「異常あり」と言われるのが怖い。婦人科にはどうかかれば?【医師に聞く♯6】

厚生労働省によると子宮筋腫・子宮内膜症の疑いや罹患の経験を持つ女性は約4人に1人。とても身近な病気なので、思い当たる人も多いのではないでしょうか? 40代を過ぎ、これから閉経を迎えるにあたりそれらの病気との付き合いはどうなるのでしょうか? 気をつけるべきこととは? 山王病院の産婦人科医師、野間先生にお伺いします。今回は『婦人科検診』について教えていただきました。

 

大事なのは『きちんとした』検診を受けること

ここまで3回に渡って子宮内膜症、卵巣膿腫、子宮筋腫についてお話してきましたが、4人に1人は患っている病気なのに検診率は厚生省のデータによると約30%と多くはありません。検診を受けないまま閉経を迎え、何事もなかったとしてもそれは運良く大きな病気へ繋がらなかっただけで、今後持っている疾患が癌化しないとは限りません。

 

卵巣や子宮はもの言わぬ臓器と呼ばれるくらい自覚症状が少ない器官。早期発見には定期的な検診を受けるしかありません。自治体の検診を受けることはとても大事です。しかし通常検診は子宮の入り口の細胞を取る”頚がん検診“が主なので、子宮筋腫や卵巣嚢腫の診断には内診やエコーが必要です。知らずに持っていた筋腫や嚢腫が徐々に大きくなり、急な腹痛や大出血などで緊急来院、そこで初めて自分の状態を知るケースが少なくなくありません。放置せず症状がなくてもせめて2年に1回は定期的に検診を受けることが大切です。

まずは自分の体を知ることからはじめて

婦人科の検診で大事なことは問診です。例えば「月経痛がひどいのです」「出血量が多くて」と相談に来る方がいますが、それが突然のことなのか、以前からなのか。月経痛の痛みの程度や出血量は人と比べられないので、それは本人しかわからないこと。いつから痛かったのか、どんな風に痛むのか、自分の様子をしっかりと理解し伝えることが大切です。

 

最近は月経を管理できるアプリもありますが、それでもまだ月経の日を覚えていない人が多いと感じます。排卵日や基礎体温まで測れとは言いませんが、せめて月経のリズムや様子くらいは管理して、なんとなくでも自分のメカニズムを知り、月経痛や月経量の変化に気付くことが大事です。

 

早い段階で信頼できる医師を見つけること

検診で子宮内膜症や卵巣嚢腫が見つかった場合、閉経までは癌化する可能性があるので長いおつきあいになる場合もあります。癌化しないように定期検診を受け、その都度的確なアドバイスをくれる、ずっと寄り添えるパートナー的先生を見つけることが大事です。

 

検査は産科でも婦人科でも大丈夫。気になるなら事前に確認を

病院は具合が悪くなって始めて行くところだと思っている人が多いのですが、それでは遅すぎます。症状に乏しい子宮や卵巣の疾患は定期的に検査して発見するしかないのです。妊娠してないのに「『産』婦人科」に行ってもいいのかなと躊躇する方がいますが、一度病院やクリニックのホームページや電話で産科だけなのか、婦人科も診るのか、不妊専門なのか確認し、迷ったときは「婦人科検診はしてますか?」と事前に電話で確認すれば安心です。自治体から送られてくる検診クーポンをきっかけにしても良いです。

 

また40歳後半ですでに子宮筋腫や子宮内膜症、卵巣嚢腫がある人で、治療方法に悩んだ場合は「月経中のホルモン値」を測ってみるといいかもしれません。ホルモン値がわかれば閉経か否かおおよそがわかるので、それにより薬物療法にするのか、手術にするか治療方針を決める手がかりになると思います。

 

ホルモン値の測定は、更年期障害の場合は保険が適用されますが、希望の場合は自費で1万円くらい。測れるか測れないかは施設によりますので、相談してみるのがいいでしょう。残念ながら子宮筋腫や子宮内膜症、卵巣嚢腫にかかるか、かからないかは運命という部分もあります。でも「もっと早く検診すればよかった」と後悔しないためにも、検診がどれだけ大事かを覚えていて欲しいのです。

 

お話・野間 桃先生

山王病院 リプロダクション・婦人科内視鏡治療センター(不妊治療・生殖医療・婦人科内視鏡)。北里大学卒。東京大学医学部附属病院 卒後臨床研修プログラム修了。元国際医療福祉大学三田病院女性腫瘍センター。日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医。日本生殖医学会認定生殖医療専門医。日本医師会認定産業医。

患者様にとって長期にわたることもある通院治療や入院治療だが、産婦人科医であると同時に一人の女性として、患者様の声に耳を傾ける。数々の治療の負担を和らげるため、またお一人おひとりそれぞれに異なる悩みを解決するため、患者様と心をひとつにしつつも、冷静な判断で治療にあたる。

(記者より)

「継続的に診ないと個人のヒストリーはわからない、疾患の影には必ずエピソードが隠されています」という先生の言葉が深く刺さった今回の取材。自分の症状を具体的に説明するために、メモや日記に残すことの大切さを痛感しました。そして何より、症状が出る前に定期的にしっかりとした検診をして、何でも話せる先生を探すこと。ついネットの口コミや評判に左右されて病院ジプシーになりがちですが、長いおつきあいになることを頭に入れて、ずっと寄り添える先生を探したいと思いました。

(取材・文/根本聡子)

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