「性教育とは『エロいもの』だと思っていた」マンガ家・なおたろーさんが、2歳の息子に「最初に語った」性のこととは

性教育という言葉には誰しも「恥ずかしい」「どう話せばいいのか全然わからない」と高いハードルを感じるのではないかと思います。シリーズ「小学生の子どもに性をどう教えるか」ではここまで小学生の子を持つお母さまがたに「実際のように伝えたのか」具体的な実践ストーリーを伺ってきました。

 

今回ご登場いただくのは男児2人のママであるマンガ家のなおたろーさん。現在33歳で、39歳のご主人、小5・小2の息子さんの4人で山口県に暮らしています。

 

22歳で長男を出産後、23歳で自分自身がPMDD(PMSのメンタル版)だと気が付いた経緯は『生理前モンスターだった私が産婦人科医に聞くPMS・PMDD攻略法』(アマゾン)に記されています。

今回は同様に、ご自身が実践した性教育についてXで配信したマンガ『わが家のゆる性教育』の背景を伺いました。

 

【小学生の子どもに性をどう教えるか】#5

 

自分自身の壮絶なPMDD体験から「体のしくみは自分自身が知っておくべきことだった」と

ゆるっと性教育 8年間息子たちと家庭で やってきた性教育実践記録』なおたろー・著 Kindle版(無料)

「性教育と言っても、私の場合は教材を使ったガチの人体教育!という感じではなくて、日常会話に少しだけ意識しながら取り入れていくもの。だから『ゆる性教育』と付けているんです」

 

そう語るなおたろーさん。いつ頃から性教育をスタートしたのでしょうか? やはりご主人ともよくご相談なさってから?

 

「いえ、夫にはまったく相談せず、今日こういうことを話したよという事後報告でした。意識して教え始めたのは長男が2歳、私が25歳のころ。当時は転勤したばかりで地元から離れ、ママ友も知り合いも周囲にいなかった時期です。なので、ママ友から知識を仕入れる機会もなく、ただ自分で『これは隠すことじゃないな、教えたほうがいいな』と考えてネットや本で調べ始めました」

 

きっかけは23歳にさかのぼります。小さなころから絵を描くのが大好きだったなおたろーさんは、美術系の短大へと進学、油絵を専攻し、卒業後は小売店に就職。

 

「毎日書き続けていた日記の片隅にちょこちょことイラストを描き、就職した仕事先でもイラストの仕事を頼まれたりと、そこそこ多忙な日々を送っていました」

 

結婚、22歳で長男を出産し、時間をみつけて日記を再スタートしましたが、思うように続きませんでした。「文字がだめなら絵で」と育児マンガに挑んでみたところ、12か月分描き続けたことで自信が沸いて、長男2歳の2015年にアメブロで育児マンガをスタートします。

 

「その2015年、23歳のとき、自分はPMDDだと気がついたのです。それまで自分は鬱っぽい、情緒不安定なメンヘラだと思っていましたが、実は女性の7、8割にPMSがあるということを知り、どうも私のメンタルも生理と関係ありそうだぞと病院に駆け込んで。PMDDだと診断がおりて『そんなことは誰も教えてくれなかった!』と衝撃を受けながら治療を開始、ピルのことや生理の仕組みなどを独学で調べるようになりました」

 

知識がつけばつくほど、それまでさんざん否定しつづけてきた自分自身を受け入れられるようになっていったそうです。

 

「これは私のせいじゃなくて、ホルモンのせいだったんだ!と。当時は『この精神状態が続いたら、自殺するか、息子を殺すか、夫を殺すかのどれかだ』という状態。たまたま転がり込んだ婦人科がPMSチェック表を出してくれて、医師も『これはあなたのせいではなく、女性ホルモンのせい』とはっきり言ってくれました。正直、この分野に詳しいお医者さんに当たるかは運ですが、私は大当たりでした」

 

しかし、同時に、もし学校の授業で少しでもPMS・PMDDに触れてくれていたら、もっと早く気づいて10代のうちに何とかできたのに!と腹も立ちました。

 

「こんなに情報がないのは困る、絶対情報があったほうがいいでしょう、じゃあ私が情報になろうと思いました。産後は文字を見ても目が滑るようになったので、読んで理解するためにウェブも新聞記事も関係あるものは何でも書き写し、ノートを作りながら勉強していきました」

 

そのノートは全部で10冊近くになり、2024年に書籍『生理前モンスターだった私が産婦人科医に聞くPMS・PMDD攻略法』(アマゾン)を執筆する際には参考資料として大活躍したのだそう。

