熱中症「夜寝ている間」「プールで」「時差発症」もあり得る。「しっかり寝て、朝ごはんを食べることです」

「熱中症といえば真夏の炎天下、屋外でのスポーツ中をイメージするでしょうが、実際はちょうどいま、梅雨明け前後が搬送のピークです。身体がまだ暑さに慣れていないこの時期がいちばん危険。逆に、身体が暑さに慣れるお盆ごろには減少します」

 

出典・令和4年(5月から9月)の熱中症による救急搬送状況(消防庁)

こう語るのは神奈川県済生会横浜市東部病院の谷口英喜先生。上図は昨年の熱中症救急搬送数ですが、6月下旬から気温が急激に上昇し、7月1日金曜の東京で最高気温37度を記録しました。この影響で、ご覧のとおり6月27日~7月3日週にとびぬけて搬送数が増えています。

 

消防庁によれば、今年の7月3日~7月9日の全国の熱中症による救急搬送人員は3,964人。発生場所別では住居が最も多く、続いて道路、公衆屋外(競技場、屋外駐車場、野外コンサート会場、駅等)、仕事場(道路工事現場、工場、作業所等)の順です。

 

「住居での発生は、暑さを感じにくく、エアコンをつけることをためらうお年寄りが中心です。重症例はそのほか、日中の道路工事現場など、倒れた後に誰かがつきっきりで看病しにくい労働の現場で発生します。案外とスポーツやレジャーは人の目があるので発見も早い。このように、熱中症はイメージと実態がかなり違います」

 

数ある疾患の中で熱中症だけはほぼ予防ができるため、重症例となり身体にダメージが残った場合は「防げなかった」という悔いも残るものだと谷口先生。その予防について詳しく教えていただきました。

 

コロナ禍明けの今年は「しっかり寝る」「3食全部きちんと食べる」ことが重要

「すでに今年の熱中症救急搬送数は例年より高い数値で推移しています。原因の一つがコロナ禍での在宅による筋力低下。筋肉は体内では水分を貯めておく場所でもあり、筋肉量が低下したため身体が水を貯められなくなっています。また、体重が変わらなくても、実は筋肉が減少して脂肪が増加したという人が多いのです。加えてステイホームで外での活動にも慣れていないので、暑熱順化、暑さに慣れて適切に汗をかいて身体を冷やす機能が落ちています。さらに今年は気温も高すぎるため、災害級のリスクが訪れていると思ってください」

 

熱中症は通常「非日常的な環境」で起きるそう。代表例が「スポーツ・レジャー・労働」です。いずれも予防のために大切なのは2点、「前の夜にしっかり寝ること」「朝ごはんを食べること」だといいます

 

「食事からの水分摂取は思ったより多く、欠食するとその分1日の摂取水分量2.5L(体重60㎏例)のうち500mL相当分が減ります。欠食は熱中症リスクが上げる最大因の一つですから、夏の間は何としてでも朝ごはんを食べさせてください。万が一朝ご飯がとれない場合は、水分をゆっくり500mlくらい代わりにとる必要があります。さらに睡眠をたっぷりとって疲れを残さず、身体が暑さによく反応して汗をかける状態を作ることも重要です」

 

「プールでも熱中症になるケースがある」スポーツ・レジャーの意外な熱中症

■体育館でのスポーツはバドミントンと卓球が「意外に危険」

「体育館は直射日光を浴びないので油断しがちですが、エアコンが利いていない場合は要注意。中でもバドミントンや卓球は競技に影響があるため風を送れませんから、バスケ、バレーなど扇風機、エアコン、窓を開けての外からの風を当ててもらえる競技よりリスクが高まります。室内だとみんなも屋外ほど熱中症を警戒していませんから、頭が痛い、ふらつくなど症状があっても大丈夫かなと無理をしてしまいがち。休憩をとって水分補給を頻回に行ってください」

 

