介護歴4年のライターが「やめてよかった」こととは?「過保護な介護はお互いに不幸」。「ユマニチュード」から教わったこと【医師に聞く】
「あれ、コレも?」介護で「よかれと思って」やっていたNG行動
―――少しずつ義母に“ケア”を実践していて、(以前の記事でもお伝えした)「見る」を行っただけで、入浴に応じてくれる回数が増えるなど、確実に変化がありました。そんな中、改めて感じたのが「自律」の大切さ。つい自分でやってしまったほうが早いからと、「できることまで奪っていた」ということに気付かされました。
本田:この“ケア技法”で大事にしているのが、自分のことは自分で決める力を持ち続けることができる、「自律」の尊重です。介護をしていると、つい一方的に仕事をしてしまいがちですが、それではお互いに良い関係を結ぶのは難しく、ケアの受け入れの拒否にもつながってくるんですよね。
―――本当にそう思います。実際にここ数日で変えたのは、本書にもあった「着るものは自分で選んでもらう」です。義母はもともと洋服やお洒落が好きだったのに、いつの間にかこちらでセットするようになっていて。でも、まさに「自律」とは逆行していましたね。昨日は「この中から組み合わせを選んでほしい」と候補を出して聞いたところ、「このブラウスには、このズボンが合うわ」と何だか楽しそうでした。
本田:着替えるというプロセスが、作業ではなく「共に過ごす良い時間」になっていていいですね!
では最後に、ケアの相手と良い関係を結ぶために大切な「5つのステップ」を簡単にご紹介します。これは、ご本人の自律を尊重しながら、そのために必要な行動をまとめたものです。
ケアの際は、この「5つのステップ」と、「4つの柱」(「見る」「話す」「触れる」「立つ」)を用いたコミュニケーションを取りながら、“ひとつの物語のように紡ぐ”といった気持ちで行ってみます。きっと、お互いにこれまでにない良い変化を感じることができると思いますよ。
【ユマニチュードのケア「5つのステップ」】
介護を行う時には、ご本人のところに赴(おもむ)いて、目的のケアを行い、終わったらその場を去る、という時間の流れの中で行う一連の動作があります。この時間の流れを5つに分けて、それぞれの目的と行う内容を明確にしたのが、ユマニチュードのケアの5つのステップです。
1 出会いの準備
まず、あなたの個人的な領域に(つまりパーソナルな空間に)入っても良いですか? と自分の来訪を告げて、許可を待ちます。
ドアや障子の桟や襖のへりをゆっくりと3回ノックします。
ゆっくり3回ノックして3秒反応を待つ、反応がなければ次にもう3回ノックをする、というようにノックを重ねることで、相手の覚醒水準を少しずつ上げていき、返事を待ちます。
2 ケアの準備
ノックの返事がもらえたら、次はケアの合意を得ます。
「ケアの準備」というステップではありますが、ここでは「具体的なケアについては話しません」。というのは、お風呂が嫌いな人に「お風呂ですよ」と伝えては「あなたが嫌なことを私はしますよ」という宣言になってしまうからです。そのかわりに「さっぱりしましょう」など別の表現を使います。
3 知覚の連結
ケアについての合意が得られたら、次はいよいよ実際のケアです。
ご本人に視覚・聴覚・触覚の情報を同時に届けるのが特徴です。ここで大切なのは、いずれの情報も等しく「あなたのことを大切に思っています」というメッセージになるように表現することです。
例えば、相手の目を見て、優しい言葉をかけていていも、相手の手をつかんでしまっては台無しです。
いつも3つなければいけない、というわけではなく、少なくとも常に、見る・話す・触れるの3つのうち2つを使いながら、伝えるメッセージに矛盾なくケアを行っていくことを心がけていくと良いと思います。
4 感情の固定
ケアがおわったら、「お疲れ様」といってすぐに立ち去るのではなく、一緒に過ごしたこの時間を「楽しかったね」と振り返る時間をもちます。
ここで大切なことは、もし今行ったケアのことをご本人が嫌いだった場合には、「お風呂に入って気持ちよかったですね」とあえて嫌いなケアのことを話題にして伝えておくことです。これは、感情記憶を利用して、ご本人の辛かった記憶を上書きするための大切な技術です。
5 再会の約束
ケアの最後は、「また会いましょうね」と次の約束をして別れます。未来のことについて話すのは、誰にとってもうれしいものです。これはたとえ認知症があって新しい記憶を留めることが難しくなっていても、誰かと未来の楽しいことを約束した、という感情記憶に残すことはできます。
いかがでしたか? 「ユマニチュード式」についてもっと知りたい方は、書籍をぜひ読んでみてくださいね。
◆「介護」の捉え方が180度変わる!行き詰まっている方にぜひ一度読んでいただきたい一冊


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■『認知症の方と意思疎通が取れる 介護シーン別 ユマニチュード式「話し方・行動」実践編』講談社刊(税込2,200円)

本書はわたしたちが見ている「今」ではなく認知症の方が見ている「今」に飛び込み、ご本人の不安な気持ちを取り除く技術を「介護シーン別」に徹底解説。パラパラとページをめくるだけでも、見出しやイラストで「困っていること&解決策」がすぐに分かる構成。現在、介護をしている方はもちろん、これから介護をする方にも、ぜひ手に取っていただきたい一冊。
認知症ケアの新しい技法として注目を集める「ユマニチュード」。わたしたちが介護をするときに困ってしまう認知症の周辺症状(妄想・暴言・不安・幻覚・不眠・徘徊・・・etc)は認知症の方の不安な気持ちがきっかけになって発症します。
「お風呂に入ってくれない」
「食事を食べてくれない」
「20年前に定年退職した会社に出勤しようとする」
「同じ質問をなんどもしてくる」
など、今困っていることをピンポイントで調べ、対処法がわかる事典的な構成。困ったときにすぐ調べられて、忙しい介護シーンでも使いやすい!
認知症になってから全く意思疎通が取れなかったお相手が、かつての大好きだったご家族の姿を取り戻す。それが「ユマニチュード」のケア技法です。
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【ユマニチュードとは何か】
●フランスで50年近く実践されてきた、“人間らしさ”を尊重するケア技法
認知症である前に尊厳のある人間に対する敬意を最重要視することを前提に、「見る」「話す」「触れる」「立つ」の4つの技術を大きな柱に、誰もが再現可能な技法としてまとめられました。寝たきりだった認知症の方がユマニチュードによって立ち上がることができるようになるケースもあり、それは「まるで魔法」と表現されるほどです。
●効果が科学的に実証された
日本では2012年ごろから紹介されはじめ、NHK「あさイチ」など多くの番組で取り上げられました。全国の医療施設・介護施設や地方自治体(福岡市)で導入され、効果が検証されました(ユマニチュードで認知症の行動・心理症状が改善し、介護者の負担感が軽減することが証明された)。
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■お話・著者:本田 美和子 東京医療センター医師
国立病院機構東京医療センター 総合内科医長/医療経営情報・高齢者ケア研究室 室長。1993年筑波大学医学専門学群卒業。内科医。亀田総合病院、米国コーネル大学老年医学科などを経て、2011年より日本でのユマニチュードの導入、実践、教育、研究に携わり、その普及・浸透活動を牽引する。
■お話・監修:イヴ・ジネスト 「ユマニチュード」の考案者
ジネスト‐マレスコッティ研究所長。フランスのトゥールーズ大学卒業(体育学)。1979年にフランス国民教育・高等教育・研究省から病院職員教育担当者として派遣され、病院職員の腰痛対策に取り組んだことを契機に、看護・介護の分野に関わることとなった。
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