
江戸庶民は「白米たっぷり」食べていた!? コメ不足の今こそ知っておきたい江戸の知恵
*TOP画像/蔦重(横浜流星) 春町(岡山天音) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」22話(6月8日放送)より(C)NHK
「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」ファンのみなさんが本作をより深く理解し、楽しめるように、40代50代働く女性の目線で毎話、作品の背景を深掘り解説していきます。今回は江戸時代における「お米」について見ていきましょう。
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米が貴重だった時代…庶民は質素な食生活ゆえのメリットも
現代社会においても、日本人にとって米は生活の基盤といっても過言ではありません。少し前までは、「お米さえあればなんとかなる」と多くの人が考えていました。給料日前でお金が少ない時期でも、米があればふりかけご飯やお茶漬けでしのぐことができました。しかし、近年は価格の上昇や供給不足により、米が庶民にとって手に入りにくいものになりつつあります。
日本において、少なくとも紫式部の時代から人びとは米を食べていたわけですが、庶民の口に炊いた米が入るようになったのは江戸時代の半ば頃といわれています。ただし、この時代においても米が高級品であることに変わりなく、多くの庶民は米と麦の混ぜ合わせて食べていました。なお、米と麦の比率は3対7で、麦の方が多めでした。また、米に芋や野菜を加えて、量を増やすこともありました。今でいうところの炊き込みごはんは豊かではない庶民の工夫と知恵だったのです。
現代では、白米ごはんに比べて麦ごはんの方が健康によいことが広く知られています。麦ごはんは白米ごはんよりも血糖値の上昇がおだやかであることが明らかになっています。白米ごはんのGI(※1)を100とした場合、麦ごはんのGIは65です(※2)。また、蔦重が生まれる少し前にサツマイモが日本に広まりましたが、サツマイモは「準完全食品」と評価されているほど栄養バランスに優れています。ビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富で、糖質も適度に含まれるため(※3)、米に麦やサツマイモを混ぜたごはんは栄養価が高く、身体にやさしいといえます。
平安時代には貴族が、江戸時代には白米を多く食べていた江戸っ子が、ビタミンB1不足による脚気を患っていたことが、現代の研究で明らかになっています。白米ごはんを日常的に食べられるのは幸せなことですが、それゆえのデメリットもあったのです。
※1 GI(グリセミック・インデックス)は食べものを食べた後の血糖値の上がるスピードを示す指標
※2 林進『慈恵医大 葛飾医療センター栄養部が推奨する 低GIレシピ』を参照
※3 企画編集部『腸快調!やせる!美肌になる!焼きイモ 最強の食べ方』を参照
江戸では成人男性が1日に3~4合の米を食べていたらしい
庶民であっても江戸に住む人たちは米を日常的に食べることができたようです。ちなみに、成人男性の場合、米を一日あたり3~4合ほど食べていたといわれています。
江戸には全国から多くの米が集まり、米商人に売られていたため、市中に大量に流通していました。年貢として納められた米は家臣に俸禄として与えられますが、家臣は米を売って現金化していたため、江戸には米が多く出まわっていたのです。
江戸っ子たちは朝にごはんを炊き、2~3回/1日に分けて食べていました。江戸っ子の一日はごはん、味噌汁、漬物、(魚)でスタートしました。この時代、寿司は庶民にとって手の届きやすい食べ物のひとつでしたが、当時の寿司は小柄な女性のげんこつほどの大きさで、米の量が非常に多かったといいます。
地方で米を作る人びとが白米のごはんを食べられず、都会で暮らす人びとが白米のごはんを日常的に食べられる社会の仕組みには、どこか切ないものを感じます。現代では、カカオの生産地で働く人びとはチョコレートを食べられないといわれていますが、どの時代にも似たようなことが起きていますね。
参考資料
青木直己『江戸 うまいもの歳時記』 文藝春秋 2021年
嵐山光三郎『ごはん通』筑摩書房 2020年
安藤優一郎『江戸のメディア王と商人文化の黄金期が2時間でわかる! 蔦屋重三郎見るだけノート』宝島社 2025年
林進『慈恵医大 葛飾医療センター栄養部が推奨する 低GIレシピ』法研 2012年
歴史の謎を探る会『日本人なら知っておきたい 江戸の庶民の朝から晩まで』河出書房新社 2006年
企画編集部『腸快調!やせる!美肌になる!焼きイモ 最強の食べ方』 マキノ出版 2022年
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