■野外レジャー、登山やハイキングは「暑い日は行かない」決断も必要

「BBQは飲食で水分もとるためそれほど高リスクではないのですが、東京でいうと高尾山程度の軽めの山登りやハイキングが案外とリスクありです。まず、山は涼しいイメージがあり、荷物も軽くしたいため水をじゅうぶんに持たず、軽装で行きがち。平地と同様に熱中症指数が高い日にはなるべく行かない、行くにしても早朝の涼しい時間帯を選ぶことです。また、行ってみると思ったより人で混雑していて、ムシムシした湿度の中で風も受けられないというリスクが。トイレも空いていないし、水を買うところも行列で、休みをじゅうぶんにとらず先を急ぎ、結果倒れるという例があります。20~30分に1回ほどは休憩をとり、涼しい木陰で身体を休めて体温を下げ、確実に水分を補給できるようなスケジュールで行動してください」

 

■海では「首筋をガード」して体温上昇を防いで

「海は照り返しが強く、日陰も少ない。釣りに出かける人ならば釣りに集中してしまい、水分補給の頻度も減ります。日光を避け、30分に1回を目安に休憩をとって水分を補給しましょう。直射日光を避ける工夫も重要です。帽子はつばの広い物をかぶり、首筋は濡れタオルを巻いて保護すること。ポップアップテントなども活用して日陰を上手に作り出してください。お酒を飲む場合、350mlのビール1缶程度はいいでしょうが、基本的にお酒は脱水を進めるのでリスクです。最低でも飲んだビールと同量の水分を補い、尿を頻回に出して身体の熱を対外に排出してください」

 

■遊園地は水を持参。プールも「水があるから安全」ではない

「待ち時間のある遊園地では水をたくさん持っておくことです。プールは意外な盲点です。水の中で泳ぐのだからと油断しますが、水の中での熱中症も起き得ます。というのも、泳げば体温が上昇しますが、陸上なら汗が蒸発して体温が下がるところ、プールの中では蒸発がないので熱が体内にこもるから。30分から1時間に1回の休憩時間をしっかりとることが重要で、アスファルトの上ではなく木陰できちんと体を休め、水やお茶をたっぷりと飲むといい。このとき、15度くらいの水道水でタオルを濡らして首筋にかけると効果的に体内の熱をとることができます。小さい子ほどダメージが大きく、また自分の異常に気づけないので、頻回に休みを挟み、普段と違う感覚や痛みがないかをその都度よく聞き取って注意を深めてください」

 

■学校や習いごとから帰ってきた子どもからは「話をよく聞く」ことが大事

「熱中症はその場で症状が出るものばかりでなく、例えば日中に暑い中で活動したダメージが夜になって出現することも大変よくあります。子どもはまだ体温の調整能力が整っておらず、加減もわからないため思わぬ無理をしがちです。今日は何をしたの、どうだったのといろいろ話して、普段と違う症状がないかを注意してください。たとえば、頭がぼーっとしないか、疲れないか、頭が痛くないか、他の体のどこかが痛くないか。熱中症は痛みが出ますから、足がつった、身体が痛いなどと訴えたら、この時期は熱中症かもしれないと疑って身体を冷やしてください。症状が取れれば熱中症だった可能性がありますから、お子さんに注意を伝えてください」

 

労働での注意点「遅れて出現する熱中症に気を付けて。頭痛や痛みがサイン」

■仕事内容が同じであっても、年を重ねるごとにリスクが上がっていく

「重症搬送例が多いのは道路工事など過酷な暑さの中で働く人、非日常的な環境の典型例です。若い人より40代50代の搬送が多いのですが、業務内容が同じでも年を重ねれば筋肉量が減り、体内の水分保持能力は落ちています。また、自律神経の調整能力も落ちるため、若いころほどの体温コントロールはできません。去年まで大丈夫だった方も今年はハイリスクであると考えて、ファン付きウェアなど物理的な対策と水分、頻回の休憩を心がけてください」

 

■女性がオフィスで突如頭痛に襲われたら「時差熱中症」かもしれない

「熱中症は過去24時間以内の暑さが影響してくるため、エアコンのきいた部屋で働いているのに突然具合が悪くなるケースが案外あります。時間差で熱中症が現れるもので、例えば夜に暑い部屋で寝ていたダメージが5~6時間後に突如出現することも。逆に、昼間暑いところで働いていて、その時は大丈夫だったけれど、帰宅して夜中に熱中症になるということもあります。この、『かくれ熱中症』や『時差熱中症』は、ひと夏に一度は誰しもやっていると思っていいくらいに、実はみなさんが体験しています」

 

つづき▶今年は熱中症を「いつもと調子が違うな?」と思ったらまず疑ったほうがいい。もはや災害級の状況

 

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