白髪は更年期に入ったサインですか?老眼は?この時期「気を付けないと下がっていってしまうもの」って何ですか?専門医に聞く
閉経の前と後5年ずつ、合計10年を日本では更年期と呼びます。日本人の閉経平均年齢は研究によって50歳から52歳の間とされるので、45歳から57歳は更年期に該当する人も多いということに。
更年期の医療に長年に渡って携わり、更年期女性のための知識と行動を網羅した「閉経マネジメント」を提唱する婦人科医が吉形玲美先生です。日常の診察と並行して、女性医療・更年期医療のさまざまな先端臨床研究にも数多く携わり、ご自身で監修したフェムケアブランド「est’re (エストール)」は今やフェムケアの定番人気品です。
そんな吉形先生に改めて、更年期にさしかかる私たちが「心がけておきたいこと」「知っておきたいこと」を教えていただきます。前編『更年期の「はじまり」から「終わり」まで、女性が気を付けるべきこととは?専門医が丁寧に「疑問」に答えます』につづき、この記事は4本シリーズの2本目です(1/2/3/4)
【更年期を助けてくれる人たち名鑑】
更年期に入ったサインとは?たとえば、白髪、肩こり、老眼もサインですか?
ところで、明らかに月経が乱れ始めるそのずいぶん前、40代に入るころから、私たちは身体に変化を感じ始めます。多く聞くのは「遠くが見えなくなった」など老眼。また、髪が薄く、細くなり、地肌が見えるようになった、また突然白髪が増えたという声もぐんと増えます。
「確かに、髪の毛の悩みはよくご相談をいただきます。例えば抜け毛が多い、髪の毛の量が減ったなどですね。また、視力も個人差が大きいようで、早い方は30代後半から老眼の気配を感じています。言語的な定義でいうと閉経の前後5年合計10年が更年期です。そして、月経の変調が起きる前から存在していた抜け毛や視力の変化は、女性ホルモンの減少だけが原因ではない老化の1つです。従って、これらはただのエイジングのサインです」
なるほど! ホルモンの増減が大きく関与しない変化は更年期症状ではない、ただの老化。わかりやすい判別方法です。
「なのですが、実際のところは線は引きにくいなと思います。というのも、更年期世代になると髪や視力は訴えが増えるため、ここからが老化ですとぴしっとは分けにくいのです。もうひとつ判別方法として、ホットフラッシュはHRTで落ち着きますが、ではHRTで白髪が黒くなるか、視力がよくなるかというと、解決しないことはわかると思います。こうしたものは各組織それぞれのエイジングであると言えます」
まず決定的な判別は、ホルモン分泌のゆらぎ・欠乏による症状が更年期症状であること。そして、それに向かう間のエイジングサインはランダムに出現するということ。
「いうなれば更年期症状は『卵巣のエイジング』に起因するので、大きくいえばすべて老化。これがわかりにくさの理由なのでしょうね」
40代に入ったら手をつける「更年期じたく」、はじめるべきこと、やめること。お酒は更年期を悪化させますか?
『40代からはじめよう 閉経マネジメント』吉形玲美・著 1,650円(税込)/講談社
吉形先生は2022年に『40代からはじめよう 閉経マネジメント』という書籍を出版しました。更年期前後の女性に忍びよる「更年期症状」と、骨折にもつながる「骨粗しょう症」の不安を解消し、ウェルエイジングを実現するための「自分の体をマネジメントする方法」についての書籍で、その柱は2つ。「女性ホルモンのコントロール」と、「女性ホルモンの減少によって影響を受ける『骨の強さのマネジメント』」です。
「仮に閉経が55歳の人ならば、40歳の時点でまだまだ15年間にわたって月経があります。私が提言しているのは、40代の声を聞いたらすぐに骨密度を測定すること。できればDEXA(デキサ)という方式で測り始めてほしいのです」
骨密度は医療者の間でも認識が追い付いていないケースが多く、医師によって介入がばらつくそう。気にかけてくれる医師に巡り合えばケアしてもらえますが、そうでない場合はずっとノーチェックのままになるそうです。
「骨粗しょう症は若いときの骨密度を100として比較するYAM値で評価します。、YAM値80%以上ならば正常という扱いですから、『もっと減って骨粗しょう症や骨減少症の状態になったら対応しましょう』という先生もいます。いっぽう、私は早め早めの対策を推奨しています。もし骨密度が正常範囲であっても、低めならばすぐ運動や食事の見直しを始めてほしいと伝えています。80%と100%が同じ管理でいいとは思えないので、この早めのケアが日本の常識になってほしいと思っています」
骨粗しょう症検査は受診率がずっと2%のままで向上しないと専門の先生が嘆いていました。厚労省はこの検診率を上げることを目標にしているようですが、助成がある場合もチケットが送られてくるのではなく、自分で自治体の案内を調べないと助成の存在そのものに気づけない点が問題です。
