。女性ホルモンと腸内細菌の関係は、昔から関係性があると考えられていたものの、具体的な研究成果がでてきたのは近年の話。そのため、更年期や女性ホルモンのための具体的な腸活方法はまだわかっていません。

 

しかし、腸内環境を整えることで、腸内細菌の有益な活動を促してくれることはすでに常識になりつつあります。日々の腸活で体調管理を行うようにしたいですね。

 

【論文】

Di Li, Ting Sun, Yongqing Tong,et al. Gut-microbiome-expressed 3β-hydroxysteroid dehydrogenase degrades estradiol and is linked to depression in premenopausal females.Cell Metabolism.March 17, 2023; 35:1–10. doi:10.1016/j.cmet.2023.02.017

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