『生理前モンスターだった私が産婦人科医に聞くPMS・PMDD攻略法』より

>>>マンガ『生理前モンスターだった私が産婦人科医に聞くPMS・PMDD攻略法』の試し読みはこちらから

 

 

保健体育は「エロいものだ」という印象を持った「原因」を考えていくと、意外なことに

意識して話し始めたのは長男2歳とおっしゃいましたが、ちょっと早いんじゃないか? 2歳で理解できるのか? と先ほど感じました。

 

「私の側が、いきなりできるわけないと思ったんです。ある日突然『ママ、赤ちゃんはどこからくるの?』と言われても絶対ぱっと答えられないから、準備期間を取っておこうと。それもかなり緻密に、『ねえママ』と言われたとき『はーん?』とごまかし返事にならないよう、まず脳内で『お、どうした?』って受け答えのシミュレーションから始めて(笑)」

 

じつはなおたろーさん自身が、子どものころに学校で受けた「保健体育の授業」は「エロいものだ」という印象を持っていたそう。

 

「保健の授業で避妊を教えてもらうんだって、キャー♡みたいなイメージをずっとずっと引きずっていました。ではなぜエロいというイメージを持ってしまったのか、原因を考えていくと本当に些細なことで。小学生のときに読んだ『ちびまるこちゃん』で生理が『アレ』と言われていたので、『生理は隠すようなものなんだな』と受け取ったのではないかと思います。そんなことでイメージを持つのだから、言葉を選んで慎重に伝えないとならないことなんだなと」

 

当時は生理痛で保健室に行ってしんどいですと訴えても「生理は病気じゃないのよ」と先生に言わる時代。誰しもそれが普通だと思っていましたよね。

 

「先生たちもそれで育ってきているのですから、時代が悪かったというか、ここからどうにかするしかないと思いました。自分ができる範囲でできることをしていき、また自分の子どもに教えることも世の中に対する貢献になる。私はマンガを描けるから、配信もする。結果フォロワーさんもついてくださるから、どんどん描くしかないよね!と」

 

実際どう実践したのか?「やっぱり絵本は必須です」

『ぼくのはなし』和歌山静子・作 山本直英・監修 1,540円(10%税込)/童心社

アマゾンはこちらから

では、2歳で最初に話し始めたあと、なおたろーさんはどのように性教育を進めたのでしょうか。

 

「小学校2年のときに『ぼくのはなし』という絵本を準備しました。いつかするだろうと覚悟して、絵本を用意して本棚にしのばせておいて、ある日息子が『ママ、子どもってどうできるの』と質問したときに『ちょうどいい本を持ってるよ!』と応じてぺらっとめくりました。最初は息子はびっくりしていました」

 

具体的にはどのようなお話を?

 

「『女の人にはおまたにヴァギナがあり、男の人にはペニスがあるよ、医学用語ではそう言うんだよ』と絵を指しながら話しました。最初は言葉がよく理解できないようでしたが、『犬も猫も、カブトムシもそうだよ』と続けると、そうか、生き物ってそうなんだなと意識してくれていました」

 

おお、かなりつっこんだ話ですね。絵本は補助的なアイテムとして、聴覚だけではなく視覚でも説明できるため、子どもの理解度が違うと感じたとのことですが。

 

「はい、格段に理解しやすいと思います。また同時に、疑問に思ったらこういう本を見るといいのだという情報も入りますから、何から始めていいかわからない人はまず絵本を1冊用意してみるのがおすすめです」

 

たとえば、アマゾンから絵本が届いたら「箱を開封する瞬間」を性教育スタートのきっかけにしてもいいのでは、となおたろーさん。

 

「子どもにとって絵本はおもちゃの延長、楽しみのひとつ。いっしょに親とつながってくれるツールです。このあたりの経緯はマンガに詳しく描きましたので、ぜひご覧ください」

『ゆるっと性教育 8年間息子たちと家庭でやってきた性教育実践記録』より

 

 

>>>マンガ『ゆるっと性教育 8年間息子たちと家庭で やってきた性教育実践記録』試し読みはこちら

 

本編では、漫画家のなおたろーさんが23歳のときに自分はPMDDだと気がついたこと、そして息子さんへの性教育は絵本で行ったというエピソードをお聞かせいただきました。

続いての▶▶やってみてわかった。性教育って「エロいことを教える」のでは全くなく、当たり前の人権について親が子に伝える大切なお仕事

では、なおたろーさんご自身が実践した性教育について、Xで配信したマンガ『わが家のゆる性教育』の背景を伺います。

 

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