「自治体により40歳、45歳など節目の年に助成があるようですから、該当する人は確認してください。もうひとつ、骨密度は経年変化を見るのも大事です。連続して年に1回、自分の骨密度の減り具合を見てほしいのです。生活習慣病もそうですが、骨密度も点ではなく線で見たほうがよく、こうした管理の習慣も40代からスタートしてほしいのです」
最初はサボりがちでも、毎年受けていくと変化が見えるようになり、1年のがんばりを確認できてセルフケアのモチベーションにもなります、と吉形先生。
「セルフケアも、いきなり難しいことに挑まず、簡単なことでOKなんです。日本人は特に姿勢が悪く、座っている時間が長いので、立ってる時間を増やす、歩く歩数を増やすだけでもまずはじゅうぶん。普段から立ち仕事や歩いている人なら、次のステップとして強度をつけた運動に移ればいい。もちろん、趣味で何か運動できればいいけれど、お金もかけたくないし時間もないならば、少し散歩をしてみるとか、通勤や買い物以外で歩く何かを見つけるのがいいでしょう」
更年期は「変えないとどんどん下がっていく」時期。無理なくできることを見つけて
というのも、更年期を迎えるにあたって大切な心構えがあるからです、と続けます。
「更年期は『何かをプラスしないとならない』のです。皆さん『食べるものを増やしていないのに、どうしてこんなに血液検査の数値が悪くなるの』とおっしゃるんですが、それは『変えていないから』なんです。食事を変え、運動を足していかないと、すべての数値が悪くなっていきます。更年期以降は体重が増えやすくなる他、コレステロールや血圧の上昇、骨密度の低下と、すべて悪化していくのが平均的な変化なんですね」
骨密度も上げていかないとならない時期ですが、結局は薬を使わないと、生活習慣だけではなかなか上がらないのだそう。
「ですので、現状維持ができていればそれで満点、まずは検査をするところです。1回検査をすれば『こんなものか』とわかって習慣になりますが、その1回目のハードルが極めて高いのです」
40代に入ったら健康診断や人間ドッグは確実に年1回が必須。チェックすべきは血圧、血中脂質(LDL・HDL・中性脂肪)、糖代謝、腎機能、そのほか生活習慣病関連の数値だそう。いずれも、正常範囲であっても、上昇傾向か下降傾向か、前年に比べてどう変化しているかの把握をお勧めしますと吉形先生。
「オプション検査を選べる場合、まずは骨密度検査。データ蓄積のため毎年受けるのがポイントです。閉経前なら卵巣の状態を評価する抗ミュラー管ホルモン値(AMH)。閉経が平均より早めか近づいてきているかなどがある程度わかります。卵胞刺激ホルモン(FSH)とエストラジオール値も閉経時期を知る目安としておススメ。もうひとつ、健康診断を活用したいのが甲状腺ホルモン値です。PMSと甲状腺疾患による不調は更年期症状とよく似ているので一度は調べてください」
徐々にFSH値が上がっているならば、まだ月経が順調であってもそろそろ不順になるかな、と見通しも立ちます。健康診断には「この数値はこういう状態ですよ」と説明するレポートが付きますから、それで理解できるのもいい点です。
「もうひとつ、40代に入ったら婦人科のかかりつけ医を作ってください。健康診断は会社か自治体で受けている人が多いと思いますが、診察機関を選べるならば産婦人科の外来がある受診先を選ぶといいでしょう。更年期以降はさまざまなトラブルに見舞われやすくなりますから、地域の基幹病院はどこかな、大きな病気をしたらどこに入院しようかなとイメージをしておくことも大事です」
ゼロから情報を探す場合、ネット上に書き込まれた更年期外来の口コミはかなりあてになる、と続けます。
「産婦人科は疾患治療のための科ですから、症例数、標準治療の実施例、提携病院への紹介を重視して選ぶほうがいいのですが、PMSや更年期障害の外来は根本的にはQOL医療なので、相談しやすい先生かどうかで考えたほうがいいでしょう。なのに、『やっぱり大学病院が安心』と考えてしまう人がまだまだいます。大学病院は疾患の中でも急性期の治療を行う場所で、向き不向きが違う。カウンセリングを得意とする街中の医師を探したほうが満足度が高まります」
つづき>>>更年期のケアは「早めに始めたほうがいい」のでしょうか?何からスタートすればいい?サプリ?検査?
お話・吉形玲美先生
医学博士、日本産科婦人科学会 産婦人科専門医、日本更年期と加齢のヘルスケア学会 副理事長、BASEGATE 横浜関内クリニック 女性医療センター センター長
1997年東京女子医科大学医学部卒業。東京女子医科大学准講師を経て2010年より同大学非常勤講師。浜松町ハマサイトクリニック院長ほか多施設で予防医療研究に従事。女性医療を広めるためインスタグラムでの発信も長年続ける。2022年書籍『40代から始めよう! 閉経マネジメント 更年期をラクに乗り切る、体と心のコントロール術』(講談社)を上梓。
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