東大生は19歳で経験が乏しくても最強! 大人たちが太刀打ちできない【ふたつの力】を持っている
思いがけない学問との出会いがある1~2年生
さんきゅう倉田です。
2023年4月から東京大学に通っています。年齢は38歳、職業は芸人です。
東京大学に入学すると、全員教養学部に所属します。医学部とか法学部とか経済学部に進むのは3年生からで、1,2年生は分野を超えて様々なことを学びます。
ぼくは文系ですが、理系の学生と同じ授業を受けることがあって、予想していなかった学びとめぐりあうことができます。
全く興味のない分野でも、先生の話を聞いたりテキストを読んだりすることで、「おいおい、こんな面白い分野だったのか。こっちの世界に進むのもいいなあ」と思うこともあります。
用途の分からない商品をひたすら触るだけの授業
2年間教養を学ぶので、多くの授業が文理や学年を問わずに参加を受け入れています。
そのため素晴らしい人との出会いが豊富です。
『さわる、わかる、すきになる』という授業がありました。
市販の商品をひとつ渡されて、その形状や材質、色から感じたことをメモし、用途を当てるよう指示されます。
毎回見たことのない不思議な商品を渡され、考えさせられます。
途中で用途が分かるものもあれば、先生が答えを教えてくれるまでイライラし続けるものもあって、誰よりも早く答えにたどり着くと充実感を得ることができます。
しかし、この授業の目的はずっと明かされませんでした。
先生は学生にクイズをさせたいわけではないと思うし、充実感や達成感を与えたいわけでもない。
なんのために、我々はこの作業をしているのでしょうか。
5回目の授業の際、6人毎のグループを作って、今までの振り返りをすることになりました。
「あの商品、自分でも欲しくなったね」とか「あれ、最後まで分からなかったね」とか「家にある商品もあった」などと話します。
話が一段落したところで、ぼくは疑問を投げかけました。
「我々は何の説明も受けずに、商品の用途を当てさせられています。これにはどんな目的があるんでしょうか」
ほんの少しだけ間をおいて、文科ニ類の2年生の女の子が答えてくれました。
「世の中の多くの商品には説明書がありますよね。
iPhoneなど説明書がない商品もありますが、たいていの商品は説明書を読んでから使用することが多い。
それって、ユーザーにとってストレスだと思うんです。
説明書がなく、商品の形状などからその使用方法が連想できるならユーザーにとってよりよいですよね。
この授業では、我々が商品を手にとってどのように感じたか、そして用途を理解するまでにどのようなプロセスが必要かを知らせようとしているんだと思います。
それを活かして、直感的に使用方法がわかる商品開発を行おうとしているのではないでしょうか」
ぼくはこれを聞いて感動しました。
ほとんど情報が与えられていない中で、論理的で矛盾がなく、きっとそうだろうなと思わせるこのような回答を導けることに驚きました。
彼女は19歳です。
19歳の自分が果たしてこのような回答を導くことができたか。
おそらく、彼女は働いた経験がありません。
上記のようなビジネス的な視点は、労働の経験から培われたものではなく、日常生活で得た経験や才能によるものだと思います。
東大生の底知れぬ才能と賢さに感嘆しました。
東大に入ってから驚くことは多かったけれど、こんなに心が揺さぶられたのは初めてでした。
19歳の彼女たちは大人と比べて経験が乏しくても、推論と知識という大きなふたつの力で大人のはるか上を行く判断を導きだすことができるのです。
その後1ヶ月ほど、食事や仕事であった芸人、税理士さん、友人全員に彼女の推測の素晴らしさを語り、東大で学ぶことの魅力を伝えるほどでした。
【後編】では、さらなる東大生の才能と賢さに触れた出来事、そこから実感した東大の魅力について語っていただきました。
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