卵巣嚢腫を持っています。40代から閉経後にかけて、どうなりますか?【医師に聞く#5】

厚生労働省によると子宮筋腫・子宮内膜症の疑いや罹患の経験を持つ女性は約4人に1人。とても身近な病気なので、思い当たる人も多いのではないでしょうか? 40代を過ぎ、これから閉経を迎えるにあたりそれらの病気との付き合いはどうなるのでしょうか? 気をつけるべきこととは?今回は山王病院の産婦人科医師、野間桃先生に『卵巣嚢腫』について教えていただきました。

 

自覚症状がほとんどなく、気付いたときには直径が10㎝を越えることも

卵巣に発生した嚢腫には悪性と良性があり、内部にホルモンや腫瘍によって産生される液体が溜まり水風船のように袋状になったものです。自覚症状が少なく、卵巣が大きく腫れたことではじめてお腹の張りや腹痛を認めますが、ほとんどの人が検診に来た際に見つかることが多い病気です。中には通常2〜3㎝の卵巣が10㎝まで大きくなっても気付かない人がいるくらい発見が難しいのです。

 

また、卵巣の中ではつねに卵胞発育・排卵・黄体形成が繰り返し行われていて、その経過の中で卵巣が一時的に腫れることがあります。これを機能性嚢胞といいますが、その場合は時間と共に腫れがおさまり、徐々に縮小していくので経過をみれば問題はありません。

 

卵巣の腫れが継続する場合、嚢腫の内容と良悪性の確認でMRI等画像診断をします。画像診断で悪性がほぼ否定出来、その時点で無症状かつ4cm未満の場合は定期的な超音波での経過観察をすることがありますが、注意したいのは卵巣の付け根部分がねじれる卵巣茎捻転を起こしたり、感染や破裂する危険性があります。もしそうなってしまうと激しい下腹痛を引き起こすだけでなく、卵巣が壊死したり嚢腫内容が体内に散らばって腹膜炎を引き起こし、緊急手術になってしまいます。

 

そしてもしも内容が悪性のものであれば、その病気を悪化させてしまいます。茎捻転や感染、悪性化予防、精密検査(確定診断)目的に手術を選択することもあります。術式は、嚢腫のみ摘出するか卵巣卵管を摘出する子宮付属器切除術があります。

 

嚢腫内容、大きさ、閉経後も癌化に注意

卵巣嚢腫の明らかな原因がわかっていないものもありますが、女性ホルモンが関係してるものも少なくありません。代表的なものはチョコレート嚢腫です。月経と共に嚢腫内で出血を繰り返し嚢腫の増大がみられるため、閉経後は嚢腫も小さくなり、悪さをすることは少なくなることが期待出来ます。

 

ただ、閉経後であっても注意したいことは癌化すること。チョコレート嚢腫の悪性化は1%、その他の良性の卵巣腫瘍の悪性化はごく稀ですが、定期的な嚢腫の評価は、癌の予防・早期発見に繋がります。

チョコレート嚢腫の治療は、大きさ、症状により薬物療法と外科療法がある

ホルモンが関与しているチョコレート嚢腫の場合、長期服用が可能な低用量ピルや黄体ホルモンを第一選択薬とし、次に一時的に月経を止める偽閉経療法が挙げられます。40代前半ですと、平均閉経年齢50~51歳まで約10年あることになります。そこで長期に偽閉経療法で卵巣機能を抑制してしまうと更年期障害をはじめ、骨粗しょう症や動脈硬化を引き起こすリスクがあり、長期使用は出来ません。

 

卵巣嚢腫の大きさが4cmを超えていたり、薬物療法でコントロール不良、悪性化予防には手術となります。低浸襲である腹腔鏡下手術が多く行われており、開腹手術に比べると体への負担が少なく回復が早いため、入院期間が短く、退院後も比較的早期に社会復帰が可能です。

 

手術内容は嚢腫そのものを摘出する他に、嚢腫内容液を吸引し嚢腫の壁を焼く方法があります。患者さんの症状・重症度によって適した治療を見つけていく必要があり、パートナーの有無や将来のライフプランと合わせ、再発や悪性化の可能性と卵巣機能温存の必要性を十分に考慮し、嚢腫が左右どちらか、また両方にあるか、嚢腫の大きさによって手術方法に工夫が必要です。

 

 

お話・野間 桃先生

山王病院 リプロダクション・婦人科内視鏡治療センター(不妊治療・生殖医療・婦人科内視鏡)。北里大学卒。東京大学医学部附属病院 卒後臨床研修プログラム修了。元国際医療福祉大学三田病院女性腫瘍センター。日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医。日本生殖医学会認定生殖医療専門医。日本医師会認定産業医。

患者様にとって長期にわたることもある通院治療や入院治療だが、産婦人科医であると同時に一人の女性として、患者様の声に耳を傾ける。数々の治療の負担を和らげるため、またお一人おひとりそれぞれに異なる悩みを解決するため、患者様と心をひとつにしつつも、冷静な判断で治療にあたる。

(記者より)

もの言わぬ臓器と言われる卵巣。自覚症状がないので気付いたときには大きくなっている人がほとんどと聞いてお腹が痛くなった人も多いのではないでしょうか。閉経すれば卵巣膿腫は縮みますが、その後癌化する可能性もあるという。つまり1度なってしまったら半永久的におつきあいしなくてはいけない病気なのです。10人に1人が持っているからと安心するのではなく、大きな病気を併発する前にしっかり検査をすること。次回はその検査について先生にお話をお伺いします。

(取材・文/根本聡子)

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