もう、故郷に帰っていいですか?-42歳・栄子の場合(1)-【40女の恋愛事情・story5】
東京でもう20年も働いた私。身体にも不安があるけれど、いつまでこうして一人で仕事を続けていけるんだろう。
そして、奥さんのいるあの人と私の関係は……。
あまり語られることのないアラフォー女性の恋愛事情をクローズアップした小説、【40女の恋愛事情】。
久しぶりに戻った実家は、まるで、今の私みたいに、あちこちが傷んでいた。
ベランダに立つと、みしっと鳴るし、砂壁は触るとぽろっと落ちてくる。
「いろいろ直さなきゃとは思ってんだけどね。屋根もこの前の台風の時、雨漏りしたし」
私の後ろに立つ母親は、少し小さくなったように感じる。
昭和の頃に建てられたこの一戸建てで、母はひとりで暮らしている。
父は、何年か前に他界した。ある日突然風呂場で倒れて、それっきりだった。
この家で、私は大学に合格して上京する18歳まで暮らした。
あの時は、父と母と私と兄と祖母の5人暮らしで、この家は賑やかだった。
でも今は、祖母も父もいなくなり、兄は結婚して会社の社宅で暮らしている。
母親ひとりで、5部屋もあるこの家を持て余しているようだった。
「帰ってきたらいいじゃない」
夕食時、私と煮物をつまみながら、母親が言う。
「こっちにだって仕事はあるんだから、帰ってくればいいのよ」
「……」
うまく返事ができなかった。
そんなに簡単に決められることじゃなかったから。
大学を出ても、いい就職先に巡り会えなかった私は、派遣社員として働き始めた。
そのうちきっとどこかの正社員として採用される。
就職が決まるまでの、一時しのぎのつもりだった。
まさかそのまま、20年も働き続けるだなんて、思ってもいなかった。
この記事は
作家&エッセイスト
内藤みか
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